厄日なこらさん【コラ誕前日】【Happy Birthday♡】
【誕生日おめでとうございます🎊】
打ち込んでは消してを繰り返して気がつけば15日に切り替わるまであと少し。
(いい年した男からのお祝いメッセージとか引かれてしまうだろうか…)
宿直室のベッドの上、メッセージアプリを開いては閉じてやっぱりやめておこうとポケットに携帯を仕舞う、でもせっかくメッセージを送れるタイミングだから、と再び取り出す。
誰よりも1番にお祝いしたくて日付変更と共にメッセージを送ろうと当直シフトの休憩時間も調整したのだが、よくよく考えれば深夜にメッセージなど迷惑ではないだろうかと不安になってきた。コラさんは年だし、もしかしたらもう寝てしまっているかもしれない。
考えてみれば誕生日を気にしていたのは子供の頃くらいで社会に出てからは大して気にしたことはなかった。そもそも自分より一回り以上年上の彼は誕生日に興味があるのだろうか。
誕生日当日にあたる明日の夜は二人で飲みに行く約束がある。コラさんにとって特別な日ではないから誘ってくれたのかもしれない。特別な日だと思っているなら俺と過ごす理由がない。
「ローと過ごせるなんて、今年はいい誕生日になるなー。」と笑っていたが、たまたま飲みに行く日が誕生日だったみたいなもんで他意はなかったのかもしれない。
日付変更まであと10分を切った。
【コラさん誕生日おめでとう】
コラさんの誕生日にメッセージする為に買ったスタンプページを開く、可愛らしいシロクマのベポがケーキを抱えているスタンプとクラッカーを鳴らしているスタンプで迷ってしまう。誕生日くらいしか使い道がないスタンプは今日を逃したら妹のラミの誕生日まで出番は無い。使わなかった方は来年の誕生日に活躍してもらうとしよう。本音を言うと来年は日付変更の瞬間を隣で祝いたいのだが。
たくさん送られてくるだろうメッセージに埋もれてしまうだろうから許してほしい。
ケーキを持っているベポを選択してあとは送信ボタンを押すだけの状態で画面を見つめる。
(…メッセージだけだから)
3・2・1…心の中でカウントして送信ボタンを押す。自分の葛藤とは裏腹に簡単に送られてしまったメッセージはすぐに既読がついた。
(あ、コラさん起きてる…)
返信が来るかもしれないと思うと心臓が五月蝿いくらいに脈うっている。
簡単にスタンプひとつで返事が来るだろうか、ドキドキとはやる胸を抑えて画面を見つめる。
(…反応ないな。)
少し落ち込んで画面を落とした。もう寝てしまおうとベッドサイドに手を伸ばすと携帯が震える。
「ぇ、あ…で、でんわ」
画面を確認すると着信を告げるコラさんの文字。携帯を握り、足早に宿直室を飛び出して非常口から外へ出る。
「コ、コラさん?どうしたんだ??」
「お?メッセージありがとな。メッセージが着たからちょうど休憩かなと思って電話しちまった。今大丈夫か?」
「ぁ、俺は全然大丈夫。」
弾む息を悟られないように深く酸素を吸い込み呼吸を整える。他愛ない会話に花を咲かせてふと思い出す。
「あ、…コラさん誕生日おめでとう。」
「ハハッ、ありがとう!ローに一番に祝って貰えて嬉しいよ。」
時計の時刻を確認すると0:12。来年は直接0:00に言いたいものだと思った。