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    abicocco

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    abicocco

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    AC×グノのレムラキ。

    レムの為にマナンと接触して返り討ちにあうラキの話。
    ※軽い拷問描写、その後障害描写等を含みます

    #レムラキ
    lemniscate

    呼び水 完治したはずだったレムナンの睡眠障害が再発した。彼を深い眠りから遠ざけているのは経過年数が二桁を越してもなお彼の心に色濃く影を落とし続ける例の女の存在……ではない。そうではないからこそどうしたものかと頭を悩ませながら、僕は寝たふりを決め込んでいる。世間一般的に夜と定義されている時間帯にレムナンがまともに睡眠をとっていないことを知ったのはこれで二度目のことだった。

     僕達がD.Q.O.で初めて顔を合わせた時にも彼の目元にはしっかりと濃い隈がこびりついていた。そんな幸薄そうな面持ちで遠慮がちに協力を申し込んできた彼を僕達の味方——AC主義者であると見抜いた僕は、概ね自分の立てた計画の通りに議論を有利に進め、船の権限を乗っ取ることに成功した。とてもじゃないが役に立ったとは言いがたい他のグノーシア連中とは当然その後の行動を共にすることもなく、彼らは各々希望の地で船から降りていき、最後には僕と彼のふたりだけがこの船に残された。無論レムナンを除くすべての人間は一人残らずグノースの元へ送られた後のことだ。
     
     僕は彼に尋ねた。

    「議論中の様子から見ても今更君がAC主義者であるということを疑うわけじゃないけど、どうしてそうなったのか参考までに理由くらいは聞かせてくれる?」
     
     とつとつと語る彼の拙い言葉を整理するとつまるところ彼は自分を捕えていた一人の女性の元から逃げ出してきて、未だ彼女に見つかる可能性に怯えている。そして、刻み込まれた恐怖の果てに辿り着いたのが彼女か自分のどちらかをグノーシアに消してもらう——という、AC主義者の道だったのだという。

    「もちろん、自殺を考えたことも一度や二度ではありません。……でも、もし万が一、死後の世界……なんてものがあって、その先であの人に再会する……なんてことになったら僕は……っ」
    「なるほどね。それで君はグノーシアに取り入って存在自体を抹消してもらおうと考えたわけだ」
    「はい……」

     実際のところ、グノーシアの力は彼の理想とは少し違っていたが、あえて説明はしないでおいた。どうせ力のメカニズムを事細かに説明したところで口頭伝達では正しく伝わる気がしないし、膨大なデータを概念伝達で送ったところで彼の脳では情報を処理しきれず気絶しかねない。それにあくまで彼が重要視しているのはこの先恐怖の対象と出くわす可能性を潰すことであり、彼女の存在がなくなろうが、グノースの元で有象無象の一部に成り果てようが、その差は些末なことだろう。

    「君の目的は分かった。今すぐここで君を消すことで希望を叶えてやるという手もあるけど、それだと僕の方に何も得がないだろう? 君はエンジニアを騙れる程度にその手の知識は豊富なようだし、この先長距離移動するために船の整備を行える人材は貴重だ。当分の間は僕の旅に付き合ってもらうよ。旅の間に例の人物を見つけ出すことができれば僕が排除しよう。もし相手の排除が不可能だと分かった場合には君を消す。それでいいかい」
    「あ、はい……」
    「なんだか煮え切らない返事だね。不満があるならはっきり言いなよ」
    「いえ、少し意外で……。てっきり今すぐ僕を消すのかと思っていましたから。……ラキオさんはやさしいですね」
    「何をどう勘違いしたのか分からないけど、気持ち悪いよ君。言っただろうタダ働きはごめんだって。僕の力を借りたいならせめて少しでも役に立とうと努力することだね」

     事もあろうに人類の敵を相手に「やさしい」だなんてふざけた評価をくだした理解不能な人間の、はにかむ顔がやけに印象深かった。


     それから、二、三の星系を荒らしてまわって、航海中の船を襲ってはグノーシアとしての使命を果たしていた。レムナンもレムナンで、メカニックとして、またはエンジニアとして、僕によく尽くしてくれた。旅は拍子抜けするほどに順調で、二人きりになった静かな船内は複数の乗員が行き来していたあの時の騒がしいD.Q.O.よりもずっと好ましかった。
     人付き合いが苦手で一人が好きだと思い込んでいたレムナンが、雑談や食事やゲームに僕を頻繁に誘ってくるのは意外だった。深宇宙でひとりで過ごしていた期間が長い分交流に飢えているのかもしれない。人を消すというこの上なく有害な性質を持っている生き物相手に何の警戒もなく近づいてこられるのは、僕が絶対に『消す』という最終目的以外で彼を加害することがないと信頼しているからなのだろう。いくらAC主義者といえども、彼の無警戒ぶりには呆れざるをえなかった。グノーシアの中には彼の元飼い主であった女と同じような嗜虐趣味を持つ連中も少なくないだろうに。


     平穏な日々を平穏と認識するのは、いつだってそれが崩れ去った後だ。水面に映し出される自分の真っ青な顔色を眺めながら僕はそれを痛感していた。


     『ルゥアンでのグノーシア騒動下でひとりの青年を保護したがカナン579の生まれだということ以外の記憶を失っているようだ。心当たりのある親族や関係者がいれば連絡が欲しい』
     僕はマナンの生存状況及び現在の居場所を突き止めるため、広大なネットの海にポツポツと情報を撒いていた。カナン579は既に滅びた星で今や開発も止まっているはずだが、星の権利は元の所有国から宇宙連邦軍に委譲されたと聞いている。もし彼女またはその関係者がこの情報を目にしたならば、コンタクトをはかってくるはずだ。

     僕の読みは当たった。限られたものだけが閲覧可能な場所に公開した、親切な一般人を装った僕のメッセージは無事ターゲットへと届いたようで、投稿からほどなくして連絡が入った。連絡元は『レムナンの義理の母』とのことだ。嘘で塗り固められた挨拶と自己紹介文を鼻で笑いながら、一通り目を通す。二回ほどやりとりをしたのち、カナン579と同じく軍所有で現在無人の惑星にて落ち合うこととなった。勿論レムナンには船で留守番を命じた。連れて行ったところで何の意味もない。消す瞬間を見せてやった方が本人は安心できるのかもしれないが、それ以上に再会した瞬間恐慌状態に陥ってそれを僕自ら宥めなければならないと思うと億劫でとてもじゃないが連れていく気にはなれなかった。古い知人との会合でルゥアン星系で紛失した研究資料を返してもらいに行くと告げると、少し怪訝な顔をしながらもレムナンは大人しく目的地へと航路を設定した。


     ——相手を見くびっていた。グノーシアの僕に対してさえも『やさしい』なんて甘い評価を下す、朴訥とした人間に悪魔とまで言わしめたソレがどれほどのものであるか、リスクヘッジが足りていなかった。
     
     待ち合わせ場所には特徴的な赤毛を高い位置で一つにまとめた大体僕と同じくらいの背丈の女性が一人で立っていた。お目当てのレムナンがいないことに一瞬不満げな表情を浮かべたが、すぐ気を取り直すように甘い声色で保護してくれたことに対する礼を述べ、彼の居場所を尋ねてきた。

    「彼を引き渡す前にこちらからも質問がある。君の本名は『マナン』で間違いないのかな」
    「あーらら、レムにゃんったら喋っちゃったんだ? お喋りさんだなぁ。それなら記憶喪失っていうのも嘘か。騙したの? ショック〜」

     彼女の反応は肯定を意味していた。外見だけで判断すれば推定年齢二十台中盤から三十手前……といったところだろうか。レムナンの証言と年齢が嚙み合わないのはきっと、彼と同じく長期間のコールドスリープを行ったか……あるいは他の技術で肉体を若く見せかけているのだろう。

    「悪いけど、君がマナンだと分かった以上彼を渡すことはできない。こっちにも事情ってものがあるンだよね」
    「えぇー? そぉんなこと言っちゃうんだ……。テキストでのやりとりとは随分印象が違うね。もっと利口で大人な取引相手だと思ったのに、こんなガキんちょに横取りされてたなんて」
    「なンとでも言えばいいさ。弱い犬ほどよく吠える、今の君みたいにね!」

     僕が笑うと、今度こそ相手は怒りの感情をあらわにした。これ以上生産性のないやりとりに興じてやる義理もないだろう。僕はすぐ目の前に立っている相手に向かって手を伸ばした。その指先が相手の肌に届く直前——カチリと顔のすぐ下で金属同士が噛み合う音がした。振り返ると背後にはいつの間にか白衣を身にまとった人間が立っていた。続いて下を向く。緋色の皮の切れ端が目に入った。首に手をやると、そこには太い首輪が蛇のように巻き付いていた。引っ張ったところで僕の腕力ではビクともしない。

    「レムにゃんの恩人なんデショ? 折角なら帰る前に彼のこともっと深く教えてあげる」

     歩けと命じられるとその指示の通りに身体が動く。それで僕は、これが彼の話に出てきた『管理首輪』というものかと合点がいった。無駄に高い技術力にどこか感心した気持ちで抵抗する術もなく、言われるがままに彼女のあとについていった。


     当然といえば当然だが、研究所のような設備の整った場所で身体を調べられてしまえば、たちまち僕が人間でないという事実は相手の知ることとなった。理性を欠き本能が前に出たときほど人相が変わるグノーシアとしての性質を愉快に思ったらしく、彼女はかつて飼っていた少年とは別の責め方で僕を痛めつけることにしたようだった。
     
     水で満たされた透明な四角い水槽の前に立たされる。水槽の中には縁のギリギリまでたっぷりと水が張られていた。
     顔をつけろと命じられる。首輪の送る電気信号の通り、僕の顔は勢いよく水の中に浸かる。息を止めようとしたところで数十秒ともたない。次々と水が鼻から、口から入り込み、途端に苦しくなる。大きな泡が目の前で弾けるのを赤黒い視界の中で眺めていた。
     息が続かなくなり何口も水を飲み込んだ頃になってようやっと顔をあげろと指示が出る。体内に入り込んだ水を吐き出そうとせき込んでいるうちに再度顔をつけろと命じられる。延々この繰り返しだった。いわゆる水責めという今の時代に似つかわしくない手垢のついた大昔の拷問手段だ。いくらグノーシアとして人ならざる力を持っていたとしても、手を縛られた上に管理首輪で身体の自由を奪われてしまっては、非力な人間と何も変わらないのだと、息苦しく冷たい水の中で己の無力さを痛感した。
     顔をあげている間に何度かレムナンの居場所を尋ねられたが僕に答える気がないと悟ったのか、そのうちその問いかけもなくなった。情報を引き出すためでもなく、幼子が気に入った映像だけを何度も巻き戻して眺め楽しむかのように、僕は何度も何度も首輪を通じて水中に沈められた。
     夜になると流石に飽きたのか、欠伸を一つ溢した彼女は僕に首輪をはめた助手に見張りを頼んで、塩素臭い部屋から出ていった。明日は別の遊びをしようねと笑って手を振るその横顔を下から眺めながら、これは確かに悪魔と呼ぶにふさわしい存在だなという感想を抱いたあたりで僕は意識を手放した。


     
     気が付けば傍らにレムナンが座っていた。寝転んでいる身体を動かそうとして利き手が突っ張る。肘の内側から伸びたチューブがレムナンの隣に釣り下がる点滴袋から伸びていた。僕が目を覚ましたことに気付いた瞬間、嗚咽をあげて泣き出したレムナンからことのあらましを聞き出すのには難儀した。何しろ僕の身体も本調子ではなく、ほとんど声も出ないような有様だったから、意思疎通をはかること自体が厳しかった。早いところ全星系で概念伝達を主流とすべきだと改めて思う。

    「……それでラキオさんは今、肺水腫という病気にかかっているのでその治療のため、病院にいます。ここはAC主義者のドクターが個人的にやっているクリニックなので、貴方の正体についても心配ありません」

     呆れたことに疑い深く慎重なレムナンは僕を送り届け、見送りと称して船の出口までやってきた際僕の衣装に小型盗聴器を取りつけていたらしい。全く気付かなかった僕も僕だが、果たしてそれは味方に取り付けるようなものなのかと彼に文句のひとつでも言いたくなる。だが、結果的にそのおかげで僕は救助されるに至ったのだから、今回ばかりはその愚行に感謝すべきだろう。
     見張りをしていた男をどうしたのか、マナンとは顔を合わせたのか、この病院はどうやって知ったのか。聞きたいことは山積みだったが、それ以上に身体は疲労を訴えかけていた。僕は片手を握るグローブの感触を手のひらに感じながら再度目を閉じた。

     意識を取り戻してから気付いたのは、僕の身体が思っていた以上に厄介なことになっているということだった。肺に水が溜まっているせいでただ横になって眠っているだけでも、窒息状態に陥る。支えられながら身体を起こし、青い顔色を晒しながら激しく呼吸を繰り返すこと数十分。それでようやく症状がおさまる。結局入院期間中は横になって朝まで眠ることが難しく、レムナンの肩に寄り掛かるようにして浅い睡眠で夜をやり過ごした。
     肺の状態がよくなり投薬治療に切り替えることにしてからも大変だった。たった一晩の記憶が僕の身体に強い危機意識を刷り込んだらしい。つまり、僕の身体は水を受け付けなくなった。シャワーの水音はもちろんのこと、洗面器に溜めた湯の水面、ガラスコップの表面についた水滴を見るだけで身体が硬直し、言うことを聞かなくなってしまう。パブロフの犬よろしく、水を前にすると呼吸器系統がエラーを起こすようだった。
     僕は何度も陸地で溺れる錯覚を起こした。そんな身体を水中から引き上げ、正気に戻すのはいつだってレムナンの役目だった。根気強く名前を呼んで落ち着かせ、手を握り安全な場所であることを主張し、発作がおさまるまで背を撫でる。顔も洗えなくなった僕のために顔や体を拭くための蒸しタオルを用意し、水が飲みたいと欲し目を閉じれば、望むだけ与えてくれた。極めつけに混乱をおさめるのに最も効果的な方法だと分かると、僕が発作を起こすたび救助した時の人工呼吸を再現するかのように、彼は唇を重ねてくるようになった。ただでさえ介護の真似事のようなことをさせているのに、最後のソレに関しては医療行為とも呼び難い。性的接触にトラウマを抱える彼にとってただの自傷行為でしかなかった。

     いくら僕がこうなった原因が彼の望みのその先にあったとしても、現状が健全でないことは明白だ。マナンと再接触をはかることが難しい以上、僕はここでレムナンを消すか、再度マナンとやり合えるように信頼のできる他のグノーシアへと彼を引き渡すか、さっさとどちらかを選ぶべきだった。
     
     
     症状が改善しベッドで横になって眠ることができるようになってからも病院での習慣が抜けない僕はレムナンの心臓の音を聞きながら眠りについている。朝目を覚ますと大抵彼はまだ眠っているが、目の下の隈はいつになっても薄くならないのでおかしいなとは思っていた。気付いてみればなんてことはない。彼は部屋の電気が暗いうちはずっと、僕の隣でものも言わず静かに起きていたのだ。
     ある晩、僕も彼の真似をして一晩中眠らないことに決めた。とはいえ、ずっと目を開けていては相手を困らせてしまうに決まっているので、しっかり目を閉じて寝たふりをしながら隣の存在に意識を向けていた。レムナンは夜の間特にこれといって何かをしているわけではないようだった。考え事でもしているのか、まんじりともせず静かに天井を見つめている。僕も思索に耽ることはよくあるが、それだけなら日の明るいうちにした方が健康的だろうに。二人分の体温が移った布団の中で僕がゆるやかな眠気と闘っている頃、レムナンがふと寝返りをうった。天を向いていた身体が横倒しになり、自分の顔に視線が注がれているのを感じる。口元に手をあてられ、一瞬驚いたが動揺を表に出さないよう気をつけながら呼吸を続けた。しばらくするとかさついた指先は顔の前から離れ、僕の手首へと移った。恐らく人差し指と中指だろう。二本の指で脈を確かめられている。馴染み深い手のひらは最後に僕の左胸の上へと乗せられた。ここまで来たなら直接触れればいいだろうに、どこまでも臆病な彼らしく布団越しの接触だったのでレムナンの手のひらの温度は分からず仕舞だった。そろそろ狸寝入りを明かして、彼に眠らないもしくは眠れない理由を尋ねてやろうかと思ったちょうどその時だった。かさついた感触が僕の頬を撫でた。手のひらの温度は手首で感じた指先よりもいくらか高かった。


    「……貴方はやっぱりやさしいですよ」

     彼が泣きそうな声で呻くので、とうとう僕は目を開けられなくなってしまった。
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    abicocco

    DOODLEAC×グノのレムラキ。

    レムの為にマナンと接触して返り討ちにあうラキの話。
    ※軽い拷問描写、その後障害描写等を含みます
    呼び水 完治したはずだったレムナンの睡眠障害が再発した。彼を深い眠りから遠ざけているのは経過年数が二桁を越してもなお彼の心に色濃く影を落とし続ける例の女の存在……ではない。そうではないからこそどうしたものかと頭を悩ませながら、僕は寝たふりを決め込んでいる。世間一般的に夜と定義されている時間帯にレムナンがまともに睡眠をとっていないことを知ったのはこれで二度目のことだった。

     僕達がD.Q.O.で初めて顔を合わせた時にも彼の目元にはしっかりと濃い隈がこびりついていた。そんな幸薄そうな面持ちで遠慮がちに協力を申し込んできた彼を僕達の味方——AC主義者であると見抜いた僕は、概ね自分の立てた計画の通りに議論を有利に進め、船の権限を乗っ取ることに成功した。とてもじゃないが役に立ったとは言いがたい他のグノーシア連中とは当然その後の行動を共にすることもなく、彼らは各々希望の地で船から降りていき、最後には僕と彼のふたりだけがこの船に残された。無論レムナンを除くすべての人間は一人残らずグノースの元へ送られた後のことだ。
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    Yoruma_ma

    DOODLEレムラキの告白の話なんですけど好きです、とうっかり伝えてしまったレムナン
    珍しくキョトンとするラキオ

    すぐ自分の失言に気がついて慌てるレムナン
    「違う、んです、ごめんなさい、今のは……」
    でももはや言い逃れられないのに気づいて、もう一度小さな声で謝る
    ごめんなさい、汚い、感情を、向けて…とフードの胸元を抑えて顔をしかめる

    ラキオは相変わらず目を丸くしたまま、ことんと首を傾げる
    「汚い、って何?」
    「え」
    「それ君の価値観だよね?」
    例えば、とラキオは人差し指を立てる
    「君、動力炉とか好きだよね…結構花や草も。イートフェチでもあるよね。僕はどちらも好まない。機械油は臭くて汚れるし、土なンか触りたくないし、食欲に乱されたり消化に力を割いてしまうのもごめんだね」
    「人の好きと嫌いって複雑で嫌になるよね。ま、でも違いがあることは君でもわかるだろうに」
    いつも通りベラベラとしゃべり続ける
    レムナンは軽く呆気に取られてこくりと頷いた

    「で、君さ。今僕が述べたようなことを、僕の価値観を突きつけたら腹を立てたことがあるよね。そんなの人によりますよね、口出さないでください、ラキオさんには関係ないじゃないですか!ってさ」
    そうだ 1282

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    「え」
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    「人の好きと嫌いって複雑で嫌になるよね。ま、でも違いがあることは君でもわかるだろうに」
    いつも通りベラベラとしゃべり続ける
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    「で、君さ。今僕が述べたようなことを、僕の価値観を突きつけたら腹を立てたことがあるよね。そんなの人によりますよね、口出さないでください、ラキオさんには関係ないじゃないですか!ってさ」
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