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    降志前提のダクバがわちゃわちゃしながら事件を解決するお話です。
    書き上げたら本にします。
    まだ書き途中なので色々変わるかも?
    前回の続き。
    オリキャラが出張ります

    #降志
    would-be
    #ダークバッチ組
    darkBatchGroup

    Redline 第三章 志保が捜査協力を行なったその日の夕方。会議室にひょっこりと顔を出したのは工藤新一だった。今は東都大学の大学院へと進んでいる。
     そんな彼が持ち込んだのは、捜一が追っていた原宿で起こった無差別殺傷事件、通称『原宿の悪夢』で知り得た捜査情報だった。もちろんそんなものは公安がすでに押さえているし、今さら目新しいものもない。しかし彼は志保へと解析の依頼を持ってきたのだ。
    『こっちなら販路を洗えるんじゃないか』と。
     確かに、最初に公安が志保に解析を依頼したそれはVRゴーグルとリタリンもどき以外の物証はなかったが、新一が持ち込んだそれら、には販路を洗えるだけの材料が揃っていた。
     一台のラップトップだ。それが、新一が志保へ解析を依頼したい代物だった。
    「これだったら証拠が残ってると思わねぇか?」
    「そんなの、もう鑑識が浚ってるでしょ」
    「それで何も出ないから持ってきたんだろぉー? なぁ頼むよー。絶対こっちの捜査に役に立つし! な?」
     両手を合わせて頭を下げる新一の姿に、ため息をひとつついて、コーヒー入ったソーサーを傾ける志保。
     ここは公安の捜査会議室。周りは新一や志保とは一周りも二周りも大人のベテラン刑事が巣食うその場所に平然と存在する二人は、いやはや肝が据わっていると言うべきか。
     周りも周りで二人のことを特段気にする様子もないのは、この場にいるのが常連だからだ。
     新一は高校生から、志保も大学に入ってから、度々捜査協力として庁舎に出入りをしていた。新一に至ってはゲスト用のセキュリティカードを常備するまでだ。
    「別に私はいいけど、でも、その判断を下すのはあの人だから」
     そう、志保が降谷のほうを見やると、降谷と目が合い無言で頷く。そして志保はまたため息をつく。
     この無言のやり取り。恋人同士でもここまで意思疎通が取れるのもどうなのか。
    「じゃぁ、預かるけど……どっちにしろこっちの捜査範囲よ?」
    「いいんだって、俺だってそれは諦めてる」
    「あら、随分と物分かりがいいのね」
    「俺だってそりゃぁ学習したさ。降谷さんの手の内に入ったら、なんにも流れてこないからな」
     新一の口から発せられたそれが、公安部と刑事部との力関係を表していた。
    「思ったんだけど、こんなもの調べなくても、供述でなんとかならないわけ?」
    「ならないから頼んでるんだよ。ずっと意識が混濁して会話もままならないらしいから取調べなんて論外だしな」
    「ただのリタインもどきでそこまでになるかしら? 離脱症状は出たとしてもそれはちょっとひどすぎないかしら?」
    「いや、他の薬物も出たらしいから、一概に今回のそれだけでの症状ってわけでもなさそうだぜ」
     相乗効果が現れる組み合わせがあるのか、他の薬物での反応なのか、新一からの情報では判断できない。
     もしかしたら、自分の知らない薬なのかもしれない。解析を頼まれた薬とは違う他の何かが悪さをしているのかもしれない。そんな都合のいい思考だけが巡る。できれば、血液や尿の検査結果が見たい、とも。
    「……そう、ね……」
     志保の歯切れの悪い応答に、志保の顔を伺う新一。その顔が、明らかに眉間に皺を寄せて考え中だったため、きっとまた難しく考えているんだろう、と志保の背中を叩いた。
    「痛っ。何すんのよ」
    「顔、怖くなってたぜ?」
     こんな、と両手の人差し指で目尻を上げて吊り目を作る新一の顔に、小さく笑い、心配をかけていたことに気がつき一つ伸びをする志保。
     とりあえず、目の前にある作業をこなすしかない、と作業へ取り掛かることにした。


     押収されたラップトップは案の定と言うべきか、初期化が行われていた。
     表向きは、だ。
     起動を試みたもののOSすら起動しないが、そうとなれば直接SSDにアクセスすればいい。そう、SSDの表面上はまっさらな状態だった。表面上は。ここからは志保お手製のデータ復元ソフトの出番だ。
     押収されたラップトップを解体しSSDだけ取り出すとUSB変換ユニットに接続し自前のラップトップへと接続すると、復元ソフトにかける。あとは勝手にやってくれる。なんとも簡単なものだ。
     志保はその間にコーヒーでも飲もうと、会議室にあるコーヒーサーバーから備えつけのカップソーサーへとコーヒーを入れる。なんとも慣れたものだ。一口それを飲み込んで、相変わらずの不味さを感じる。時間の経った、酸化してしまったコーヒーの味が苦手だった。それでも飲んでしまうのは習慣か。
     会議室内を見渡すが、別に今までも見慣れた光景。ただ違うのは、時折FBIが顔をみせる、ということだけだろうか。なぜ彼らが来日したのか、詳しいことは知らないが、国際的な何かが関与していることは確かだった。例えば、例の組織とか……。
     そこで志保はかぶりを振る。どうしても例の組織に紐づけてしまう、その短絡的とも呼べる思考はよくない傾向だと、考えを改めさせる。しかし、完全にそれを払拭するには共通点が多すぎた。
     例の解析に回ってきた薬は、過去に志保が作り上げた薬に構造が似ていた。添加物さえ安価な粗悪なものに変えられていたが、元の薬の成分。それは志保がリタリンに擬態させるために作った薬と酷似していたが、そんなことを口にしてしまったらそれこそ薬事法でしょっ引かれてしまう。簡単に口外することはできない。それが例え、信頼を寄せている仲間でも、だ。
     今の自分はシェリーではない。全てを許された宮野志保なのだと言い聞かせる。
     
     志保のラップトップに復元完了の通知が表示される。
     初期化しなければならないほど隠したかったものはなんなのか。そもそも初期化などをしなかったら、隠したいものだけを消していれば暴かれなかったかもしれないのに、とちょっと抜けているのかな、などと憶測する。
     データが復元されたところで、SSDをラップトップに戻しOSの起動をしてみてもよかったが、フォルダ構成は頭に入っているのでその必要はなさそうだ。第一、面倒だ、と。
     いわゆる、Cドライブを上から順に漁っていく。関係のありそうなファイルのフルパスをテキストエディタにコピーを取りながら、コマンドラインでデータ探索だ。
     そしてどのくらい経っただろうか。行き着いた先は、sevillaという隠しフォルダに入っていた表計算のファイルだった。ファイル名は見た感じ、年と月。その、『如何にも』な怪しさに、トラップを疑いながらもそのファイルを開くことにする。
     ファイルの中身は、名称と思われる文字列と、カンマ付きの数字が表示されている。ヘッダー情報も何もないので、これがなんの数字なのかの手がかりはなさそうだ。
     なんの数字かもわからなければこれが重要な情報かすらもわからない。
    「なんかわかったかー?」
     突如として頭上から降ってきた気の抜けた声。それは随分前に帰ったと思われた新一の声だった。
    「あなた、帰ったんじゃなかったの?」
    「いやー? ちょっと捜一に行ってただけだよ。それよりなんかわかったのか?」
     何かわかったのかという問いに答えられる回答を志保は持っていなかったが、頭のキレる新一なら何かわかるかもしれない、とちょっとと新一にディスプレイを見せる。
    「隠しフォルダに入ってたの。何かの数字だと思うんだけど、全然見当がつかないのよね」
     んーと唸りながら画面を凝視する新一。
     隣で同じく画面を見る志保はあることを思いつく。
     この文字列、試しに検索してみようか、と。
    「「この文字列」」
     同じことを思ったのか、新一を志保の言葉が重なる。そして顔を見合わすと、志保の手がぬっと伸びて、トラックパッドを操作し、一つのセルから文字列をコピー。そのままブラウザの検索窓に貼り付けて小指でEnterを叩く。
     検索結果が表示された画面を確認し、二人はまた顔を見合わせた。
    「「ビンゴ!」」
     検索結果には該当文字列の会社名が表示されている。
     他のものはどうかと志保はまた別のセルから文字列をコピーすると検索にかける。案の定、検索結果は会社名だ。
     新一が他のも、と志保はランダムに選んだセルからの文字列をコピーして検索にかければ次々に会社名がヒットする。これで確定といえよう。
    「しっかし、会社名とその隣の数字って……まさか金額じゃないよなぁ?」
    「金額だとして、単位がわからないわ。100とか200とか……あ、資本金って千円単位よね?」
     と、検索結果から会社概要へ飛び表示されている資本金と比べてみるが予想とは異なる数字が表示されている。
     そんなうまくはいかないし、第一にそうだとしても隠しファイルするほどのものでもない、と、また意味がわからなくなる。
    「ま、ここからは降谷さんたちにバトンタッチじゃねぇか?」
     あれほど食い入るように画面を見ていた新一が体を引いて、後方にあった長机へと腰を掛ける。足をぶらんぶらんとさせて時間を持て余している子供のようだ。
    「あら、あっさりと引き下がるのね? 探偵としてなんの数字か気にならないの?」
    「そりゃぁ、気になるさ。でも、こういうのって得手不得手があるだろう? 多分これは俺の範疇じゃない」
     口ではそれらしいことを言っているが、新一の興味が削がれたのは言うまでも無い。きっとこれは謎でも無いし、トリックもない。何か意味のある数字であることは確かで、そこに解くという工程は必要がいらなのならば、自分の役目ではない、というのが新一の見解だろう。だからここからは“彼ら”の範疇だ、と。
    「まぁ、そうね。他にも探してみて何もなさそうなら、これを報告しておくわ」
    「頼んだ」
     じゃぁな、と新一は会議室を後にした。残された志保は、解析の続きに取り掛かる。時刻は二十一時を回っていた。

     そろそろ帰らないか、と初めに声にしたのは赤井だった。志保からしたらどこにいたのか皆目見当持つかなかったが、ぽっと志保の前に現れた。同じ会議室にはいなかったし、志保が庁舎に来てから一度も目にしていなかった。合同捜査をするために来日してきているのだし居ること自体、なんの不思議ではないのだが志保にとっては突然だった。
    「どっから湧いてきたの?」
    「人をボーフラみたいに言うな」
    「帰らないのか? 二十二時過ぎてるぞ?」
    「え、もうそんな時間なの?」
     志保の体感では新一が帰ってから十分ほどしか経っていないと思っていたが、一時間も調べていたことになる。正直なところ、赤井が声をかけてくれてよかったと思っている。だって、もう調べ尽くしてあのファイル以外に目星いものは出てこず、難航していると言ってもよかったからだ。
     グッと、伸びをする志保。
     今日はこのくらいにしておこう、とラップトップを閉じる。
    「今日は終わり!」
    「それがいい」
     赤井が降谷を見やると目が合った。そしてアイコンタクトでそろそろ、と合図を送ると、降谷も自分の腕時計に目をやりそんな時間か、と自分のラップトップを閉じる。
     降谷は風見を探し、帰ることを告げると会議室全体が帰宅モードになった。
     志保が荷物をまとめている間に赤井は車を出してくる、と言って会議室を出て行った。
    (この流れは、秀の運転で帰るのかしら。ま、たまにはいいわよね)
     日本にいる間の赤井の愛車は志保の愛車であるミュルザンヌだった。就職祝いに、と中古のそれをプレゼントしたのは言うまでもない赤井だった。志保ははじめ、こんな高価なものは受け取れないと拒んだのだが、日本にいるときは貸してくれ、という言葉で宥められてしまった。そしてそれが今なのだ。
     志保自信、ミュルザンヌのことは気に入っているが、車移動の必要な機会が多くはないもうなので宝の持ち腐れだとは思っていた。ただ、整備がてら定期的に走りに出ることはいい気分転換になった。そう言う意味でも、いいものを貰ったなとは思っている。降谷の印象が良くないのは言うまでもない。
     降谷を見やればもう会議室を出ようとしている。それに続く志保。解析をしていたラップトップ一式は風見に預けた。また明日使うから、とも付け加えて。
     廊下で二人並んでエレベーターまで一緒に歩く。
    「私は秀の車で帰るけど、夕飯どうする?」
     志保の言葉に降谷は右眉を吊り上げていかにも怪訝そうな顔を作る。
    「君の車だろ、言い方に気をつけろ。夕飯は作り置きでなんとかなるだろう。どうせあいつ、米は食わないし」
     エレベーターホールに着き、降谷は上を、志保は下を押す。
     赤井は夜は米を食べない。酒が米代わりなのだと言う。そんなんでよく腹が空かないな、というのが降谷の言い分で、降谷はがっつり米を食べる。志保はほどほどにご飯茶碗一杯分より少ないくらいで、代わりに野菜をたんまりと食べる。その姿はさながらうさぎのようだと、降谷は思っていた。
    「じゃぁ、何も用意はいらないわね」
    「そうだな」
     エレベーターから到着音がして一台到着する。ランプは上行きを示していた。じゃぁまた後で、と降谷は箱の中へと消えていった。
     志保はそれを見送ると、スマートフォンを確認する。
     ディスプレイには真純からのメッセージを受信したことを映し出していた。作業中、志保のラップトップにも通知が来ていたので、認識はしていたのだが、確認する時間がなかった。
     そしてまたエレベーターが到着を示す。今度は下行きだ。志保は四角い箱に乗り込むと、B2を押し、到着までの間にメッセージを確認する。

     やっほー、元気か? 実は気になることがあってさ
     『sevilla』って知ってるか? 最近こっちで流行ってる新興宗教なんだけど、なんか胡散臭くてな
     同世代のエンジニア連中で流行ってるらしくて入信者が増えてるんだ
     何か知ってたら教えてくれ
     じゃぁなー

     まず、なんで自分にそんなことを聞いてくるのか甚だ疑問ではある。それが志保の持った第一の感想。そんなことなら兄である秀に聞くのが一番だろう、と思い、その通りに返信する。

     知らないけど、秀に聞いたら?

     手早く打ち込み、送信。
     しかしここで志保は考える。条件反射的に『知らない』と送ってしまったが、それは本当だろうか?
     志保はここで思い返す。数時間前に追っていた字面は、根本。ファイルの中身にばかり気を取られてばかりいたがそれが入っていたフォルダ名は確かに、sevillaだ。
     タイミングが良すぎると志保はエレベーターの回数表示を見つめる。
     この流れは、良くない。真純がどうこうというわけではなく、この自然な流れに、志保は何か得体の知れないものに踊らされている違和感を覚えた。髪など信じているわけではないが、見えない何かの意図を感じた。それにはきっと意味などはないが、このまま何か良くない渦に巻き込まれそうな、そんな気配。第六感が働く。
     再度手に握ったスマートフォンが震える。またメッセージを受信したのかと思ったが、振動が長い。これは着信だ。ディスプレイを覗けば、ほら。
    「もしもし?」
     少し怪訝に電話に出る志保に、電話の相手はそんなことお構いなしの明るい声。
    『そんなに怒んないでくれよー。この話、秀兄には内緒な。勉強のためにイギリスに戻ってるんだろって怒られちまうからさ』
     なるほど、そういうことか、と合点がいく志保。そんなことに自分を巻き込むな、と言いたいところだが、この件、志保自信も興味が沸かないかと言われれば嘘になる。自分が関わったであろうあの薬に関連したかもしれない事件に幸か不幸か関われることになった立場と、目の前に出された糸口。不本意ながらに目の前に轢かれたレールに乗ってみても良いのでは、という思いが過ぎるのは邪な考えか。
    「で? 私にどうしろっていうの?」
    『秀兄に見つからないようにそれとなく探ってくれないか? そっちに行ってるんだろ? 彼氏もいるんだし探れないか?』
     想像通りの真純の言葉に言葉が詰まる志保。きっと真純に言われなくても、自ら捜査をするだろう、探るだろう。まだこちらの件と真純の件が交わったわけではないので関連づけることは早合点だが、可能性がないわけではない。たまたま同じ『sevilla』というワード。材料は多い方がいい。そしてその材料は多角的に揃えたい。
    「……わかったわ。他に何か分かったら連絡して。私の方も出来る限り探るから」
    『流石志保姉! 助かるよ! 何か分かったら絶対連絡するな! じゃぁな〜』
     ぷつり、と通話は切れた。
     大きくため息をついたところで、志保の乗り込んだ四角い箱は目的階へと到着する。
     目の前に現れる謎を解きたがる探偵の気持ちが、ほんの少しだが分かってしまった志保だった。
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