その夜、嫌というほど教えられた。 路地裏は腐卵した生ゴミの臭いと吐瀉物が充満している。
下品な落書きだらけの壁。転がる空瓶。誰かの血痕。錆色のゴミ箱は役割を放棄してスクラップと化している。
浮浪者が「アー……アー……」とダラダラ涎を垂らして這いつくばる。野良犬と鴉が死肉を奪い合い、ギャアギャアと騒がしい。孤児が転がっている女の死体から財布を盗むのを横目にひっそりと隠れている地下へ繋がる階段を降りる。
顔色の悪い受付嬢が顕になった胸を寄せて上目遣いに媚びた笑みを浮かべ、骨と皮にしか見えない鶏ガラのような指で触れようとするのをサラリと躱した。
「あら、つれないわね」
「ヤク中の誘いは受けねぇよ」
黄ばんだ眼球がギョロリと動いて森を睨む。
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