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    tomoshi

    エアコレ展示用アカウントです

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    tomoshi

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    常陽ラザルスと朝日奈5人でポットラックパーティーするだけの話。

    ポットラックパーティーへようこそ!五月某日。私、朝日奈唯と我がオケのトランペッター二人、それからネオンフィッシュは、初夏の風が抜けるダイニングで一堂に会していた。

    「お、これで全員そろったんじゃね?」
    「みたいだね。それにしても、リアルに料理を持ち寄ることになると思わなかったな」

    暑さに髪を結ぶ桐ケ谷晃の横で、仁科諒介が苦笑する。そう、本日は私が主催するポットラックパーティー当日。きっかけはもちろん、バレンタイン前夜にプレイした、世界の女王を目指す、例の乙女ゲームだ。作中で何度も行われていた催しを実際にやってみたかった私は、四人にスケジュール調整を依頼。そして本日、ついに念願のポットラックパーティーが開催される運びとなったというわけだ。

    「ゲームでは好感度調整に色々と気を使ったが、我々は気楽にいこうじゃないか」

    さあ、パーティーを始めよう。
    刑部斉士がそう言って、それぞれが持ち寄った手土産を披露するよう促す。みんな、何を持ってきてくれたんだろう。私がわくわくしながら、ダイニングテーブルを見つめている――と。

    「っつーか、一人、もう言わなくても何かわかるヤツがいるな」

    桐ケ谷の言葉に、全員の視線が笹塚創に集まる。彼の手にあるのは、見慣れた赤いロゴが描かれた白いレジ袋。なかから出てきたのはもちろん、おなじみのバーレルだ。髭と眼鏡のおじさんが柔和に笑う姿は、安定のおいしさを思い出させてくれる。

    「笹塚さんが入ってきた時の匂いで、もうわかりましたよね」
    「それな」

    桐ケ谷と私が顔を見合わせたそばで、笹塚の相方が青い顔をしている。どうしたのかと尋ねてみたが、仁科はこちらに気づかない。

    「笹塚。あの……さ、今日、俺、お前に取引先に手土産もっていけよっていったけど、まさか、コレと同じもん、持って行ってないよな?」
    「同じだけど。なんか問題ある? うまいじゃん」

    あちゃー。頭を抱える仁科の肩に、笑いながら腕を回すのは刑部だ。

    「“指をしゃぶるくらいおいしい”世界的に有名なチキンだ。きっと先方も喜んでいるさ。まあ、TPOに合った土産かと言われれば、はなはだ疑問ではあるが」
    ですよね。しゅんとする仁科の横で、さっそくチキンにかじりつこうとしたコンポーザーの動きは見逃せない。とりあえず「まだダメ」と彼の手を叩いてから、私は桐ケ谷が抱えている袋に目を向けた。

    「お、俺か? 俺は自分が食いたいもん、もってきたぜ」

    私の視線に気づいた桐ケ谷が底の広い紙袋を開けると、芳しいカレーの匂いが満ちる。袋から小さな包みをひとつずつ取り出して開封すれば、中身はなんと全部カレーパンだった。

    「今日は朝から一回行ってみたかったパン屋、ぜーんぶ回ってきたわ。こっちの丸いのは、表参道で限定十個しか売ってないチーズカレーパン。コーンフレークまぶして揚げてるやつは、最近駅前に出来た新しいパン屋のイチオシ」

    美味しいカレーパンを求めて、バイクで首都圏の名店を巡る桐ケ谷を想像すると、なんだか微笑ましい。ひとつ、緑色のカレーパンがあったので、これは何かと聞いてみると、タイカレーが入っているそうだ。どんな味がするんだろう。

    「やはり、そうきたか」

    気づけば、すぐ後ろに刑部が立っている。「そうきたか」とはどういう意味だろうと私が首をかしげていると、刑部はおもむろに輸入食品のショップ袋を私に差し出す。彼に「開けてごらん」と言われて、いそいそ袋を開いてみると、なかから出てきたのは黒いボトルだ。ラベルをみてみると――。

    「カレーといえば、インド。インドといえばチャイだろう。今日は簡単に作れるように、牛乳で割るだけのシロップにした。コンミスはホットとアイス、どちらが好みだい?」
    「俺はホット。あと砂糖追加で」

    私が答えるよりも先に別の注文が入った。笹塚のオーダーに続いて私が「アイスがいい。あと豆乳割りで」というと、我らがバリスタは一瞬の間のあと、「コンミスはアイス豆乳割り、笹塚はホット、シロップ多めだな」と復唱する。

    「あ、よかった。意外とみんなメニュー被らなかったね」

    続いて桐ケ谷のカスタムを聞き取る刑部の前では、仁科がそれぞれの品を眺めつつ、箱にかかったリボンを解いている。カラフルなその化粧箱を開けると、ラングドシャクッキーの花びらのなかに、ホイップが詰まった色とりどりのチューリップが所狭しと並んでいた。

    「可愛い! もう一回、春がきたみたい」
    「でしょ? ピンクのがベリーで、黄色がマンゴー。チョコっぽい色のはナッツだよ。食後にでも、お好きなのを召し上がれ」
    「すっげ。本物の花びらみたいだな。こういうのってさ、一枚ずつ剥がして食いたくならねえ?」
    「いちまーい、にまーい、って?」
    「ふふっ、言い方。それだとまるで『皿屋敷』じゃん」

    意図せず古典怪談のボケになってしまって、仁科にツッコまれてしまった。私がおどけて幽霊の真似をして遊んでいたら、タイミングよく刑部が人数分の取り皿を並べ終える。

    「楽しそうにしているところ水を差すようで悪いが、コンミス。君の手土産が見当たらないが。そろそろ始めないと、あそこにいる空腹の作曲家が、一人でパーティーを始めてしまう」

    それはいけない。私は刑部に「私の料理は庭にある」と告げると、大慌てでキッチンに用意してある“アレ”を取りに行った。


     2


    一番乗りで庭へ出たのだろう、桐ケ谷の「マジかよ」が聞こえてきて、嬉しくなる。私が茹でておいた素麺を持ってバルコニーに出ると、珍しくも仁科と刑部がお腹を抱えて笑っていた。

    「ああ……朝、竹を割る音が聞こえたのはコレだったんだ」

    笹塚がデッキチェアから立ち上がり、ウォータージャグのコックを開ければ、水が出る。それぞれにお椀を渡して、つゆを注いだら、いよいよ、流しそうめんをアペタイザーにした、ポットラックパーティーの始まりだ。

    「さあ、みんな! 箸は持った?」

    頷くみんなの笑顔がまぶしい。五月晴れの午後、竹樋を流れていく麺は、太陽の光を反射して、白くきらきらと輝いていた。 
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