願い 風間にはもっと良い人が居るよ。大事なおせつさんがいるでしょう。もう浮気はいいかげんお止し。僕なんかに構っちゃいけないよ。お前にはもっと、ずっと――
ハア、と溜め息が漏れる。
そうやって言えたら、簡単なのになあ。
言えない自分がもどかしい。そう思っているのは事実だし、実際に何回も言ったことがある。だけど最近は、強く出れずに無理に言葉を飲み込んでいる。
これって、嫉妬、なのかな。
おせつさんや女中さん達も、僕はみんな大好きだ。風間が見初めた人だもの、穏やかで、いつも優しくしてくれる。そんな優しい方々に、僕は嫉妬なんてしてるんだろうか。
僕は、邪だなあ…。
何度目かも分からない溜め息をつく。こんな気持ちに気づいたのは、風間が常日頃から、熱烈に告白してくるから。
人の気も知らないで。僕だって色々考えてるのに。君の想いを受けとめたい、だけど、できないって。ぐるぐる考えて、切ないのに。
これじゃあ僕だけ想ってるみたいだ…。風間は、意外とそうでもないのかな。ただの冗談なんじゃ…。そう思うと酷く悲しくなってくる。
君が好きだよ。
それだけ言えれば、ラクなのにな。