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    070loxol51

    性癖のゴミ箱

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    070loxol51

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    誤字脱字ある

    🇩🇪と✝️が喋るだけ『アレ?どーもォ、イガリアサンこんにちはァ』
    「あ……こんにちは、どうも」
    薄暗く狭い入口から通路を抜けて、一段と天井が低い戸口をノックして開く。
    目の前には、1人椅子に座って一服中のルドルフさんがいた。テーブルの上にはこんもりと吸殻が積もった灰皿と書類が散らばっている。書類仕事中だっただろうか。
    「夜分遅くにすみません。マチルダさんはいらっしゃいますか?」
    『ボスですか?ボスはですねェ〜薬が実験がなんだとか言ってて〜今気分がグロッキーになってマス』
    「えっとつまり……体調が悪い、と?」
    『ハイ』
    部屋で休んでマスよぉ〜とニッコリ笑いながらそう答えられる。座っていても身長が高いのが分かる体格をしているなぁと感じた。
    「別件で近くに来ていたので……マチルダさんにご依頼されていたもので早めに渡した方が良さそうなモノを取り急ぎ渡そうと」
    『なるほどォ〜〜それはご丁寧にありがとうございマス。すみませンねェ、俺が受け取りマスねェ』
    「あ……ではお願いします」
    手に持っていたクーラーボックスを差し出す。ルドルフさんは煙草を咥えたまま立ち上がりそれを片手で受け取った。
    『結構重いデスね。何入ってるんデスかぁ?』
    「臓器数点と……あと仮死状態のラットです」
    『いっぱいデスね』
    ちょっと待ってて下サイね〜と言い、クーラーボックスを手に奥へと歩いていった。待っててくれとは言われたものの自分は荷物を届けに来ただけで、長居するつもりはないのだがどうしたらよいのだろう。
    戻ってきたら挨拶して帰ろうと思っていた最中、ルドルフさんがコップを2つ手に持って戻ってきた。
    『ミネラルウォーターか炭酸水でいいデスか?コーヒーでもいいデスよぉ〜ボトル勝手に開けると怒られるのでェ』
    「え、いや、あの……お構いなく、すぐに行こうと思っていたので……折角なのに申し訳ありませんが」
    『ああ、急ぎの用事がありマシたか?』
    「急ぎ……では無いですが、長居するつもりはなく……」
    『そうデスか〜でしたら休憩して行って下サイ。俺もセリュー戻るまで暇なんデスよォ〜』
    ボスのお詫びに、ねェ?と言いながらもう既にコップにミネラルウォーターを注いでくれている。この場でもう用意されているものを無下にしてまで帰る勇気は無かった。
    「……すみません、ではありがとうございます」
    そこどーぞォ、と言われた椅子に腰掛ける。並々とミネラルウォーターが注がれたコップが目の前に置かれた。
    座って休ませてくれるご好意は有難い……が、相手がこの人というのが自分にとって心配である。というか普通に気まずい。比較的多く関わりがある取引先の側近、風貌からしてそういう類の人ということしか知らないし、今までの記憶から言える事として自分はあまりルドルフさんとのコミュニケーションは得意では無い。特別苦手という訳では無い……と思うが、色々と相手にも申し訳ない状況なので果たして大丈夫だろうか。
    『イガリアさんとお話して見たかったんデスよねェ〜ボスの下就いてからァ、ゴヒーキニしてくれてる人以外関わり少なくてェ』
    「いえこちらこそ……いつもありがとうございます。同業が少ないとはいえ、何度もご依頼して下さるのは嬉しいです」
    『後、今暇過ぎたので』
    「そうですか……」
    『近くに派遣て事はお忙しいんデスか?』
    普通に世間話をし始めた。心当たりは無いにしろ何か詰められるのでは無いかとよぎったものだが、杞憂だったらしい。そのような雰囲気は感じ取れないので、本当に暇つぶしに雑談したいだけのようだった。
    「はい、少し……ああ、匂いは落としてきたんですけど…残っていたらすみません。」
    『全然デス〜分かりませンよぉ、慣れてるのでェ。イガリアさんって……クリスチャン?何デスか?』
    「いえ、全く。カトリックでもプロテスタントでもありませんよ」
    『アレ?そうだったんですかァ、俺てっきりそういう人かと思ってマシた』
    「あはは、よく言われます。…でも、家系がそういう類で生まれたもので。小さな街でしたが、教会で育った身ではありますね」
    『ああ、じゃあ昔は信者様のお仲間だったんデスね。首のソレは名残りとかデスか?』
    「まぁ……はい。なんか、首元が寂しいので」
    アクセサリー感覚ゥ〜と笑いながら煙草を吹かしている。
    『ずっと気になってマシた。神職者サマが解体屋??って思っててェ〜イガリアサン、真白だし』
    「真っ白…?ですか?」
    『ホラ、神に仕えるヒトとかって綺麗にしてなきゃダメみたいなのあるじゃないデスか。穢れなき〜みたいなの言ってたなァ、って』
    「へぇ…」
    誰が言ってたんだろうか。ルドルフさんの知り合いにそういう人がいたのか。そういえば、この人の生まれは何処なんだろう。
    『だからイガリアサンも白いのかなァって思ってマシた』
    「言うほど白くは、ないと思います…」
    『そうデスか〜』
    『あと、解体屋サンってそういう衣装してマスもんね〜』
    「衣装……?」
    『ホラァ、パフォーマンス的なアレデスよ。返り血目立ちやすそうデスね』
    「うん……?まぁ、動きやすいですね…」
    へェ〜と面白そうに返事をされる。表情は変わらず温度のなさそうな、ニンマリと口が弧を描いている笑顔だ。
    この人も人間なわけで、その皮膚の下には他と変わらず人間が生きるために必要な臓器や血液な満たされているんだろうなと思った。男性だし体格も良いし、まず皮膚が硬そうだ。
    だが、仮にルドルフさんの身体をバラしたとしても表情は変わらなそうだと思った。ゴロリと転がる頭部にその笑顔が張り付いたままの有様を想像する。実に不気味だ。
    『……何か失礼なコト考えてマス?』
    「えっ、あ、いや……なんでもないです…」
    じっと顔を見つめていたからだろうか。確かに失礼なことを考えていたのかもしれない。謝ろうかと思い目を向けたが、ルドルフさんの表情は変わっていなかった。

    「変な顔してましたかね、すみません……そういえば、ルドルフさんの生まれはどちらなんですか?」
    『俺ですか?出身はドイツデス』
    意外と会話が続いている事に内心驚いている。あまり誰かと世間話をする事もないので、こういった感覚は久々だ。
    「普通に軍から転職しまシタよ、ボスとは…」
    ルドルフさんがついでいなかった自分のコップに炭酸水を注いだ時、出入口からギシリと音が響き異様に大きな影がぬっと現れた。
    『……』
    「あ、どうも……お邪魔してます」
    『お、おかえりィセリュ〜』
    「……イガリア 珍しいな」
    その異様に大きな影の正体はセリューさんだった。手には人一人入りそうな、異様に大きな黒い袋を持っている。
    『……一応、持って帰ってきた。腹の中にあると思うがオレじゃ見分けがつかないから、ボスに見て欲しい』
    『ボス今グロッキーしてるから後だなァ。消化さレル前にゃボスも起きるだろ』
    『そうか』
    そんな会話をしてセリューさんが袋を抱えたまま別部屋へと入っていく。会話の内容から恐らくだが、袋の中の人物を色々漁るのだろう。結構悲惨な流れを見てしまった気がするが、この世界ではそんなに珍しくはない。
    そして彼が現れたと同時みゃあん、と鳴き声が聞こえにどこからともなく足元から猫が2匹ほどてくてくと現れた。
    「わっ、え、…どこいたんでしょう」
    『……餌だな』
    『今日はどれも手ェだしてねェよ〜』
    恐らくキッチンらしき場所に歩いていくセリューさんを猫達が追いかける。そのうちの1匹をルドルフさんがひょいと抱えあげ、目の前にずいと差し出された。
    『イガリアさんは猫好きデスかぁ?この前来た時撫でてマシたもんねェ。俺は普通デス〜好かれてもまセン』
    両脇を抱え上げられてびろーんと身体を伸ばしている猫の表情はどことなく不満そうだ。
    「あ、まぁ、はい、嫌いでは無いです……」
    差し出されるがまま思わず受け取ってみるが、猫はするりと腕をすり抜けて床に降り立ちスタスタと行ってしまった。
    『あらァ〜』
    「あはは、行っちゃいましたね。……私はそろそろ行きますね、思ったより長々と居座ってしまいすみません」
    少し撫でさせてもらい体温を感じたい気持ちはあったが、そろそろ頃合かと思い席を立ち上がる。半強制的だったとはいえ、少々長居をし過ぎてしまった気がする。
    『あぁ、全然デスよォ。俺が付き合ってもらいマシたし楽しかったデス』
    「それは…良かったです。……セリューさんも、お邪魔しました」
    『ああ。気を付けてくれ』
    セリューさんは無表情で頭と肩に猫を乗せ、腕に恐らくキャットフードを抱えている。
    身長と強面が相まって威圧感がある彼だが、動物に好かれている光景を見ると何だか微笑ましいものを感じる。
    「……暖かそうですね。では、マチルダさんにもよろしくお願いいたします…お大事にと」
    『ハイ〜お気を付けて〜』
    『……ん』
    高身長の二人に見送られ、狭い戸口を閉じる。夜は明けている思ったが、まだどうやら太陽は昇っていないようだった。

    (…あの中身、誰だったんだろうな)
    解体までとはいかないが、それに近い事はするのだろう。他人がしているのを余り見た事がないので、あの二人がどのようにして行うのか興味があった。
    多分ちょっと過激なんだろうなぁ、と想像する。何なら原型を留めていなさそうだが、処理が面倒だとマチルダさんが怒りそうだ。
    でもここなら海が近いから楽なのかな、とどうでもいい結論付けをしてその場を後にした。
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