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    mygblueline

    @mygblueline

    フェザラン短文や再録、表に載せられないものなど。

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    mygblueline

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    フェザラン。街でデートしてる。

    #フェザラン
    phetheran

    願い。「ランドル!これ行ってみないか?」
    けたたましく扉を開け、部屋に入ってきたフェザーは紙切れを2枚差し出しこう言った。
    「はくぶつかん…?どんな嵐の予兆だよ」
    施設の入場券らしきものを見せられたランドルは、到底持ってくる人間との関連性を見出せず、混乱と共にフェザーを斜め見る。
    「今朝、魔物に襲われた人を助けたら、そのお礼にもらった」
    「状況もなんも分からんだろうが」
    フェザーの説明不足は今に始まったことではないので、少しずつ状況を紐解いていく。
    朝の鍛錬中、森の中の遺跡に通りかかった。魔物に襲われている人を見つけ追い払った。助けた人が街の古い博物館の職員だったということだ。
    「助けたあとその遺跡の話をしてくれてな、色んなことを説明してくれたんだが、それが大昔から残っているすごい物としか分からなかった!」
    「なんでこんな馬鹿にチケットなんぞ…」
    「面白いものがあるから是非って言われたんだ!こういのが好きそうな団員や、団長に渡しても良かったんだが、面白いものが何のか気になってな」
    「なんで俺なんだよ」
    「2枚もらったからな」
    フェザーの理由としては充分すぎる気がしたランドルは、今日の予定が何もなかったことに舌打ちをした。
    「仕方ねぇな行ってやるよ」
    「やった!ランドル!今から街へ行こうぜ!!」
    「分かった分かった、準備するから待ってろ」
    街へ出掛けるのに準備なんて必要なさそうな顔で、ランドルの支度を待つフェザーは、早々とした口調で言った。
    「久しぶりにこういうのも良いなあ!」
    「最近戦いばっかだったしな…ジュワユース今日は大人しくしてろよ」
    フェザーの腕にも今は雄々しい武具はなく、体内に仕舞い込まれているらしい。
    ランドルは翡翠色に光る装甲を外しジュワユースの効力を一時的に無効化させた。
    色んな枷から解放されたようで少し胸を撫で下ろす。

    「あれ、フェザー、ランドルどこ行くの?」
    「おっ団長!ちょっと街へ行ってくるぜ」
    艇を降りるために廊下を歩いていると、団長とビィ、ルリアに出くわした。
    「じゃあ今日は鍛錬じゃなくてデートだね〜いってらっしゃい」
    団長がそう言うとルリアが照れた顔付きで嬉しそうにこちらを見てくる。
    「おい団長、それは聞き捨てならねぇぞ」
    「行ってくるぜ!!」
    「流してんじゃねえよ!テメェも!」
    フェザーはこれと言った反応もなくいつも通りである。
    問題起こさないように祈ってるよ、という団長の独り言には気付かず2人は艇を降りていった。


    騎空艇が停泊していた街は活気に溢れ、メインストリートには色んな店が並んでいる。フェザーとランドルは博物館に向かう途中に立ち寄り、店先の商品や派手な看板を見ながら歩いていた。
    「ランドル!ポム焼きがあるぞ!!食っていこうぜ!」
    「また焼きモンばっかは勘弁だぜ…」
    フェザーは真っ先にポム焼きの屋台に並ぶと一舟持ってこちらに戻ってきた。早く食べたいとばかりに歩きながらポム焼きをはふはふ頬張っている。
    「うまい!アツアツだ!ソースたっぷりのこと美味いぞ!!」
    ランドルは何を食べようかと屋台を見まわしていたが、帰ってきたフェザーに腕を引っ張られベンチの隣へと座らされた。
    「ほら、食え!!」
    自分で食う!という前にフェザーから串に刺された丸い玉を丸ごと差し出されたため、ランドルは思わず口を開けた。
    無遠慮に突っ込まれることを警戒したが、予想に反してゆっくり唇に当てられ、そのまま咀嚼しろと促される。
    口内に放り込まれたポム焼きの柔らかい生地を歯で破ると、中からトロリと素材が吹き出し、舌に溶けていく。オクトポムそのものの独特の食感が咀嚼を進めた。
    「美味いだろ!!」
    「美味えな」
    フェザーに反発して違うものを食べようと思って迷っていたランドルだったが、自分もと同じポム焼きを購入しフェザーの座るベンチへ戻った。
    「ランドルもそれにしたのか!」
    嬉しそうにポム焼きを眺めてくるフェザーにランドルは説明する。
    「こいつはソース味じゃなくソイソースってやつだ」
    「ソイソース?」
    舟盛りをじっと見つめてくるが色味は変わらないのでフェザーは首を傾げている。ケモノのように顔を近づけ、匂いを嗅いでいた。
    「確かに違う匂いだ」
    「このしょっぱいのが病みつきになるんだよ」
    先程されたように、ランドルは一玉串に刺し、フェザーの口へと差し出した。
    気付いたフェザーは嬉しそうに、あー、と言いながら大きく口を開ける。
    昔のガキみたいな顔に思わず笑いそうになるが、ランドルはそのままフェザーの口にポム焼きを放り込んだ。
    「うぅむ!さっきと味が変わった!!美味い!!」
    「だろ、俺は塩味が効いててこっちの方が好きだ。やはり魚介には塩だぜ」
    美味しそうに頬を膨らませ豪快に咀嚼していくフェザーに、ランドルは得意気に語る。
    「ああ、こっちも食欲をそそるな〜捨てがたいぞ」
    2種のポム焼きを選定するようにそれぞれの舟を眺め、フェザーはいつもしないような表情で唸っている。その真剣な表情がポム焼きから導かれたことがおかしくて、ランドルはつい笑ってしまう。
    「はんぶんこでもいいぜ」
    ランドルの提案にフェザーは目を輝かす。
    「そうしよう!!」
    天気の良い昼下がり、馬鹿みたいに喋りながら飯を分け合える日常に少しホッとするランドルだった。

    「デートだね」
    出掛ける前の団長の言葉を思いだして、むず痒くなる。
    男2人でも側からみるとそう見えるのだろうか?
    自分だけがそんな浮ついた気持ちになってることに、客観的な視点のもう一人の自分が心を冷静にさせる。
    フェザーとランドルは一般的に恋人同士と呼ばれるような関係ではなかった。ずっとただの腐れ縁、幼馴染と思っていた。しかし、最近はそれ以上の関係になりつつある自覚があった。特に想いを伝え合ったとかではない、ただ長年、見てきたから分かるのだ。お互いを見る目が変わりつつあると。
    ランドルは変わったつもりはなかった。昔からフェザーを見てきて、それが友愛なのか親愛なのか、恋愛なのか、性愛なのか、その境界線がない。自分の中に全てあるのだ。
    身体が成長するにつれ帯びてきた性欲には正直戸惑った。こんなもの同性の幼馴染にぶつけるもんじゃないとひた隠しにしてきた。闘うこと以外に疎いフェザーは気付いてないはずだ。
    はずだった。
    自分がそうだから分かるのだが、フェザーから感じるのだ。性的な意味合いを含んだ視線を。
    自分がそうだからそう見えるのかもしれない、気のせいかもしれない。そう思って消そうとしても、フェザーに見つめられるたび、それを受ける自分は打ち震えた。彼に求められているのではという幻覚めいたものが、感情を加速させる。
    フェザーに自分を見られたい、ずっと抱いてきた感情がこんな風になるなんて。
    「ランドル?どうした?」
    「あ、」
    迂闊にも長考に入り我に帰る。そんな自分を見つめるフェザーはいつも通りだ。
    「ワリィ、いろいろ考え込んじまった」
    「武器のこととかどうしても気になるよな…」
    「そうだな」
    話題が逸れたことにホッとする。頭を切り替えなければ。
    「よし!腹もいっぱいになったし、博物館行こうぜ!!」
    立ち上がったフェザーの後に続き、綺麗に食べ終わったトレイをゴミ箱に捨てて、賑やかな街並みを後にする。
    ずっとこんな日常が続けばいい、と思わずにはいられなかった。


    街の外れにある年季の入った博物館は、場違いな自分たちをも溶け込ませた。
    館内は静かな灯りの中、街の歴史や島の成り立ち、住む人の営みなどを感じさせる展示物が並ぶ。
    ランドルは普段見ることのない品の数々に興味をそそられ、展示物の説明文と共に知識の一つとして蓄えていった。
    いつもやかましい片割れが静かだなと、横を向けば細かい文字こそは読んでなさそうなものの、目を引く大きな展示物に目を輝かせているフェザーがいた。

    「来てくださったんですか」
    「ああ!博物館のおじさん!」
    いつものように声を上げたフェザーが周りの空気に気付いたように口を押さえ少しトーンを落とす。
    ランドルも軽く頭を下げ、礼を言う。
    「お連れ様もお待ちしておりました。わたしこちらの博物館の館長をしております」
    首を傾げたランドルはフェザーを肘で小突く。
    「テメェ館長じゃねぇかよ、話ちゃんと聞いてたのか」
    「そうだったのか」
    小声で話していたが前の館長には聞こえているようだ。笑いながら館長が言う。
    「フェザーくんには、遺跡で発掘作業をしているとき魔物に襲われかけたのを助けられましてねえ、命の恩人ですよ」
    「無事で良かったな!おじさん!」
    失礼なこと言ってんじゃねえとツッコミたいが、館長は特に気にしていないようだった。
    「そのときの強さがあまりにもすごかったので、お礼も兼ねた上で、是非ともうちの展示物を見ていただきたいなと思いまして」
    そう言った館長は、2人についてくるように促す。
    フェザーとランドルは顔を見合わせ、特別室と書かれた扉の中へとついて入った。

    「これは…」
    「街を救った英雄の武具です」
    暗がりの中、左右から灯に照らされた、鈍色の手甲がそこにあった。
    「英雄というと剣と盾のような騎士のイメージが多いのですが、この街の英雄は格闘家なんですよ。身体一つで外敵から街を守ってくれたのです」
    「へぇ、これはすごいな!」
    「フェザーくんと街の英雄がわたしの中で被りましてねぇ、嬉しくなったのでついお誘いしてしまいました」
    頭を下げる館長に、ランドルは興奮するフェザーの代わりに礼を言う。
    「フェザーの拳が役に立ったんなら良かったぜ、招待ありがとうな」
    「ランドルも格闘家なんだぜ!」
    「おお、貴方様もでしたか。フェザーくんのお連れ様でしたら、とってもお強いんでしょう!」
    「いや、まぁ俺は今回ついてきただけで…」
    フェザーは隣で大きく首を縦に振っていたが、何もしていない自分が持ち上げられるのはさすがにむず痒かった。
    謙遜しすぎるのも悪いし、こういうときどうすればいいか分からない。
    「良かったらおふたりでこちらへ入ってみてください」
    館長が促したのは、小さな資料部屋だ。覗いてみると薄暗く、灯りしか見えない。
    「この英雄の手甲には秘密があるんですよ」
    館長を置いて二人で部屋に入る。
    狭く暗かったので必然とフェザーと手が当たるほどの距離になった。
    「秘密ってなんだろうな?」
    「さあな」
    小声で囁き合い、手甲の資料を眺める。
    願いを力に強化された武具………と書かれた文言に二人は息を呑む。
    占星武器を頭に思い浮かべた二人は注意深く文字を追っていく。
    英雄と一人の女性の物話が描かれていた。
    英雄と恋仲にあった女性は恋人が戦場に発つとき、長い髪を一本手甲に閉じ込めたらしい。
    貴方が無事でありますように、と願いを込められた武具は英雄の絶対絶滅のときに力を発揮したのである。
    突然ダイヤモンドの装甲を纏った武具は英雄の命を守ったという。
    「あの古ぼけた手甲にダイヤモンドの装甲が付くのかよ、そりゃすげえ秘密だな」
    期待していたものとは違ったが緊張した体が少し緩んだ。
    「うーん占星武器とは少し違うな。でも不思議な武具だ」
    図解を見ても仕組みはさっぱり分からなかった。
    「どういうトリックかは知らねぇが、まぁそういうのを人は奇跡って呼ぶんだろう。だから伝説になってる」
    「人の願いは人を強くする、そうありたいな」
    「そうだな…」
    フェザーの神妙な声が響く。自分たちの身体の中にある力をどう扱うか、それを問われている気がした。
    ふと、フェザーの手が自分の手に当たったような気がした。薄暗い中細かい資料を見るのに近づき過ぎたかと思い、ランドルは一歩後ろに引こうとする。すると強い力で手を握られた。
    「…!」
    「………」
    ランドルはそのまま動かずに待ったが、フェザーは何も言わない。繋がれた手から高い体温が流れ込んでくる。これは物言わぬフェザーの願いなのだろうか、ただただ触れた手が熱かった。
    気付かれないように僅かに息を吐く。
    俺はここにいると、少し握り返す。
    願いが自分たちを強くしますように、そう想いを込めて。
    鼓動が高まったまま、お互い手放せない手。
    一瞬の時のはずが、永遠に次を刻まない秒針のようだった。
    ランドルは振り切るように、外へ出るべく一歩を踏み出す。
    その瞬間離れていったフェザーの手に、寂しさを覚えた。
    明るい部屋へと出ると、外で待っていた館長が手招きをする。展示物である英雄の手甲の元へ戻ると、それは急にまばゆい光を発し、ダイヤモンドの装甲を纏い始めた。
    「えっ!」
    「で、伝説じゃねぇのかよ!?」
    驚いた2人に館長は明るく言う。
    「これはわたしが伝説を元に作った仕掛けなんですよ!すごいでしょう!!この資料を見た方がいつもこの仕掛けを見て驚いてくれるので、この瞬間が最高に好きなんです!!」
    全く悪気のない顔をした館長は、嬉しそうに仕掛けのスイッチをオフにした。


    「面白いものってアレだったんだな…」
    「館長さん楽しそうで良かったじゃないか!面白かったし、土産ももらったし」
    にこやかな館長に送り出され、博物館を後にしたフェザーとランドルは、もらった土産を眺めながら帰路についていた。辺りは陽を落としすっかり暗くなっている。
    「しっかし悪趣味な土産だぜ、ダイヤモンド風武器御守りとはな…」
    拳を模った御守りをうんざりとした表情で見つめるランドルとは対象的にフェザーはこれはきっと御利益があるぜ!と喜んでいる。
    「ここにランドルの髪でも入れとくか」
    突然自分の名前を出したフェザーにランドルは驚き、思わず声を荒げた。
    「ハァ!?何気持ち悪いこと言ってんだテメェは」
    「だってこの御守りに入れるのは髪なんだろ」
    「だからなんでそうなるんだよ」
    変なノリで話を進めるフェザーに、テメェはそんな願掛けするようなタイプじゃないだろとランドルは非難する。俺の髪なんて何にもならない。
    「ランドルのだからだろ」
    「………」
    やめろ馬鹿、変な気起こすんじゃねぇ。
    そう言えたら良かったのに。
    フェザーの思った以上に真剣な顔にランドルは何も言えず、目を逸らすことすら出来なかった。

    ああ、その目が熱を帯びていることを俺は知っている。

    暗がりの中、繋がれた手を振り払うことが出来なかった。
    日常もまた変化していく。傷だらけの分厚い手から先程以上の流れてくる熱を感じて、ランドルはフェザーの手を強く握り返した。




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