「ふーむ…やはりこの壁画と先程確認した壁画とは年代に開きがあるのは確信して問題なさそうでしょう。となるとそこから新たに考察が広がるわけですが…」
そう壁画の前でぶつぶつと何かを呟きながら青年は大きな背中を姿勢悪く丸め、食い入るように壁画を眺めていた。口元に当てられた青年の指先はどの爪も歪に歪んでおり、考え事をする際に爪の噛み癖がある事が伺えた。大きく見開かれた髪の隙間から覗く右目は、木の洞のよう。己が必要とする知識、情報を貪欲に飲み込み、反対にそれ以外は完全にシャットアウトするかのような気迫があった。
だからこそ青年は自分に近づく小さな星の子が訝しげに「プァプァ」と星の子特有の鳴き声を発していても、気が付くことは無かった。
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