副長は万事屋箱推し「おい、山崎なんだアレ」
そう目線を送った先にはかぶき町の一角の雑貨屋で。日用品から化粧品、玩具と流行りの物だけを取り揃えた店だ。その店頭のワゴンに見覚えのあるカラーリングのぬいぐるみが数体乱雑に積まれていた。
「ああ、江戸を救った万事屋一行をぬいぐるみにしたらしいですよ。かぶき町は野良猫も多いから猫になった万事屋だとか」
先の大戦でこのかぶき町の面々が件の万事屋に依頼届を出しただけはある。この江戸に、かぶき町にはなくてはならないのだ。彼らが。
なのに、なぜかそのぬいぐるみの売れ方に偏りがあるのが目に付く。
「なんか…眼鏡と犬だけ残ってねぇか?」
「まぁ、万事屋と言ったら旦那ですし、チャイナさんの人気は男性からも支持されてますからね。地味なメンバーは売れ残…痛いっ!」
何て事を言うんだと山崎の言葉を遮るように頭を叩くとギロリと睨みその胸に札を突きつける。
「なっ…何です副長…」
「欠けたら意味ねぇだろ…」
「はい?」
何を言っとるんです?と土方を見るとその肩がわなわなと震えている。
「全員…一人残らず買って来い!」
「へいっ!」
そうだった。
このお方は…
万事屋箱推しなのだ。
山崎はやれやれとため息を吐きながらも自分の頬が緩むのを感じていた。