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    verdure_kayaoi

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    verdure_kayaoi

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    sngn垢で呟いた微ホラーネタ。
    ツイート文体。私が気に入ってるので再掲です。

    #実玄
    mysteriousProfundity

    同級生のが、通学路にある大きな屋敷の前を通った時「俺のこと呼んでる」って言い始めた話生まれつき耳が良いと自負してたから屋敷の前で澄ましてみたけど、何も聞こえない。


    「え…何も聞こえないけど」
    「…でも。ほら、今、」


    すいっと屋敷の方を見て言う友達にぞわぞわして「お前それ聞いちゃいけないヤツだよ!!さっさと行こう!?」って手を引いて逃げる。舌打ちが聞こえた気がした。





    「なんか、匂いが変わったな」


    翌日の学校で鼻の良い友達が件の子に言う。なんだか寂しそうに。


    「俺臭え?」
    「いやそういうことじゃない」
    「今そういうボケいいから。そんな場合じゃないから」


    鼻の良い友達に事情を話したら、やっぱりちょっと寂しそうに笑った。怖くないらしい。自分は恐怖しかない。


    「霊感あるのか?」
    「ヤダもうそっちの話じゃん。やめてよ嫌いになるよ!?」
    「嫌われるのは悲しいけど質問には答えてくれ」
    「バカ嫌いにならないよ!!霊感!?無いねそんなの!!あってたまるか!!」


    件の子はずっと窓の外を見てた。屋敷がある方をジッと。最近、心なしかぼんやりしてるように思う。





    しばらく何も無い日が続いて、件の子が遅刻した日があった。休み時間に様子を聞いたら「大丈夫」という。


    「ほんと?無理すんなよぉ」
    「うん。大丈夫。兄ちゃん、に、大丈夫って言われたから」


    あれ?と思った。


    「…兄貴いたっけ?」前にいちばん上って。
    「うん。兄ちゃんがいる」あれ?


    それから、その子は“兄ちゃん”の話ばかりするようになった。家の手伝いをしたら褒めてくれた、頭を撫でてくれた、一緒に寝てくれた…。弟妹が多いせいか、どこか大人びた雰囲気があったその子は、“兄ちゃん”の話をする時だけは年相応の顔をしてるように思えた。


    「なぁ。“兄ちゃん”って、どんな見た目なんだ?」


    ただ気になっただけの質問だった。いつも、あまりに得意げに話をするから。そう聞くと、その子は電池が切れたように黙り込んでしまった。


    「あれ?おーい。だいじょぶ?」


    声をかけたらぼんやりしたまま「大丈夫」返事をした。


    「白い…白い髪で、綺麗で…目は俺と一緒…そう、俺と一緒なんだ。お揃いだって、笑ってくれて…笑った顔、すごい好きで……優しいんだ。笑うと…すごく。俺大好きで、……白い、服に、黒い服…指が、片方の指…2本くらい、無かった」


    取り憑かれたようだったから、鼻の良いヤツを呼んだ。


    「そっちに行っちゃダメだ」


    肩を揺らされて少しだけ戻ってきたようだった。


    「な、なんで?ねぇ」
    「俺にもわからないけど、とにかくダメだ。あまり良くない匂いがするんだ」


    首がひやりと冷えた。そういえば、窓が開いていて、知らない間に随分かいた汗が風で冷やされたらしい。てっきり、刀でも、あれ?

    鼻の良いヤツも同じ思いをしたらしい。首が冷えたと。ただ汗が乾いただけだろと件の子は言った。
    「お前はわかんなくて良いよな!!」
    自棄になって叫んだ。だって怖いもん。


    帰り道、鼻の良いヤツも連れて帰ったら、件の子が大きな屋敷の前で足を止めた。


    「じゃあな」


    え?そこお前の家じゃないじゃん。


    「ダメだ」


    相変わらず同じ言葉で、今度は手を引きながら言う。


    「門をくぐったらダメだぞ」


    件の子は不思議そうな顔で見てきて、次は屋敷の門を見上げた。


    「でも、」


    迷子みたいな声だった。


    「おかえりって言ってんだ」


    何も聞こえないよ。そう返すと、屋敷に向かって風が吹いた。邪魔くせェ。耳を塞いだ。















    今日新しい先生が来るらしい。どんな人かな、そこかしこで噂話が立つ。全校集会で、舞台の上に立ったその人。白い髪に、大きな傷痕。身体が大きくて、指が。あれ?指?


    「兄ちゃん」


    ほそりと声が聞こえた。周りにやっと聞こえるような微かな声だった。舞台上のその人はそれに笑い返した気がした。





    「私あの先生苦手」


    あまり好き嫌いをしない美少女が呟く。


    「わかる!こわいよな!!俺もこわい!!担当じゃなくてよかった!!」
    「怖くはないよ」
    「アッそうなの」


    優しく突っぱねられた。悲しくて沈んだ。


    「私の大事な友達を持っていっちゃったから」


    美少女も悲しそうに笑った。鼻の良いヤツみたいに。





    「ビリビリするぜ」


    騒がしい暴れん坊がお菓子を食いながら言う。


    「なぁそれ俺が持ってきたヤツ」
    「あいつはやべえな。油断したら持っていかれちまう」
    「今俺はお前にお菓子を持ってかれてる」
    というか“持っていく”ってなんだよ。
    「そんままだ。そんなこともわかんねえのか?」雑魚だな。
    うるせえ馬鹿。



    いつも通りに帰ろうとした。今日は美少女と暴れん坊も連れて。そうしたら、新しい先生が教室に来た。皆、気味が悪いほど興味を示さなかった。騒いでもいいはずなのに。


    「玄弥」


    静かで、強かった。伸ばした手は届かなかった。目の前で友達が捕まるのを見た。あぁそうだ、玄弥。あの子の名前は玄弥だ。

    鼻の良いヤツが必死に名前を呼ぼうとしてた。新しい先生はこっちを見て、俺たちを見て、気味悪く笑った。


    「お友達か。これからも俺の弟をよろしくなァ」


    そういえば“兄ちゃん”って言ってたっけ。兄弟で先生と生徒って、初めて見た。現実にいるんだな。あれ?なんか、おかしい気がする。でも、なにが?


    「善逸」


    鼻の良いヤツが服を引っ張る。なんだよ。振り向いたら、あんま見ない顔をしてた。


    「善逸までそっちに行っちゃダメだ」


    そっちってなんだ。お前また同じこと言う。帰ろうと玄弥の手を引く後ろ姿を見た。それから、手。人目を憚らず、逃げないように繋いだそこには、しっかりと指が揃っていた。




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