花が咲くのが先か、種が先か「拾った犬の面倒でも見て、足りてない良心でも養うことだね」
「いいね。タイラー」
そう威圧するように目の前の女性が自分の隣にいる青年に言い放ったことで、ショウの抱いていた疑問が確信に変わってしまった。タイラー。タイラーって言った!確かに印象的な顔の傷跡は自分が知っているものと同じであったが、現実ではそんな不可思議なことは起こり得ないので他人の空似だと脳に言い聞かせていた。まさか他人ではなく本人だとは。
だとしたら自分は何で、なんでこんな摩訶不思議なことが?と別の疑問がポコポコ頭に浮かんだが、隣の青年(正確な年齢は分からないので普段と比べて青年と言ってるだけだ。もしかしたら青年という歳ではないかもしれない)が「イエスマム」とお利口に答えたことで目の前の女性が自分の方に向いたので、この疑問達は一旦頭の片隅へと帰宅させることにした。
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