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    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

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    soseki1_1

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    猟犬🤕を思い煩う🔮に降りかかるモブからのちょっかい(傭占のみ)

    「で、相談なんだが……アー…」
     ジョンと名乗った男は、けれども唐突に言葉を濁す。母音ばかりを発し、イライの頭から胸元まで不躾に視線をくれる。言葉だけでいうなら、先程の豪胆さとは裏腹な有様だ。
     口には出しにくい話題なのだろうか。イライが首を傾げていると、男はやや罰の悪そうな顔をして口を開いた。
    「クラークってさ、恋人いる?」
     イライは青い瞳を丸めた。突拍子のない問い掛けに驚いただけではない。男の指に竦み上がったのだ。片側ふたつの指で円を作り、その中に人差し指を差し入れる……下世話なハンドサインだ。それが男の発した恋人という意味合いを明白に深めている。
     鼻頭から頬へ、耳へと熱が広がっていく。その感覚を、イライはよくよくと自覚できた。急速に広がる血の色が、白い肌へ如実と現れていくことも理解できていた。しかし抑えることができない。こんなにも大胆な仕草を、大学という公的な場で目の当たりにするとは思わなかったのだ。加えて、イライは丁度彼との行為を望んでいる。それを指摘されたかのような錯覚にも見舞われて、顔中に広がった血の色は引くことを知らない。
    「ア〜……や、実はさ」
     言葉よりも如実に白状した赤い面持ちを見て、男は薄い笑みを口に浮かべた。微笑ましいというよりは呆れや苦笑に近いものだ。その面持ちの意図を察し、いっそう恥じらいを深めながらイライは目を上げる。今は羞恥よりも相談に意識を向けるべきだ。男も、これ以上は待てないらしい。イライの声での返答を待たないまま、その口は開き始めていた。
    「二ヶ月前に恋人が出来たんだけど、まだ手ぇ出してないんだよ」
     イライは僅か瞬きの間だけ、視線を横へと逸らした。恥じらいが募ったのは勿論、図星を突かれたような心地だったのだ。イライも同じように、数か月手を出されないままでいる。状況は似たようなものだ。
     挙動の可笑しい心臓を悟られまいと、イライはフォークでレタスを刺しながら目を上げる。どうして? そう問いかける代わりの視線を男は汲み取ったのだろうか。はたまた、喉から溢れかえり口の中に収まりきらない言葉を留めておけないのか。その口は再び開かれる。
    「そいつ、処女らしくてさ。めんどくさくて」
     カツ。と、フォークの切っ先が皿に触れる。行儀の悪い軽やかな音だ。ほんの小さく零れ落ちた音である。この食堂に人は少ない。対面に座った男の耳など、その音の欠片とて拾ってはいなかったろう。けれどもイライは耳を澄ませた。音もなく体中を硬直させ、周囲を、眼前を伺った。その音こそが、己の胸の裏で転げ跳ねた心臓の音に違いなかった為に。
    「処女って言ってもまあ男なんだけど……勘弁して欲しいんだよなぁ…」
     男の声は殆どぼやきと言って正しかった。ポケットから取り出した携帯に目を落とし、舌を打つような口ぶりで声を紡ぐ。イライは幾度か、口を開こうとしていた。薄く開き、閉じて、また開こうとして、やはり止めた。何と言うことが正解か、まるで解らなかった。ああ、だとか、うん、だとか、そういった肯定に聞き取れる相槌を打つことは憚られた。かといって、否定を明確に口にすることなど出来なかった。否定や非難を口にして、この男に舌でも打たれたら、睥睨でもされたら、どうすればいいというのだろう。今、イライの目には、この男の目があの赤と黒の眼差しに見えて仕方がないというのに。
    「最近じゃ珍しくもねえし、こういう店とかで慣らしてきてくれりゃ楽なんだけど」
     男は言いながら、携帯をイライへと突き出す。不躾に差し出された液晶にはひとつのサイトが映し出されている。薄桃色の背景にきらびやかな夜景の画像が文字張られ、黒字にピンクなどで文字が記されたサイトだ。強調されている文字を見る限り、夜の店のサイトなのだろう。最も明白に映し出されている店名を虹彩に焼き付けられながら、イライは瞬きもできないままでいる。眼前に広がる小さな桃色の世界とは裏腹に、その場に立ち尽くすような、愕然とした心地が思考にまで広がり切っていた。
    「でもさあ、初めてを大事にしたい~って奴もいるじゃん? よくわかんねえけど。色々話聞いた方がいいかなと思ってさあ」
     液晶が遠のいていく。すげなく去っていった知りもしなかった世界を網膜に見ながら、イライは青い瞳で眼前をも映していた。瞼が一瞬だとしても下りることを許さなかった為だ。眼前に在る現実を受け止めるべきだと悲痛に叫ぶ鼓動がそれでも訴えた為である。
     それだから、男が携帯を見下げていた視線をこちらへ擲つ様も、ほんの一拍は伺うようだった眼差しがすぐに呆れと億劫に移り変わっていった様も、ともすれば睥睨と言っても良いほどの目色と成った様も、全てありありと映し込んでいた。
    「と思ったけど……クラークにはまだ早かったな。悪い、忘れていいわ」
     男は言いながら腰を擡げる。一度差し向けられた視線はもう再び投げられることない。背を向け、手をぶらぶらと肩越しに揺らして、それきりだった。下品に足音を立て、大股で去っていく男の背が消えて、その足音すら失われる。厨房の調理音が微かに聞こえる静寂の中、カツ、と、軽やかな音が零れた。幾度か聞いた音だ。此度、それはカツ、カラ、カランと立て続けに落とされていく。音を立てたフォークは皿の上にも、どころか机上にもなく、床に転げ落ちていった。イライは仕舞いまで、それに目を向けることが出来なかった。震えの止まらない手が宙で揺れる。震えるように大きく脈打つ鼓動が聞こえる。網膜に焼き付いた睥睨が赤と黒の双眸を模り始めて、ようやく瞼が強く下りた。眼の縁が濡れた気がして、どうしようもなかった。
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    soseki1_1

    PROGRESSハネムーンクルージングを満喫してるリズホワ/傭占
    (この後手マ♥でホワ🔮を5回はイかせるリズ🤕)
     麗らかな金色に白いベールを被せるハムエッグ。傍らに鮮やかに彩られたサラダを横たわらせた姿は、実に清々しい朝を連想させる。大皿の横に据えられた小皿にはフルーツドレッシングが揺蕩っており、そこから漂うさわやかな香りもそのひと役を買っていた。焼き立てのパンを詰めた籠を手渡したシェフ曰く、朝食時には一番人気のドレッシングらしい。客船に乗ってから数日、船員スタッフは慣れた風に微笑み「良い朝を」とだけ言って、リーズニングをレストランルームから見送った。
     依頼人から報酬代わりのひとつとして受け取ったクルーズは、リーズニングに思いの他安寧を与えている。慣れ親しんだ事務所には遠く及ばないものの、単なる遠出よりは幾らも気軽な心地で居られている。「感謝の気持ちに」という依頼人の言葉と心に嘘偽りはないとは、この数日で理解できた。クルージングの値打ちなど大まかにしか理解出来やしないが、おそらく高級な旅を与えられている。旅行に慣れない人々を満喫へと誘うスタッフの手腕も相応だ。乗船前は不信感すら抱いていたリーズニングも、今はこうしてひとり、レストランルームへ赴けている。満喫こそしているものの、腑抜けになった訳ではない。食事を部屋まで配膳するルームサービスは今なお固辞したままだ。満喫しつつ、警戒は解いて、身なりを保つ。この塩梅を上手く取り持てるようになった。
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    soseki1_1

    DOODLE知らない間にフル⛏になって教🧪を愛でてる探🧲と、それを受け入れてる教🧪と露見 探教/フル教
     白いシャツが似合う人だった。だからその下にある青黒い痕がよく映えていた。
    「ムードがないね」
     いきなり服を剥かれたあの人は、切り傷を伴った痣を腹に晒したまま、慣れたふうに微笑んでいた。
    「相変わらずだ」

     少しずつ可笑しいと気付いた。最初は記憶が飛ぶ夜が続くこと。その夜の後はいつも決まって部屋にいると気付いたこと。それからあの人の様子。僕が記憶を飛ばして、自室のベッドで目を覚ました日。あの人はいつも決まって悪い顔色をしていた。この荘園には肌も何もかも髪だって白いやつもいて、片目の上に青痣を引っ付けてる奴もいる。試合が終わった後は大抵悪いもので、それを次の日に持ち越す奴だって稀じゃない。でも僕は、あの人の肌色だけはよく覚えていたから。だからあの人の、海に輝る太陽に焼かれた方がもっと似合うだろう肌が、部屋に篭っているからいつまでも白い肌が、首元辺りに宝石みたいな鱗が浮き出ている綺麗な肌が、その日だけ決まって悪いことにも気付いた。で、何でだろうと考えた。ハンターの中に苦手な奴がいるのか、それとも薬でもやり始めたか。規則性を見出そうとして、見つけられたものが僕の記憶の欠落と目覚めのことだった。それまでは、酒に溺れて酔いに感けたのだろうと思った。安酒には慣れているけど、それなりの品にこの体はちっとも慣れていない。だから食堂だとか談話室だとかに集まって飲んだ後は記憶が朧げなときも稀にあって、その程度がひどいんだろうと思っていた。でも思えば、僕は記憶が霞むことはあっても、飛ぶくらいに酷い酔い方をしたことなんてなかった。そんな無警戒な真似はするはずがなかった。じゃあなんで記憶が飛んでるのか。僕の体がおかしくなったのか。それがどうしてあの人の青い顔色に繋がるのか。色々考えて、僕は、体に埋まった石ころのことを思い出す。
    2002