くぐりが17歳になる話 何度目かの天井の下で、來人は目覚めた。昨夜は潜といつものホテルで過ごしたんだったなと、アルコールの残ったあたまでぼんやりと思い出す。しばらくそのままぼうっとタブレット端末のメールをチェックしていると、潜も目覚めたようで、もぞもぞと布団の中から起き上がった。しかし、そこにいたのは、いつもの見慣れた彼ではなかった。
「潜……?」
顔立ちや肌と瞳、髪の色はよく似ているが、随分と華奢で、幼く見えた。高校生くらいだろうか、美少年という言葉がよく似合う。
「?、……っ」
彼は目をまるく見開いてこちらを見つめた。潜、ともう一度声をかけるとそのまま目を背け、顔を覆って肩を振るわせる。
「ふ、あは……っ。……かみさまは本当にひどいね、いまさら現れて、なんだって言うのかな」
ふーっと深く息を吐いて、もう一度こちらを見たあと、静かに手を伸ばす。來人の首に腕を絡め、前髪をふと払って鼻先が触れそうな距離で静かに囁く。
「ねえ、神様じゃないあなた……誰だか知らないけど、僕と遊びたいの?」
いつもの潜と似ているセリフではあったが、揶揄うような挑発的な笑顔がなくて少し驚く。幼い彼は、抜けるような白い肌に漆黒の瞳で、切実にそれを望んでいるように思えた。
「きみはいま、いくつ?」
「……それが何か関係ある?」
「ああ気を悪くしないで、知り合いに似ているから気になっただけだ」
「……なんだか子供扱いしてるみたいだけどもう大人だよ、歳はわすれた。」
つまらなそうに自分の手をみつめてそう言った。昨日は確かに24歳の潜とここにきたはずだ。眠っている間に若返ったとでも言うんだろうか。本人は何も知らないようで、眠っている間に俺がここに連れてきたと解釈しているようだった。