厄日なコラさんシリーズ「…どうしたんだ、ソレ。」
2人で酒を飲もうとローを部屋に招いたいつもと変わらない週末。シャワーを浴びて、下だけ穿いて部屋に戻れば、ローは缶ビール片手にロシナンテのシャツ一枚でソファーに座ってテレビを観ていた。すっかり慣れた様子を微笑ましく思いながら、自分も冷蔵庫から冷えたビールを取り出していつものように隣りへと腰かけて、隣に座るローを盗み見る。
自分のシャツ一枚でくつろぐのもいつもの光景になりつつあるが、裾から覗く生脚は意識しないとずっと見つめてしまうし、最近気がついたが大きすぎるシャツの襟ぐりからは形のいい鎖骨と胸が見えてとてもそそられる絶景となっている。あと少しで胸の飾りが見えそうだと覗き込みたくなるのを、ごくりとビールで不埒な考えごと流し込んだ。
「なァ、コラさん?」急にかち合った視線に自分の邪な視線に気づいたのかとドキリと心臓が跳ねる。思わず身構えていると前から訊いてみたかったんだと冒頭の台詞。ローの細い指が指し示す場所には裂傷に似た痣がある。
「あぁ、これか?生まれつきあるらしくてさ…なんか傷みてえだろ?後ろにもあるんだ。」
左胸から少し下、白い肌に薄く色ついた痣が際立っているようで子供の頃は少し恥ずかしく思っていたが、大人になってもドジは治らず生傷が絶えないせいで、たくさんの傷跡に埋もれてまったく気にならなくなっていた。大して目立たない痣が気になるのだと言うローに少し不思議に思いながら背中を向ける。
「へェ、すごいな…」
後ろにもあるんだとそう言って向けられた広い背中の肩甲骨のあたりにも同じくらいの大きさの痣がみえた。
(まるでナイフかなんかが貫通した跡みたいな痣だな…)
「きっと前世とかで悪いことでもしちまって刺されたんかもな!」
「コラさんが悪いことするなんて想像出来ねェな…」
けらけらと可笑しそうに笑うコラソンの言葉にどこか胸が締め付けられるような気分で言葉を絞り出す。出会ってから、そう月日を重ねてはいないが冗談でも自分を悪く言わないで欲しいと思うくらい彼に惹かれているのだ。痣に触れることを口実にしてその肌に触れたいくらいに。
「…ッッ、?!」
そっと労わるようにその痣へ触れると、触れた指先からビリビリと全身へ電流が走ったように淡く痺れる。
「お、大丈夫か?静電気かな?」
「なんかビリってした…」
(…なんか、ローに触れられると擽ってェというか…変な感じがするな…)
「ほ、ほら…汗も流したことだし、酒でも飲むか?」
「あ、あぁ…」
兄から美味そうな酒を貰ったんだと立ち上がったコラさんの背中を見送って痺れた手を見つめていた。
(一瞬浮かんだ景色はいったい…なんだったんだろう?)