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    namo_kabe_sysy

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    800文字(前後)チャレンジ
    43
    鍾魈 嘘はつけない魈くんの話。

    #鍾魈
    Zhongxiao
    ##800文字(前後)チャレンジ

    43 鍾魈洞天の中で鍾離と魈がふたり、茶と雑談を楽しんでいる最中。そういえば、と鍾離が口を開いた。
    「今日はエイプリルフールという日らしい。嘘をついてもいい日、と聞いている」
    と、鍾離がにこやかにしていると、魈は「嘘ですか」と目を瞬かせる。
    「しかしそう仰っても……我が鍾離様に嘘をつくなどということはできませんので」
    「そんなに真面目にならなくても。そうだな……たとえば、好きなものを嫌いと言ってみるとか」
    わりと定番らしい、と言う鍾離も、その文化は旅人から聞いたことのようで、具体的にどんな嘘をつくかまでは聞いていないそうだ。
    好きなものをあえて嫌いと言う。たしかに嘘をついていることにはなるが、果たしてそこになんの意味があるのか?
    街の商人を相手にする際、交渉手段の一つとして取る手段にはなるかもしれない。嘘というより、持っているカードをあえて伏せておく、といった類だろうが、相手の腹を探る常套手段とも言える。だがそれを、わざわざ商談の席でもない時に披露する必要があるのか?
    そもそもにして、鍾離に対して思ってもいない嘘をつくなどという行為は、魈にとっては苦痛にしかなり得ない。鍾離本人がいいと言っても、どうしたって憚られる。
    「……すみません。そのような嘘が許される日でも、やはり我にはできません」
    「ははっ、本当に真面目だな、魈は」
    「も、申し訳ありません……」
    望まれるまま言葉を紡げたら良かっただろうか。もしや機嫌を損ねたりしただろうか。不安になって声が先細る。それを鍾離は穏やかな声で支えてくれた。
    「謝ることはない。向き不向きがあるというだけだ。それに、商売においては祭りのような催しにも発展するらしくてな。そこまで後ろ向きには捉えていなかったんだ」
    「左様でしたか……」
    どうやら著しく機嫌を損ねた訳ではないとわかると、ほっと息がこぼれる。息苦しさから解放されて、肩の力も抜けていった。
    「それなら俺たちは普段と同じく過ごそうか。好きなものを好きだと言って、本当のことだけで会話をしよう」
    窓から差し込む外の光で、鍾離の表情に光が宿る。優しく同意を求める視線に、魈は何を言うでもなく頷いた。
    鍾離の淹れた茶からは細く湯気がのぼっていて、ふたり分の声の間を糸で繋ぐように、ゆらゆらと揺れていた。
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