厄日なコラさん【コラBD後日談】「お、ロシー時計変えたのか?」
いい時計だなと兄から声をかけられて気分が上昇するが、見られて減ってしまっては困るとそっとシャツの袖で隠した。
仕事中、大した用事もないのに時間を確認してしまうようになった。正確には腕に巻かれた真新しい腕時計を確認しているのだが、目に入る度にだらしなく頬が弛んでしまうのも仕方ない。
「だろう?プレゼントに貰ったんだ。」
「へぇ、良かったな…」
フフンと鼻歌でも歌い出しそうな弟を微笑ましく思ってしまう。
誰から貰ったのか訊いてはいないが大体の察しはつく。最近弟の口からよく出てくるトラファルガーと言う青年だろう。調べたところによると地方都市にあるトラファルガー医院の院長の息子でこちらへ出向してきているようだ。
知らないうちに接点でも持ったのか年が離れているわりによく一緒にいるようで休日に誘っても「ローと約束があるから!」と断られる日が多い。少し興味が湧いて、連れてくればいいと言えば人見知りだから駄目だと断られた。奪われるとでも思っているのか40近い男がみせる独占欲に笑ってしまう。
腕時計をそっと確認しては頬を綻ばせているのだから分かりやすい。
兄としては少し寂しい気持ちもあるが、当たり障りのない付き合いばかりであまり特定の人物と長続きしなかった弟がここまで入れ込む相手だ。多分悪い奴ではないだろう。
腕時計を贈るのは【貴方と時間を共有したい】だったか、2人とも意味が分かっているのか少し気になるところだが、まぁ順調に交流を重ねているようで何よりだ。
恋人かと問えばそんなんじゃねェと言っていたが思っているより脈があるのかもしれない。
「…ドジって壊すなよ?」
「おう!」
10月に相手の誕生日があると言っていたがいい報告をきけるだろうか。