「俺、今回は何気に良く働いたと思うんスけどね」
「あ?」
ぽつん、と呟かれた言葉に、イレヴンは訝し気に眉を寄せた。
―――数日前。
幾つかある拠点の一つ。
色鮮やかなやたら色気のある青年……イレヴンが幼子のような一途な思慕を寄せているあの穏やかな男が、少し前に冒険者最強と言われている黒尽くめの男とイレヴンと共に、三人で行きたいと言ったのは少々遠方の迷宮。
蛇の道は蛇というべきか、意外と知られていないが、あの辺りはあまり素行のよろしくない連中の棲み処になっていた。実際、手練れの冒険者ですら被害に遭う事があるらしいのだが、イレヴンからすれば可愛らしいばかりのオイタだ。
だが、そこにあの穏やかな男が絡むとなれば話は違う。
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