煙草
ある日荒船が諏訪の家に遊びに行くと、卓袱台に焦げた跡があった。
それからというもの、その跡に苛まれている。
冬の時期には炬燵にもなる諏訪家の四角い卓袱台は天板と足が白い。だからその中央に近い所にある黒と茶色の焦げ跡と思わしきそれは、例え机の上にごちゃごちゃと物が置いてあったとしても結構な割合で目についた。半年前に荒船が初めてこの席に座った時には無かったはずなので、この家に上がるようになってからそのXデーまでの間に灰皿から灰がこぼれたとか、手に持っていた煙草が知らぬ間に短くなったとか、それに似たような出来事が起こったのだろう。
それからと云うもの、何をしていようがその席に座ってその焦げ跡を見るたびに、犯人は誰だろうと考えるのがもう習慣になっている。
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