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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    学生萌目。一年生の春。

    ##学生萌目

    入部先緊張感にあふれた入学式と始業式を終えて息つく間もなく新入生オリエンテーション、在校生との交流会、各クラスの顔合わせ等様々なイベントが休む暇なく押し寄せる。それらがやっとひと段落した4月下旬。それなりに皆が新しい環境に慣れ始めた頃、新入生達に大きな選択が差し迫っていた。

    「ねえ目金君。君はどの部に入るか決めたのかい?」
    「部活ねえ。もうそんな時期でしたか」

    放課後の食堂の片隅で目金君はハーフサイズのハヤシライスを食す手を止め、萌の問いに思案するように目線を空に向ける。部活決め。多くの学生たちにとってそれは大きなイベントであり、人によっては学生生活だけに留まらず今後の人生をも大きく左右するものであるだろう。この秋葉名戸学園でも新入生勧誘は盛んに行われており、特に文系の部活は大会等で成績を残している部も多いことから、次世代へ繋ぐ為、部の伝統を絶やさぬ為にと有能な新入生の確保に各部が躍起になっている時期でもある。

    「漫画君は文芸部に入るんですよね」
    「ああ、顔なじみも多いしね。それに、前々から部長から頼まれていたし」

    現役漫画家ということもあり萌は中等部時代から文芸部現部長に何度も声をかけられていた。今まではフットボールフロンティアで優勝し、副賞のチケットで皆とアメリカ旅行に行くという悲願達成のため断り続けていたが、高等部にサッカー部は無いし入っても良いかなというフワっとした気持ちで入部先を決めている。

    「そういう君も、その様子からして入部先は決まっているみたいだね」
    「流石漫画君。よくお気付きで」

    折角ですし当ててみますか?と勿体ぶった目金君によって唐突にクイズ形式にされた萌は「ええ?何だろう」素直に考えを巡らせる。

    「やっぱり君は特別アニメを愛しているし、アニメ研究会とか?」
    「残念、外れです」
    「えー、じゃあ鉄道研究部?」
    「そこも悩みましたが違いますね」
    「うーん……降参。教えてよ目金君」

    どの部に入ってもおかしくない程の知識量と情熱を有する彼の入部先など当てられる訳もなく、萌は早々に降参の意を示す。

    「ふふん、では教えて差し上げましょう。僕が入部するのは、ゲーム研究部です!」

    そう高らかに宣言した目金君は得意げに眼鏡のつるを指でつまみ、蛍光灯の灯りを受けた彼のレンズがきらりと光った。

    「ゲーム研究部……ちょっと意外だね。あそこは確かゲームを作りたい生徒達が集まる部のはずだけど」

    てっきり目金君は各ジャンルの愛好家たちとその愛を語り合う類の部に入るものだと勝手に思い込んでいた為、萌は驚きで目をぱちぱちと瞬かせる。

    「漫画君が危惧する気持ちは分かりますが僕にはその部でやりたい事があるんです」
    「やりたい事?」
    「漫画君、ゲーム研究部が文化祭で自作ゲームを毎年公開しているのはご存知ですよね」
    「そりゃ勿論。ゲーム研究部のゲーム試遊コーナーは文化祭の目玉の一つだからね」

    ゲーム研究部の試遊コーナーは毎年待機列が出来るほど人気で、ゲームの出来によっては整理券を配る事もある秋葉名戸学園高等部の誇る名物企画の一つである。

    「僕はそこで大勢の人々に楽しんでもらえるようなゲームを発表したいんです」
    「うんうん」
    「そして2年生の文化祭までに自他共に認める最高に面白いゲームを作り上げ、3年生の夏ソクで頒布するのが僕の最終目標です!」
    「んんっぐ」

    まさかの言葉に萌は飲んでいたお茶を吹き出すのを寸でのところで堪える。自作ゲームを発表したいというのは分かる。自他共に認めるゲームを作成するというのも自己研鑽の為の高い目標設定で有るのだろう。だが一介の創作者として、世界最大規模の同人誌即売会こと夏ソクにゲーム制作未経験者の目金君が2年以内にそれなりのクオリティの物を仕上げるのは無謀なのではと考える。

    「えーっと、目金君」
    「何ですか?」
    「君、ゲーム作ったことは無いんだよね」
    「ええ、知識は持ち合わせていますが完全なる初心者です」
    「そもそも、創作活動自体したことが無いんだよね」
    「ええ、一から学んでいく必要がありますね」

    萌の質問に堂々と答える目金君。そのハキハキとした口調と反比例するように萌の心中に不安が積もる。

    「……あのさ。凄く言い辛いんだけど、その目標は流石に無茶じゃないかな?」
    「漫画君の心配はごもっともです。プロの漫画家として活躍する君からすれば、僕の考えは無謀なものに見える事でしょう」

    歯に物がつっかえたかの様な物言いをする萌に対し、目金君はその言葉を噛み締めるかの様に頷き、

    「ですが大丈夫です。僕なら出来ます!」

    そしてそんな心配など不要だと言わんばかりに、堂々と言い切ってみせた。

    「勿論初めのうちはゲームの形すら保てないものに成ってしまうでしょうが、まあ僕の事です。すぐモノに出来る筈です。それに、部という枠組みでの活動は他の部員からの刺激を自然と受けるでしょうし、より僕を成長させてくれるに違いありません」

    「僕は必ず、やり遂げてみせます!」
    「…………」

    キラキラとした眼差しで自らの夢を語る目金君。目金君の描いているビジョンは余りにも楽観的で物作りのシビアさを何一つ理解していない。幾ら部活動とは言え夏ソクの頒布を目標にするのであればその認識は改めた方が良いと、萌の冷静な部分が判断する。

    (けど、本当に完成させちゃうんだろうな。目金君は)

    粗だらけで杜撰な計画ではあるが、きっと彼なら何とかしてしまうだろう。萌は漠然とした不安を棚に上げ、いつの間にか自身の思い描く理想のゲーム像について語り始めた目金君の話に耳を傾ける事にした。
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    ROM

    REHABILI「嘘はまことになりえるか」https://poipiku.com/4531595/9469370.htmlの萌目の2/22ネタです。22日から二日経ちましたが勿体無い精神で上げました
    猫の日「……えっと、つまり。漫画君は猫耳姿の僕を見たいのですか?」
    「今日は2月22日だろう?猫の日に因んだイベント事をこう言う形で楽しむのも、恋人がいるものならではの体験だと思うよ」

    2/22。2という数字を猫の鳴き声と準えて猫の日と呼ばれているこの日。そのイベントに乗じてインターネット上では猫をモチーフとしたキャラクターや猫耳姿のキャラクターが描かれたイラストが数多く投稿されている。そして、猫耳を付けた自撮り写真が数多く投稿され、接客系のサービス業に勤めている女性達が猫耳姿になるのもこの日ならではの光景だろう。
    古のオタクを自負する萌にとって、猫耳とは萌えの象徴であり、身に付けたものの可愛さを最大限までに引き出すチートアイテムである。そんな最強の装備である猫耳を恋人にも身につけて欲しいと考えるのは自然な流れの筈だ。けれど、あくまでそれは普通の恋人同士ならの話。萌と目金の間に結ばれたこの関係は、あくまで友として萌と恋人のごっこ遊びに興じる目金と、目金に恋慕する萌という酷く歪な物であった。
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