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    _halusaki

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    降志前提のダクバがわちゃわちゃしながら事件解決するお話です。
    書き上げたら本にします。
    まだ書き途中なので色々変わる予定。
    この間の続き。
    オリキャラが出張ります。

    #降志
    would-be
    #ダークバッチ組
    darkBatchGroup

    Redline 第二章 志保の元に従兄弟である赤井から連絡が来たのは一週間ほど前のことだった。
     日本に用事があるからその時に寄る、というものだった。あとは来日の日付と日本への到着時間、到着したその足で向かう、と。どんな用事で来るのか、何日いるのか、なんで来るのか、志保から尋問のメールを返信したが返事が返ってくることはなかった。
     そして赤井が来るといい日。確かに到着時間に志保の家までの移動時間を加算した時刻に赤井は志保の家を訪れた。それまでは良かったのだ。それまでは。
    「はぁ? 宿を取らなかったぁ? 他当たってくれる? 秀吉さんのところとかホテルとか行く宛はいくらでもあるでしょぉ?」
     バックパック一つ担いで玄関先に立つ赤井は、志保の家に滞在する気満々でやってきたのだ。
     そして第一声は、『しばらくここに住む、宿はとってない』だった。
    「秀吉のところは新婚だからな。真純がいないんだから一部屋余ってるだろう」
     志保の住まいは2LDK。学生時代、真純と共に過ごしたこの家に今でも住んでいる。ちなみに真純は大学院に進んだが、今はイギリスへ留学をしているため一部屋は空いている計算になる。赤井はそれを狙ってきたのだ、と。
    「そりゃぁそうだけど、うちだって一人じゃないんだし、大人なんだから宿くらい自分で取りなさい!」
     ガンとして家に入れたくない志保と、頑なに玄関先から帰る気配のない赤井だったが、志保の一人じゃないという言葉が引っかかり、反芻する。
    「一人じゃない?」
    「ほら、この通り」
     志保が視線を下へ向けるので、玄関に並ぶ靴を見てみれば、確かに紳士物の革靴が一足、そこには鎮座していた。
    「君、恋人が居たのか?」
     志保に恋人がいるだなんて、本人からも真純からも聞いてはいなかった。いや、ある筋からは聞いていたが半信半疑だったのだ。それを確かめようとも思っていたが、答えがこんなところに転がっていた。
    「降谷さんよ、降谷さん。この通り、もう一人いるんだから、これで秀まで増えたら居候二人って、どこの下宿所よ」
    「一人も二人も変わらんだろう」
     言うが早く靴を脱ぎ、志保の横を通り過ぎる赤井。
    「変わるってのぉ!って、勝手に家にあがらないで!」
     引き止める志保をよそに玄関からリビングへと続く廊下をずんずんを歩いていく。そしてリビングの扉を開けて中へと入れば、二人掛けのソファでくつろぐ降谷零。
    「これは驚いた。久しぶりだな、降谷くん」
     本当に居た、と少し目を見開く赤井に、あからさまに不機嫌顔の降谷。
    「なんでお前がいるんだよ」
     降谷は、廊下から漏れる志保と赤井のやりとりに、いつ口を割って入ったものかと考えていたところだった。
    「私からしたらなんで二人とも居るのよ、よ!」
     リビングに集まった三人。
     赤井は降谷の横のオットマンに腰掛けてくつろぎモードだ。降谷はソファへふんぞり返って赤井を睨みつけている。そして、仁王立ちをしてご立腹の志保。
    「いいだろう、これだけ広いんだから。番犬くらいにはなるぞ」
     赤井は気楽にそう志保に告げるが、志保からはあっかんべーを返される。
    「私は猫派ですー」
     志保のその言葉にすかさず、降谷がニャァと猫の真似をするが、志保と赤井から冷ややかな視線が浴びせられる。
    「三十代のおっさんが気持ち悪いことしないでくれる?」
    「手厳しいが、確かに無理があるぞ、降谷くん」
     軽蔑の眼差しというものが降谷に注がれる。赤井と志保は同じ顔を、同じ感情で降谷に浴びせているのだ。血の繋がりも相まって、それそれは似たような顔だった。
     しかし、こんな時の降谷の怒りの矛先は決まっている。
    「お前もやれよ」
     志保の言葉にしおらしくなったと思いきや、次の赤井の言葉で悪態をつくのだ。なんとも忙しい。
    「はぁー……」
     深く深くため息をつく志保に、降谷が、志保、と話しかける。
    「猫にはなれないが料理も洗濯も掃除もするぞ。猫より万能だ」
     ドヤ顔な降谷に、そうじゃない、と志保は否定をする。
    「猫は存在が癒しなのよ。まぁ、……洗濯はいいけど他はやって欲しいわ」
    「よし、交渉成立だな」
    「じゃぁ俺は食費を出そうか」
     家事が出来ない赤井は金で解決しようとする。
    「当たり前でしょ」
     と、志保にはさも当然と言われてしまう。そのやり取りを見ていて無言で笑うのは降谷だ。
    「……まぁ、私の機嫌を損ねないっていうなら置いてあげてもいいけど。この捜査の間だけよ」
    「捜査って、知っていたのか?」
     赤井は降谷から知らされていたのかと降谷を伺うが、とうの降谷は俺じゃないと顔を横に振る。
    「そんなの言われなくてもわかるわよ」
     今回の志保への情報源は新一だった。赤井さんが来るから降谷さんと一波乱あるかもな、という助言付きで。
     志保は今の状況を鑑みて、一波乱で済むならどんなによかったかと、元高校生探偵の推理もまだまだだなと、勝ち誇った気分になりそうになったが、そうではない、と今のこの状況に少々腹を立てていた。
     こうなってしまった以上、志保が腹を括るしかないのだ。
    「優しいなぁ志保さんは」
     渋々でも承諾してしまう志保を可愛らしいと思う降谷は、にこにこと志保を見つめている。
    「懐柔しやすくて逆に不安になるな」
     赤井の余計な一言に、降谷から無言の圧がかかる。
    「なら出てくれてもいいのよ?」
    「いや、なんでもない。志保は優しいよ」
     降谷と赤井の二人から『優しい』と言われ、満更でもない志保。
     しかし問題がある。空いている部屋は一つしかないのだ。
    「じゃぁ今日から寝室は別ね、降谷さん」
     まさかの志保からの提案に、降谷は赤井を睨みつける。
     そう、赤井が来なければ、他人が来なければ、降谷はいつも通り志保と同じベッドで寝起きを共にできたのだから。
    「お前のせいだぞ!」
     志保の発言と降谷の態度に、驚くのは赤井だ。
    「君たち本当に付き合っていたのか? 信じがたい……」
     本当に、という言葉に、知っててきたのか、と降谷は呆れた。
    「普通、同棲してるの家に居候しにくるか? アホ」
    「いや……まさか新一の言っていたことが本当とはな……」
    「知ってる上で来るとかどんだけ図々しんだ、お前」
     赤井は、事前に志保と降谷のことは新一から聞いていた。正確には、気がついたらくっついていた、と言うのが新一からの情報だった。名探偵の前では色恋ごとは密室トリックより難しいのだ。
    「ちょっと待て、そうなると俺はどこで寝るんだ? 余ってる部屋は一部屋だろう? 君たちは同部屋でいいんじゃないか?」
    「赤井、お前たまにはいいこと言うな」
    「自分がベッドで寝たいだけでしょう。じゃぁ降谷さんは布団ね。もうどうでもいいわよ。私疲れちゃったしお腹空いちゃったわ」
     そう言って、志保は降谷の隣にどかっと腰掛けてソファに置いてあったクッションを抱き込む。
     寝床問題も解決され、残された問題はこの空腹をどう満たすか、だった。それは赤井の腹の虫が同意を告げる。
    「秀もお腹空くのね」「赤井も腹が減るんだな」
     同じようなことを同時に口にした志保と降谷はケタケタと笑い出す。
     癪に触った赤井は怒っているのだろうが、表情には出ていない。
    「……君たち、俺のことをなんだと思ってるんだ?」
    「いや、だって、お腹とか空きそうにないし」
     そう、言いながらも志保はまだ笑い続けている。隣では降谷も腹を抱えて笑っている。
     これは楽しそうな暮らしになりそうだ。


     民間科捜研とは、科捜研や科警研のOBが立ち上げることは珍しくない。必然的に、警察関係の依頼も受けることになるが、志保の勤めるラボもその一つになる。
     赤井が志保の家に居候をしにきた翌日。
     志保は通常通り自身の勤めるラボへと出勤すると、朝イチで所長に呼び出しを受けた。
     自分の荷物をデスクへと置くとその足で所長室へ向かう。
     いつもニコニコと笑顔の絶えない所長だが、今日は一段とその笑顔に照りを乗せている。
     そんなニコニコ笑顔の所長から、こう告げられる。
    「うん。公安さんから捜査協力要請が来ているから行ってきて(にっこり)」
     と。
     志保がこのラボに就職してはや二年が経とうとしているが、ここまでの無茶振りは初めてだった。確かに今まで、警察関係の解析を、通常業務に無理やりねじ込まれたことは何度もある。その度に終電を逃したし、徹夜だってしてきた。
     それが今回は、身売りだ。
     これが降谷や赤井から言われたものなら、『はぁ?』とあからさまに嫌そうな顔もできただろうに、相手はこのラボの所長だ。そんな悪態をつけるわけがない。
     引き攣りそうな笑顔で、承知いたしました、と言葉と顔だけで了承せず得なかった。
    「あの、期間はいつからいつまでになりますか?」
     恐る恐る伺う志保。嫌な予感がした。
    「うん、今日から、向こうさんがいいって言うまでね。今から、向こうの庁舎に行って。お迎えが来るみたいだから」
     嫌な予感は的中し、想像通りの返答にまた、承知いたしました、の言葉しか出なかったのは言うまでもない。
     とにかく今すぐ行ってこいということ、そして逃しはしないと言うお迎え。
     志保は、落としたかった肩を正したまま、所長室を出た。
     パタン、と扉を閉めたところで、思い切り肩を落として深いため息をついた。
     ここが職場でなければ、大きな声で叫んでいただろう。『こんちくしょー!』と。
     しかしここは職場だし、職場での志保はクールビューティー。そのイメージを壊すことはしたくない。ここは毅然に、なんでもないのよ、と強い女を演じるのだ。

     志保は自席に戻り、今し方置いたばかりのトートバッグを手にしラボを出る。
     不思議そうにする同僚へ状況を説明すると、優秀なのも大変なのね、と反応に困る返答を得た。都合がいいだけですよ、と眉尻を落としてさぞ困っている姿で返事をすれば、大変ねと同情を買う。
     それでいい。優秀だのなんだのは関係ない。本当に、都合よく使われているだけなのだから。
     ラボが入居している商業ビルを出ると、迎えはすでにやってきていた。
     その車に見覚えはなかったが、その車の後部座席のドアの前に立っている青年には見覚えがあった。先日VRゴーグル解析の件でやり取りをした成川だった。
    「宮野さん、お疲れ」
    「成川くんがお迎えなのね。あなたも大変ね」
     どうぞ、と後部座席のドアを開けて促されるままに車へと乗り込む。
     と、そこには見慣れた先客がいた。グレーのスーツに身を包んだ、ミルクティブラウンの髪。垂れ下がった目尻とは正反対に吊り上がらせた眉。今朝も見てきたその顔だった。
    「降谷さん、あなたも来てたの? 暇なのね」
    「逃げないように見張りに来たのさ」
     足も腕も組んで偉そうったりゃありゃしない。そんなことを思っていると、成川が運転席に乗り込み、車を発進させる。
     そして志保は、職場で我慢してきた分の悪態をつき始める。
    「大体なんで民間人に捜査協力させるわけ? 日本の警察は大丈夫なのかしら。心配になっちゃうわ。しかも当日の朝に言ってくるとか常識ないわけ? こっちだって他の仕事だってあったのに引き継ぐ時間もないとかどんだけ同僚に迷惑かけさせるのよ、信じられない」
     ふん、と窓の外へと視線を向けて顔を背ける志保に対して、降谷はここまで想定通りだと言わんばかりに平静を保つ。嫌味も悪態も、どんな志保でも降谷は知っている。こんなことをしたら、志保がこう言ってくるのもわかっていた。だって、恋人なんだから。
    「VRゴーグルの解析結果読んだよ。よく調べてあるし、まさか入手先まで突き止めるとはな」
     志保の嫌味も右から左、のれんになんとかと言わんばかりに仕事の話に切り替える降谷に、人の話を聞いているのかと突っかかる志保だが、そんなことどこ吹く風だ。
    「聞いてるさ。どう? 言ってスッキリした?」
     言いたいだけ、ということに降谷は気がついているし、そんな降谷に何を言っても無駄かと、志保はどこへともやれない怒りを飲み込んで降谷の話に合わせる。
    「あれはただ単に販売先を列挙しただけよ。まだ特定はしていないんだからぬか喜びしないでちょうだい」
    「それでもこの短期間でよくここまで突き止めたと思うよ。なぁ、成川」
     降谷は運転席の成川へと話を振るが、とうの成川はまさか自分に話が振られるとはつゆほども思わず、え、と言い淀む。
    「……そうですね。でも、宮野さんならそのくらい出来て当然なんじゃないでしょうか?」
    「買い被りすぎね。煽ても何も出ないわよ」
     ますます機嫌の悪くなる志保に、どうすれば機嫌を取れるのかと悩む成川。成川の記憶に残っている宮野志保は、にこにこはしていなかったが、こんなにつっけんどんな、冷たい印象はなかったからだ。いや、冷たいと言うよりは、熱い、熱を帯びた怒りを表に表すとは想像したことがなかった。
     矛盾をしているかもしれないが、いつもクールではあったが、冷たくはなかった。どちらかといえば、寒い冬の日に差し込む穏やかなとても緩やかな日差しのような、そんな印象だったからだ。
    「万年二位の成川からの言葉じゃ響かない、か」
     成川のその不名誉な呼び名が上司の口から出るのは初めてのことではないし、自分自身を卑下するときに自分の口からも出す言葉ではあるが、改めて言われると誰でも凹むだろう、と成川はそれはもう肩を落として凹んだ。
    「それは堪えます」
     志保は、このやりとりを聞いて、頭の片隅引っかかりを感じた。脳内で、『万年二位の成川』という言葉を反芻するし、そして気がつく。いつも自分を追ってきていた存在に。彼もそれなりに優秀だったのに、科学の道に進まなかったので、志保ほどではないが校内では少し有名になったのだ。三年で専攻を変え、確か情報系の学部に移っていった。
     そう、その彼が成川だったのだ。
     その存在に気がついた志保は、乗り出して運転席側へ顔を近づける。
    「成川くんってもしかして、三年で専攻を変えて……あの成川くん?」
     『万年二位』という部分は伏せ、口にしても問題がない情報だけを告げると、成川の表情が明らかに明るくなる。
    「思い出してくれた? いやぁ、良かった。覚えてないって言われた時は、下っ端の自分のことなんてやっぱり眼中にないのかって落ち込んだけどさ、いやぁ、思い出してくれて本当に良かっ……良かったです」
     ついタメ口を聞いてしまったことに気がつき最後は敬語に直してみたが、上司の前でバツが悪い。取ってつけたような言い直しでは意味がないことくらい分かってはいたが、そうせずにいられなかった。だって、志保はもう学友ではないのだから。
    「あの時は御免なさい。本当に思い出せなかったのよ」
     申し訳ない、とおずおずと後部座席へと戻る志保。
     そんな時、降谷はぴくりと眉を上げる。
    「再会のお楽しみ中のところ申し訳ないが、成川。今の道、右だったぞ」
     降谷の言葉に、成川は自分が走っている風景を確認すると、確かに曲がる場所を間違えたことに気がつく。
    「え、あ、すみません! 初めての道ではなかったのでナビをセットしてなくて……」
    「まぁ、次を曲がればいい」
    「はい」
     軌道修正、と車線変更をし、右折レーンへと入る。
     そんな成川を見て、こう言うところが万年二位なんだよな、と志保と降谷はどちらともなく思ったのだろう。
     どこか抜けている。
     そこが憎めないところではあるが、もういい大人なのだし、第一彼は警察官だ。いささか心配でならなかったのは言うまでもない。
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