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    soseki1_1

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    soseki1_1

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    終わらせない大佐🤕と手を伸ばすノワ🔮
    (大ノワ+DM/傭占+写)

    「寝ていなさい」
     重たい瞼は体を起こせば痛みで持ち上がる。だから背中に当たる柔らかなところから起きようとした。そうして色々分かった。まず、ここはきっとベッドだということ。背中らから僕の全身を包んでくれているのは寝台で、上から優しく抑え付けているのは毛布だ。後頭部を包んでいるのは枕。どうやら床を這いずり切れたらしいと思ったけど、たぶん、これは違う。起き上がろうとした僕を毛布より強く、なのに何処か穏やかに推し戻した力によって違うと解った。この力が助けてくれたんだろう。し、この力は手で、支持をくれた声はその手の持ち主だ。薬を作っているのに何故だか優しい不思議なあの子が助けてくれたんだろうか。でもあの子は、こんなに低い声はしていなかった。何より極力声を出そうとしない子だった。声を出さないことによって誰かと話すことを遠ざけているようだった。なのに時々僕を見つけて、見つけると助けてくれる。だからこの手はあの子じゃない。この手には僕を助ける理由がちゃんとある。観察という名の監視をしている。薬だとかここに送り込んだ兄さまの手がかりが僕の体には詰まっている。でも薬はもう完成していて、僕に使われていたのは粗悪品だから露見しても問題ない。兄さんのことを僕が話すわけがないので、これも問題ない。あの家で、僕は生きていても死んでいても変わらなかった。体も心もガタがきていた僕の処分を、兄さんはここに決めたのだ。だから僕は終わりを待っている。裁かれる日を待っている。兄さんにもあの人にも誰にとっても役立たずの僕の終わりを、ずっと待っている。
    「もうおわる?」
     だからやっと終わるか聞くべきだったのに、熱と痛みを和らげられた僕は迂闊に胸の裏に隠したかった言葉を使った。
    「終わらせない」
     寝台の上で横たわるばかりだった手を握られる。強い力だった。強いのに、骨を折ることも皮膚を裂くこともしない、不思議な力だった。
    「唐突に服用を絶ったことによる副作用の一環と疲弊による症状だ。寝ればいずれ治る。薬は不要だし、使えない」
     慰めでも放置でもなく、有るが儘の事実を告げられたのは初めてのことだった。それらの症状は僕が勝手に予想していたものとあまり違いはなかったけど、そうだと頷いたり、説明してくれる人なんて今まで居なかった。彼が口にしたのはきっとかなり残酷なことで、ずっと不器用な言葉だったんだろうけど、僕にはとびきり優しい声に聞こえた。
    「だから寝ていろ。傍に居る」
     僕を寝台に寝かせ続けた手が撫でるように動く。たぶん、本当に撫でている。布団の中の体は寒いのに熱くて苦しくて痛くて仕方がない。いつもと何も変わったところなんてない。なのに僕はこのとき、穏やかに眠れる気がした。いい夢さえ見れる気がした。布団の上から体を撫でた手は早々に離れていく。この手をどう引き留めればいいか僕は知らなかった。
    「りんご」
     だからやっぱり、本当の願いが口から零れた。
    「りんご、ほしい」
     離れていこうとした手が少し止まってくれた。手は、ややあって離れてしまったけど、僕の頭にきてくれた。彼の少し皮の熱い軍人らしい掌が皮膚に感じられなくて、このときようやく額に何かが置かれているのだと解った。きっと氷嚢だったり冷たいタオルだったりしたそれは生温くなっていたけど、それでも心地いいと思った。「わかった」と、ずっと柔らかい声が聞こえて、僕は、体中に巡る熱と、それが眼の縁から零れ出た感触を自覚した。
     あなたからのりんごが食べたい。
     あなたが蛇でも、僕をだましていてもいい。
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    soseki1_1

    PROGRESS大佐🤕と喧嘩して家出した🔮を匿う副官🧲2
    /現パロ大占傭占
    「ああ、いるよ」
     携帯電話から届く声が誰なのかは判別がつかない。ただキャンベルさんの口ぶりと目線で彼だと解った。彼は眇めたような流し目で僕を見た。
    「僕の家に居る」
     裏切られたと思った。立ち尽くした足が後ろにたたらを踏んで、この家から逃げようとする。だけど裏切られたという衝撃が体の動きを固くしていた。そのうちに、彼は言った。
    「なんで? あげないよ。送り届けてなんてやらない」
     踵を返して走り出そうとした足が止まる。息を止めたままキャンベルさんを見ると、彼はもう僕の方を見てはいなかった。ただ、唇を歪めて厭に微笑んでいた。
    「飽きたんだろ?貰ってあげるよ。常々美味しいんだって聞いてたし」
     怒鳴られてる。とは、漏れ出る音で解った。そういう空気の振動があった。それに構うことなく、キャンベルさんは鬱陶しそうに電話を耳から離すと、液晶に指を滑らせて電話を切った。四方形のそれをソファに投げて息を吐く。僕の、何とも言い難い視線に気付いたのだろう。彼はもう一度目線だけで僕を見た。それが問い掛けの代わりの視線だと解ったから、逃げ出すより前に口を開いた。
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    soseki1_1

    PROGRESS求愛してる白鷹とそれに気づかない夜行梟/鷹梟/傭占
     そもそもの始まりは食事からだった。と、夜行梟は呟き始める。狩りのやり方を教えた頃から、やたらと獲物を取ってきたがると思っていたのだ。覚えたての狩りが楽しいのだろうと微笑ましく思えていたのは一、二年ほどで、そのうちどこからか料理を覚えて振舞うようになった。あれはそういうことだったのだ。給餌だ。求愛行動のひとつだったという訳だ。夜行梟はその真意に全く気付かず、私の料理美味しくなかったかな、悪いことしたな、なんてひとり反省していた。
     夜行梟の誕生日に三段の素晴らしいケーキが出された辺りから、つまりは今年のハロウィーンを終えた辺りから、いとし子は本領を発揮し始めた。まず、夜行梟の寝台に潜り込んだ。今思えばこのときに気付いてもよかった。よかったのに、夜行梟は布団の隙間を縫うように身を潜らせたいとし子に「怖い夢をみたのかい?」なんて昔と同じように声を掛けた。もうとっくに子供じゃなくなっていた白鷹は、このときは未だ我慢していた。「そんなものだ」とだけ言って隣に潜り込み、足を絡ませて寝た。今思い返すと完全に求愛だった。鷹族の習性だ。鳥型の鷹は空中で足を絡め合い、互いの愛情を深めるのだ。鷹族の遠い親戚からきちんと聞き及んだ話だった。のに、思い当たらなかった。まだ甘えん坊さんだな、なんて嬉しく思っていた。
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