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    MMogu4410

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    第4回 「一口ちょうだい」
    荒諏訪
    #rightsw_draw

     一口ちょうだい テレビもついていない部屋はブーンと扇風機が音を立てながら首を振る音くらいしか聞こえないから、唾液を絡め合いながらキスをしているとのぼせそうなくらいその音しか聞こえない。興奮し始めてるのか、ただ息がしづらいのか「ン、ぁ」「ふ、ぅ」と溜息みたいな声が唾液の音と一緒に聞こえて来て朝方までの興奮が呆気なく戻ってきてくらくらした。

     夏というにはまだ一足早いというのに、エアコンが壊れた諏訪の部屋は真夏といって良かった。
     さっきからおよそ現代的とは言えないデザインの扇風機がやっとのことでぬるい風を掻きまわしているが、この暑さでもしかするとコイツも事切れてしまうかもしれないなと荒船は思った。
     暑い暑いと言いながらせせこましい部屋で耐えているのは時間指定の宅配便を待っているからなのだが、先週の近界民の誘導装置から外れたせいで市街地戦闘があった際に破壊された道路の復旧が間に合っていない為の交通事情のせいか、単純な遅延なのか、とにかくドライバーはまだ来ない。

     昨晩のシフト終わりに諏訪の家に寄った荒船は、すれ違いの生活を送るふたりにしては珍しく夕食をともにし、会話を楽しみ、その流れで枕も共にした。久しぶりの同衾は割と盛り上がり、いつもより執拗に追い立てたせいであの諏訪が目に涙を浮かべながらもう許してと言うまで褥を楽しんだ。それからあと少しで夜空も白じむという頃合いに漸く寝始め、のんびりと朝というよりは昼に近い時間に起き出して昨日のうちに買ってきた食パンを焼いたり、半分インスタントのコーヒーを入れながらすっかりよれたシーツやバスタオルなんかを洗濯機に放り込んだりしていると、寝ぼけと寝ぐせで普段のワックスでキメキメの諏訪からは想像できないくらい幼げな諏訪が寝床から出てきて「そういえば宅急便くるの忘れてた」と呟いた。
     「寝てるうちに来なくてよかったな」
     等と言い合って、特別最高にうまい訳でもないが空腹を埋めるには十分な朝飯を片づけた。昼が過ぎた頃急激に気温が上がり、エアコンを入れた所久しぶりの稼働でどこかがイかれたらしくブーンと聞きなれない音を立ててエアコンは停止した。その後電源を入れ直そうが、電池を変えようが、コンセントを入れ直したとしてもエアコンは無言を貫いた。
     それから扇風機は無体を強いられているという訳だ。
    「なあ冷蔵庫のアイス食っていい?」
     首に巻いたタオルで額の汗を押さえながら荒船が言うと、無風のベランダでドライバーが来るのを見ていたのか、諏訪は火もついていないタバコを咥えたまま部屋に戻ってきた。
    「アイスって棒のやつ?」
     荒船が頷くと「味が知りたいから一口くれ」と答えた。
    「そんなにうまいの?」
    「いや、日佐人がうまいからってくれた」
     つまり諏訪隊長は、可愛い隊員がせっかくくれたのだからひとくちでも食べて感想を伝えようと思っているという訳だなと荒船は理解した。すると荒船は自分が思うよりも先にぬっと手が伸びて、諏訪の口をふさいでいる火もついていないタバコを取り上げ適当な棚の上に置くと、昨晩の名残で幾分ふっくらと熱い諏訪の唇を塞いで舌をあわいに忍び込ませた。
    「おい」
     諏訪の声は固く、合わされた唇から逃れようと体ごと捩じらせ逃げようとするが、がたがたとそこら中の物にぶつかりながら床に引き倒してマウントを取ると腹の下に諏訪の体を閉じ込めてキスを深くした。その頃には荒船の頭の中からはこの熱波の中をこちらに向かってアクセルを踏む宅配便のドライバーの事など忘れていた。蹴とばした先にあった積まれた本の山がドサと大げさな音を立てて崩れ、卓袱台の上の麦茶がガタガタと揺れながら水たまりを作っているだろうが、諏訪のしっとりと汗をかいた腹を撫であげ痩せた胸を撫でて小さく尖りを見せる粒を嬲ると昨夜の興奮が容易に戻ってきた。
    「あらふね、ふざけんな」
    「どうせまだ来ねえだろ」
    「そういう事いってんじゃねえって、っ、あっ、」
     膝を立ててそれ以上の営みを阻止しようとする諏訪のハーフパンツの中に手を突っ込み中で荒船の勢いに飲み込まれそうになっている秘所に手を伸ばした所で、ピンポーンと間延びしたインターフォンが鳴った。
     ふたりは一瞬身を固くしてお互いを見た。
     その瞬間荒船の視界はぐるりと回って床を見ていたはずが、天井からぶら下がる照明を見ていた。恐ろしく素早い身のこなしで諏訪が荒船をひっくり返すと、あっという間に立ち上がって脱がされかけたハーフパンツを引き上げていたのだった。
     荒船は突然の終わりに呆然としながら、殊更に着乱れた諏訪を表に出さないでよかったな。と他人事のように思いながら、興奮しかけた下半身はひとまずそのままにして笹森日佐人隊員の一押しアイスを冷蔵庫から出して封を切った。荷物を無事に引き取った諏訪はアイスを食べている荒船を見ると肩をすくませたかと思うと、「一口ちょうだい」とソーダ味の棒付きアイスを食べる荒船の唇をぺろりと舐めてソーダ味で僅かに冷えたそこを啜った。
    「一口でいい訳?」
     荒船がまたアイスを齧りながら聞くと、諏訪は勿体ぶった顔をした。
     そしてまだしばらく扇風機はぬるい空気を混ぜる事になるのだろうと荒船は思った。


    終わり
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    さわら

    DOODLE貴方はさわらのアシュグレで『ひねくれた告白』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/375517
    140字を毎回無視するやつ
     口付けるように指先が額に触れる。
     普段は重く長い前髪に隠れたそこを皮膚の硬い指先がかき分けるように暴いて、するりとなぞる。
     驚くように肩を揺らした。けれどそれ以上の抵抗らしい抵抗はできない。ただされるがまま、額をなぞる指の感触に意識を向ける。
     アッシュの指がなぞっているそこには、本来であればなかったはずのものがあった。ある時から消えない傷となって残り続けているそれは、過去のグレイとアッシュを同じ記憶で繋げている。
     アッシュがこちらに触れようと伸ばしてくる腕にはいつも恐怖を覚えた。その手にいつだって脅かされていたから、条件反射で身が竦む。けれど、実際に触れられると違うのだ。
     荒々しいと見せかけて、まるで壊れ物に触れるかのような手付き。それは、本当に口付けられる瞬間と似ていた。唇が触れ合ったときもそれはそれは驚いたものだけれど、最終的にはこの男に身を任せてしまう。今と同じように。
     乱暴なところばかりしか知らないせいか、そんなふうに触れられてしまうと、勘違いをしてしまいそうになるのだ。まるで、あのアッシュが『優しい』と錯覚してしまう。
     そんなはずはないのに、彼からはついぞ受け 2766