たまらないむごさであなたはまっすぐだ喪服みたいに制服を着る子だった。
うちの中学校の制服は、女子は紺のセーラー服、男子は真っ黒な学ラン。その辺の男子が着たところで、着せられてる感じ……子どもを無理矢理大人にしたみたいな、ヘンな感じがする。でも、その子だけが違った。紫色の髪に、真っ黒な学ランがひどいコントラストで、びっくりするくらい整った顔はこんな田舎の雰囲気に全然馴染まない。はっきり言って、浮いていた。
あたしがその子のことを知ったのは、入学式の次の日だった。
公立の小学校からすぐ隣の中学校に進学したとき、クラスメイトが一気に増えた。近隣の小学校の人はみんなこの公立中学校に集まる形になるからだ。その近隣というのには山向こうの小さな小学校も含まれていて、その小学校からやってきた人数は十数人ほどだった。その中にいたのが、鳥束零太くん、という男の子だ。
入学式の日、一年二組に集められた生徒たちが順にあいさつをしていくなか、真ん中あたりで彼の順番が回ってきた。「とりつかれいたです。寺生まれです。よろしくお願いします。」と簡単に自己紹介をして頭を下げた彼を、誰もが物珍しそうに見つめた。名前は「鳥束零太」と書くらしい。珍しい苗字に、きりりとした音の名前は、際立つように教室に響いた。田舎じゃラ行のついた名前はまだ物珍しくて新しくて、それに見合うほど、鳥束くんの容姿は整っていた。後から聞いた話だったのだが、ここ一帯では「鳥束」という名前は有名らしい。山向こうの小学校の、もうひとつ向こうの山にある古いお寺が、鳥束くんの家だった。
鳥束くんは幽霊が視える、というのは、山向こうの小学校の子たちからしてみれば普通のことらしかった。