Mon petit chat「にゃん」
「狗巻…君?」
任務から帰って教室に入ると…
恋人が猫語しか話さなくなっていました。
「にゃんにゃん」
「え、何?どうしたの?」
か、可愛い…じゃなくて!これは…?
戸惑う僕を見て、パンダ君が助け舟を出す。
「今日は2月22日で猫の日だから、猫語で話すんだと」
「あぁ、なるほど…猫の日」
心ここに在らずの相槌に、今度は真希さんが
「考えてみれば…おにぎりの具以外にも、呪言が発動されない言葉って沢山あるよな」
頬杖をつきながら呟いた。
確かに、猫語でも呪言は発動されない…けれど…
「にゃ?」
狗巻君の悪ふざけだと分かっていても、
可愛すぎる…
可愛い‼︎と叫びたい…でも、
今はパンダ君も真希さんも居るし…
気持ちをグッと抑えて、
座学の授業に集中する。
そんな僕に視線を向ける狗巻君は、
首をかしげて上目遣い…あぁ…わざとだな…。
僕は天を仰ぎながら、
早く放課後になってくれと願った。
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夕方…
寮に戻って、狗巻君の部屋を開けると…
「にゃ〜お」
今日、一日中ずっと飽きずにこれ。
逆にすごいよ狗巻君…。
「な、何だか猫語の狗巻君って新鮮だね」
「にゃあ」
「あはは、テレビ点けようか?バラエティ番組とかやってるかな?」
落ち着け自分…冷静になれ。
気を紛らわせようと、
テレビのリモコンを持った瞬間、
狗巻君が【何か】を頭につけて目の前に立った。
「にゃにゃ〜ん!」
「狗巻君!?」
ジャジャーン!と見せたそれは…
狗巻君の頭に乗った、
二つのモフモフした三角形…
「ねっ猫耳っ…?」
「にゃんっ」
僕が驚きの声を上げると、
狗巻君は楽しそうに笑った。
白い猫耳のカチューシャ…
白猫…似合う…
ニコニコと微笑む目元、猫の声マネ…
全てが可愛すぎて…あぁ、もう!
「悪戯が過ぎるよっ」
「にゃっ!?」
我慢の限界!ソファに押し倒して、
無防備に煽る狗巻君を叱る。
「そんな事して…どうなるか分かってる?」
「お…おかか」
「…今日は猫語しか使わないんでしょ?」
「!?おかかっ」
そんな事は言っていない!とばかりに、
抵抗する狗巻君の両腕を掴んで顔を近付けた。
「…ゅ…うた」
「『やめて』って?そんなに可愛く名前を呼んでも…だめだよ」
「ぁ…」
まだ何か言いたげな唇を唇で塞ぐ。
優しく…丁寧に…
「…ッナ…」
「ねぇ…鳴いてみせてよ」
「…」
「ん?」
「…にゃあ」
困ったように小さく鳴いた恋人が可愛くて、
頭を撫でながら再度キスをした。
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「いくら…明太子…」
「ご、ごめん…狗巻君」
あれから、
止まらなくなって0時を過ぎ…現在23日。
ぷんぷん怒る狗巻君に、謝る事しか出来ない。
「無理させちゃって…本当にごめんね」
「高菜」
「申し訳ございません!」
僕って…
一度スイッチ入ると止まれないんだよな…
狗巻君に嫌われたら、どうしよう…反省。
がっくり肩を落として顔を伏せていると、
背中に温もりを感じた。
「狗巻君?」
僕の背中に頬をくっつけて、
体重を乗せる狗巻君…
「こんぶ」
「許してくれるの?」
「…しゃけ」
僕の可愛い恋人は、
とっても優しい心の持ち主。
落ち込んだ僕を見て、慰めてくれている…
堪らない気持ちになって、
ぎゅっと抱きしめた。
「狗巻君、ありがと」
僕の言葉を聞いて、
狗巻君がクスクス笑う。
そんなに甘やかされたら、
図に乗っちゃいそうだよ。
「猫の日…可愛かったな」
思い出して呟けば、
狗巻君がパッと目を見開いて、
「ツナツナ!」
嬉しそうな顔をした。
あれ?もしかして…
「可愛い」って言って欲しかったのかな?
だとしたら…
「何度でも言うよ…可愛い…大好きだよ」
そう伝えれば、
狗巻君は顔を真っ赤にして、
照れ臭そうに微笑んた。
fin