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    soseki1_1

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    soseki1_1

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    ハンターの居館で真実を突き付けられる🔮
    (傭占+📸と🐙)

    「何用だ。占い師」
    「ッ…!!」
    「否……占い師と呼ぶべきか」
     夜であることに加え、これほど広い館だ。暫しの待ちぼうけを食らうだろう。イライの予想は背後から掛かった声によりあっけなく打ち破られる。宙を飲み込み、吃驚の反応によって、硬直した体を無理やり背後へ振り返らせる。視界に映ったのは、影の中から出でるひとつの触手だ。蛸の吸盤のようなものを持つ、イライの背丈よりも大きなそれ。常人が見れば卒倒しかねない光景も、しかしこの荘園に留まる者ならば見慣れたものである。イライは飲み込んでいた息を深く吐き出す。強張った肩から力を抜き、疲弊と安堵のまま体を脱力させる。そうして、まだ解し切れていない頬で微かに微笑み、その名を紡いでみせた。
    「……驚きました、黄衣の王。夜がよくお似合いで」
    「……ふむ」
     ずるり…と、星も月もない夜のような影から、その姿が現れる。黄衣で全身を覆いつくした巨体。落ち窪んだ顔の部分には黒よりも濃い暗がりが広がり、二つ三つと目玉を浮かばせている。酷く冒涜的な出で立ちに、けれどもイライは微笑みを深くさせた。荘園に留まる存在のひとり、黄衣の王、ハスター。邪神として畏れられる彼の姿にも、試合を度重ねるごとに慣れたもので、胸の裏を冷たくなぞられるような不快感も随分と薄らいでいる。それが良いことか、そうでないかは、定かにすべきではないのだろう。
    「…あの……?」
     フードの中に浮かぶ目玉はじっとりと細まり、無遠慮にイライを見詰めている。訝しむ有り様だ。何か可笑しなところでもあったろうか、森で葉でもつけてきてしまったろうか。イライは手で服の裾を軽く払いながら、差し向けられる視線へ首を傾げる。しかし答えを得るより前に、意識は視線から離れることとなる。
     居館の扉の奥から音がしたためだ。それが足音であるとは容易に理解できた。品がありながらも、相手に存在を知らせるために発した足音であった。音が止まるや否や錠が外れ、大きな戸が開かれていく。扉の奥から白銀の髪が見えて……イライは密かに安堵した。艶やかな白い髪に白い肌、青と金色を主体に仕立て上げられた華美な服。そのどれもが、試合で幾度となく目にした姿であったために。
    「なんだ。占い師か」
     ハンターのひとり……写真家のジョゼフは、空とも海とも言い難い美しい青い眼にイライを映し、そう息を吐いた。一歩敷居を跨ぎ、扉を閉めると、その出で立ちの全てが明らかとなる。その手がサーベルを握っており、美しい所作で腰元の鞘へと戻す様を見て……イライはぎょっと息を飲んだ。イライは以前から幾度か、このジョゼフという男と交友を持ったことがある。ハンターの居館で茶会を楽しんだことも、チームを組んで試合に参加したこともしばしばだ。故に、彼は品位のある者であり、だからこそ試合の外で武器を持ち出すなど滅多にしないことをよくよくと知っていた。
    「何故、そんなものを……?」
    「そこの王が、得体の知れない何かが来るなんておっしゃるものだからな。何事かと思ったが……」
     ジョゼフは肩を竦め、ハスターへと目を向ける。ハスターは目玉をイライに差し向けたままだ。訝し気な様子も変わりがない。
     得体の知れない何か、とは、どういうことだろうか。不気味な単語が自信を指したと知り、イライは顔色を悪くする。そんなイライを慰めることもないまま、宙へ今一度ハスターの声が落ちた。
    「天眼を持つ者。今宵、何用で参った」
     それは当然の問いかけであった。しかしだからこそ、イライは返答に困った。イライも幾度か足を運んだことがあるとはいえ、あくまで交友関係を築いていたためのことだ。夜中にハンターの居館を訪れたことなどそう有りはしない。何故か、と聞かれれば、殆ど衝動的に足が動いていたとしか言いようがない。何と答えればいい? サバイバーの恋人がハンターになったかもしれないから、確かめに来た……そんな荒唐無稽な問い掛けを口にしろと?
    「王よ、悪戯も程々にしないか。彼が来る理由なんていつもひとつだろう」
     言い淀むイライに代わったのはジョゼフであった。そしてその言葉に、イライ自身きょとりと目を丸くする。理由はひとつ。そう断言することが自分にあったろうか。マリーとのお茶会、美智子と談笑、ロビーと遊ぶため……ここに訪れる理由は、いつも様々であったはずだが。
     イライは瞼を瞬かせてジョゼフを見上げる。やや間抜けた顔になにを思ったのだろう。ジョゼフは解っていると言わんばかりに笑み返し、呆れた風に……そしてどこか微笑まし気に空となった両腕を組んだ。
    「今日は随分遅かったからな。ほら、お待ちかねだ」
     言って、不可思議な青い瞳が居館の扉へと向く。その視線を追うと同時に、イライの鼓膜が聞こえ始めた音を拾い上げた。
     どたどたと荒々しい音が聞こえてくる。ただ歩いているのではない。駆け走っている音だ。それも重い何かが走っている。随分と急いでいるようで、それは刻一刻と玄関、イライたちが留まる方へと向かってきている。それはきっと、足音だ。近づくその音を聞きながら、イライは胸の底から予感が這い上がってくるのを感じていた。嫌な予感だ。心臓が今一度、可笑しな鼓動を打ち叩き始める。今は、森の中を走ってなどいない、変哲なことを聞いてもいない、怪訝な視線を差し向けられてもいない。けれど胸の裏が、この小一時間の内のどの瞬間よりひどい音を立てている。血の気が引く。呼吸が薄く、浅くなる。今すぐ踵を返し、森の中へと逃げ込みたい……そんな衝動的な願いが急速に体中を満たしていく。それでも動き出せなかったのは、これが受け止めなければならない現実だと、知っていたからだろうか。
    「……おい、何度言えばわかる」
     バンッ。と、足音がすぐ近くまで差し迫ったと同時。荒々しい音を立て、一度閉じられた扉が今一度開く。酷く乱暴なその様に、ジョゼフは片眉を顰め、そちらを見た。イライも勿論、その音を、開かれた扉の前に飛び出た者を見ていた。ただ黄衣の王だけが、呆然と立ち尽くす青年を見つけていた。
    「扉は静かに、壊さないように開けろと…そう言ったろう。サベダー」
     サベダー。その名をイライは知っている。何度も口の中で転がし、味蕾で味わって、喉の奥へと飲み込んだ名前。何も感じられないはずだのに、何故だか仄甘く感じられる名だ。サベダ。ナワーブ・サベダー。その名を持つ者は、この荘園の中ではひとりだけ。傭兵と名付けられた男、ただひとりだけだ。
    「ナ、ワーブ」
     零れるように、その名はイライの唇から落ちた。その名を聴きながら、違う、と、イライは自分の声を否定する。違う。彼は、人間だ。薄汚れた若草色のフードを纏い、仲間を助けるために奔走し、生き残る傭兵だ。上背の低い体を持ちながら、ひどく大きな力を持つ人だ。決してこのような、異形などではない。汚れた若草色のフードの中へ、無理やり押し込めるような巨体はしていない。包帯はこんなに幾重にも施されていない、そう、こんな、打ち草臥れた体を繋ぎ止めるような巻き方はしていない。狂暴さを抑え付けるマズルのように、糸で口横を縫い付けられてなどいない。手足の指先が、こんなにも鋭く鋭利などではない。彼はもっと、もっと
    「イライ」
     眼前に在る異形からの呼び声を聞いたとき。イライは息を飲んで、そのまま止めた。頭が真白に染め上げられ、もう何をも考えられなくなった。口を縫われているために言いにくそうにしながらも、それでも紡がれた声は優しく、柔く、自分の知る彼の声と同じであったために。彼がナワーブ・サベダーなのだと解ってしまったから。
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    soseki1_1

    PROGRESSハネムーンクルージングを満喫してるリズホワ/傭占
    (この後手マ♥でホワ🔮を5回はイかせるリズ🤕)
     麗らかな金色に白いベールを被せるハムエッグ。傍らに鮮やかに彩られたサラダを横たわらせた姿は、実に清々しい朝を連想させる。大皿の横に据えられた小皿にはフルーツドレッシングが揺蕩っており、そこから漂うさわやかな香りもそのひと役を買っていた。焼き立てのパンを詰めた籠を手渡したシェフ曰く、朝食時には一番人気のドレッシングらしい。客船に乗ってから数日、船員スタッフは慣れた風に微笑み「良い朝を」とだけ言って、リーズニングをレストランルームから見送った。
     依頼人から報酬代わりのひとつとして受け取ったクルーズは、リーズニングに思いの他安寧を与えている。慣れ親しんだ事務所には遠く及ばないものの、単なる遠出よりは幾らも気軽な心地で居られている。「感謝の気持ちに」という依頼人の言葉と心に嘘偽りはないとは、この数日で理解できた。クルージングの値打ちなど大まかにしか理解出来やしないが、おそらく高級な旅を与えられている。旅行に慣れない人々を満喫へと誘うスタッフの手腕も相応だ。乗船前は不信感すら抱いていたリーズニングも、今はこうしてひとり、レストランルームへ赴けている。満喫こそしているものの、腑抜けになった訳ではない。食事を部屋まで配膳するルームサービスは今なお固辞したままだ。満喫しつつ、警戒は解いて、身なりを保つ。この塩梅を上手く取り持てるようになった。
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    soseki1_1

    DOODLE知らない間にフル⛏になって教🧪を愛でてる探🧲と、それを受け入れてる教🧪と露見 探教/フル教
     白いシャツが似合う人だった。だからその下にある青黒い痕がよく映えていた。
    「ムードがないね」
     いきなり服を剥かれたあの人は、切り傷を伴った痣を腹に晒したまま、慣れたふうに微笑んでいた。
    「相変わらずだ」

     少しずつ可笑しいと気付いた。最初は記憶が飛ぶ夜が続くこと。その夜の後はいつも決まって部屋にいると気付いたこと。それからあの人の様子。僕が記憶を飛ばして、自室のベッドで目を覚ました日。あの人はいつも決まって悪い顔色をしていた。この荘園には肌も何もかも髪だって白いやつもいて、片目の上に青痣を引っ付けてる奴もいる。試合が終わった後は大抵悪いもので、それを次の日に持ち越す奴だって稀じゃない。でも僕は、あの人の肌色だけはよく覚えていたから。だからあの人の、海に輝る太陽に焼かれた方がもっと似合うだろう肌が、部屋に篭っているからいつまでも白い肌が、首元辺りに宝石みたいな鱗が浮き出ている綺麗な肌が、その日だけ決まって悪いことにも気付いた。で、何でだろうと考えた。ハンターの中に苦手な奴がいるのか、それとも薬でもやり始めたか。規則性を見出そうとして、見つけられたものが僕の記憶の欠落と目覚めのことだった。それまでは、酒に溺れて酔いに感けたのだろうと思った。安酒には慣れているけど、それなりの品にこの体はちっとも慣れていない。だから食堂だとか談話室だとかに集まって飲んだ後は記憶が朧げなときも稀にあって、その程度がひどいんだろうと思っていた。でも思えば、僕は記憶が霞むことはあっても、飛ぶくらいに酷い酔い方をしたことなんてなかった。そんな無警戒な真似はするはずがなかった。じゃあなんで記憶が飛んでるのか。僕の体がおかしくなったのか。それがどうしてあの人の青い顔色に繋がるのか。色々考えて、僕は、体に埋まった石ころのことを思い出す。
    2002