どっちもダメだ 幾星霜の……。
ううん。
海に輝く……。
ダメだ。
思わず「うーん」と唸って、机に突っ伏した。ため息を吐いたら歌詞ノートに反射して、熱がこもってむっと暑くなった。
傍らできゅうんと搾り出すような音がして、少し顔をずらして確認した。ぽんちゃんがちょこんとおすわりして、僕を見上げていた。きゅんきゅんと舌を出して鳴き続けるぽんちゃんは、もしかしたら僕を心配してくれているのかもしれない。
「ありがとう、ぽんちゃん」僕はぽんちゃんのふわふわの毛並みに指を埋めるようにして、その頭を撫でた。「僕は元気だよ。ちょっと、歌詞作りが煮詰まっててさ」
ぐるぐると頭に薄暗い靄が渦巻く。それを追い出すようにため息を吐くと、気持ちよさそうに撫でられていたぽんちゃんはハッとして、僕の手を必死にペロペロと舐める。動物は人の心の動きに敏感だって説は都市伝説だろうと思っていたけれど、ぽんちゃんを見ているとあながち間違いでもないのかもと思えてくるな。
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