杢月供養「…どうかしましたか?」
「あ?あー、月島か…なんでもねぇよ」
「なんでもない人の顔には見えませんが、聞かない方が良さそうですね」
「…お前は優しいのか優しくないのか」
「なんですか、面倒臭い」
「うん、優しくないな」
「失礼ですね…、それで、どうしたんですか?」
「んだよ、聞いてくれんのか?」
「長くなるならブラックで」
「お前な…まぁいいよ」
「ありがとうございます」
「その代わり茶化さず聞けよ?」
「俺は真面目ですよ?」
「へいへい」
「あー、まぁ、手短に言うと、失恋したんだよ」
「…菊田さんが?」
「他に誰がいんだよ」
「あ、いえ、貴方でも振られることがあるんですね…」
「振られてねぇよ、…振られる前に終わっただけだ」
「……」
「まぁ、気持ちを伝える気は微塵もなかったんだけどな」
「……どんな人なんですか?」
「ん?」
「…好きな人」
「…そう、だな…可愛い、かな」
「…」
「なんだか杉本みたいな人ですね」
「え!?」
「え?…ぁ、」
「……」
「……」
「あー…、…、忘れてくれ」
「……同じ男なら俺にしとけばいいのに」
「…は?」
「…冗談です、本気にしないでください」
「だよな!?びっくりした!」
「菊田さんが余りにも情けない顔してたので…」
「お前、だからってなぁ…気味悪い冗談はやめろよ」
「むん…、酷いですね、」
「お前がそっち系の冗談言うなんて思わねぇから本気にしただろ」
「…俺に冗談言わせるくらい酷い顔してましたよ」
「っ、…そうか、わりぃ…ありがとな」
「いえ、昼飯奢ってくれたらチャラにしますよ」
「お前それが狙いか、コーヒー奢ったろ」
「さっきの気味悪いってのは傷つきました」
「だぁから、それは悪かったって」
「じゃあ焼肉定食でお願いします」
「くそっ」
「お前なぁ、仕事が好きなのは良いけど無理はすんなよ」
「確かにお前は優秀だけど、限界ってのがあるだろ」
「もう少し周りを頼れ、1人で仕事してんじゃねぇだろ」
「少しくらい、甘えたって良いんじゃねぇか」
「……なんだよ」
「甘えて、みました…」
「は?」
「貴方が、甘えたって良い、て」
「…確かに言ったが…ふっ、お前案外可愛いとこあるな」
「月島さんって意外と可愛いとこあるよね」
「あぁ?」
「この間一緒に飯食ってる時に好きな人への甘え方がわかんないから教えて欲しい、って相談されちゃって」
「…それいつの話だ」
「え?えっと、先月くらい、だったかな…?」
「月島、好きだ」
「えっ…」
「いや、そういや言ってなかったと思って…」
「はぁ…、そうですか」
「そうですか、ってお前なぁ、ちゃんと聞いてたか?」
「はい、聞いていました」
「…とにかく、俺が好きなのは月島、お前だ」
「……はい」
「菊田さん、あの、好きです」
「…」
「言ってなかった、ので」