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    utako12411

    @詩子

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    utako12411

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    あれから1000年後──朽ちたバトルタワーで誰かを待ち続ける王様の亡霊に、懐かしい人によく似た青年が挑戦者として挑み続けるようになる…そんなお話。ベースはダンキバ。

    #ダンキバ
    kippa

    ガラル自然保護区――それは、自然の力が文明を淘汰した世界。およそ千年前、数多のパワースポットから湧くエネルギーを利用して独自の繁栄を遂げたガラル地方だが、今は緑に覆われ、野生ポケモン達の楽園となっている。かつてワイルドエリアと呼ばれ、人々の手で管理されていたガラル地方の力強い自然が、誰の支配下に置かれることもなくどこまでも広がっている。深い森、広大な荒野、険しい雪山、霧の濃い湖……それらに囲まれるようにして聳える、朽ちた塔。ガラルの繁栄の象徴とも呼ばれたテクノロジーの結晶も、千年の間に足元から這う植物に覆われ、今では緑のブーツを履いた格好だ。

    「見えた、バトルタワーだ」
     かつてそのような名前で呼ばれていたこともあった、朽ちた塔を目指して飛ぶドラゴンポケモンが一匹。そして、その背中に乗った青年が小さく呟いた。塔の窓ガラスは白く汚れ、暖かな陽射しを浴びると、ぼうっと発光しているように見えた。
     青年を乗せたポケモン――フライゴンが高く鳴く。窓ガラスが大きく割れた個所から塔の中に入り込み、罅割れた床の上に降り立つ。背中からひらりと身軽に飛び降りた青年は、フライゴンの頭を抱き寄せるようにして額をくっつけた。
    「ご苦労様、すごく疲れただろう、沢山飛んだから」
     甘えるようにぐりぐりと頭を押し付けられて、青年の長身がよろめく。スニーカーの底が割れたガラスを踏んだ拍子に、ぱき、と音を立てた。それはだだっぴろいフロア内に異様なほど響き渡り、青年の不安を煽る。
    「……なんだか気味が悪いな、こんなに広いのに、何も無い……」
     結局疲れているフライゴンをボールに戻すことができないまま、隣に従えてフロアを進んだ。青年がたった一人でこの場所にやってきたのには、理由があった。
     彼は遠い地方でポケモン由来の気象現象を学ぶ学生だ。卒業論文の研究テーマに、ガラル自然保護区における野生ポケモンと気象現象の関係を選んだ。

     一週間滞在する間の拠点として青年が選んだのは、この朽ちた塔だった。少なくとも雨風は凌げるし、これだけの高層階ならばやって来る野生ポケモンもそうそう居ないだろう。
     大きなリュックサックを背負い直してフロアの真ん中までやってきた時、青年は一匹のポケモンと出会った。
    「コータス……?」
     穏やかな表情でそこにじっと身を置いているコータスの姿に、青年は目を見張った。生きているのか分からない――何故なら、コータス特有の甲羅から噴き出す熱気を感じない。それどころか、甲羅には見たことの無い植物が芽吹いている。一体何年こうしてじっとしているのだろう。長生きをするポケモンだとは言われているが、ポケモン達の寿命についてはまだまだ未解明の点が多い。
    「生きているのか?」
     警戒するフライゴンを制してそっと歩み寄り、顔の前にしゃがみ込む。鼻先に指を近付けると、僅かだが呼気を感じた。生きているのだ。
    「お前、ここに住んでいるのか? でも、お前の足でここに辿り着くなんてどうやって……もしかして誰かのポケモンだったのか?」
    「その通りだ! 勘が良いな!」
     誰も居ないと思っていたフロアに響いた快活な声に、青年は驚いて尻餅をついた。
    「だ、誰だ?!」
    「あぁ、驚かせてすまない、何せ久しぶりのお客さんで――……、……キバナ?」
     現れたのは、今時見掛けないような真っ赤なテールコートに長い紫色の髪が印象的な男だった。青年の顔を見るなり、もとより大きな目を更に真ん丸に見開いて、知らない名前を呼んだ。
    「キバナ……」
    「誰だよそれ、オレはそんな名前じゃない、オレさまにはライハンって名前がある」
    「そう、か……そうだよな、すまない、知り合いにとてもよく似ていたものだから」
    「それより、あんた誰」
    「名乗るほどの者ではないさ、ただのポケモントレーナーだぜ」
     男は肩を竦めて笑って見せたが、青年は――ライハンは納得がいかないようだ。自分は名乗ったのに、男は名乗る気が無いらしい。
    「お客さん、なんて言っていたけど、ここはもう誰も居ないはずだろ、あんたこんなところで何してるんだ? オレさまはちゃんと許可をもらって研究に来てる、許可証だってこの通り」
    「なるほど、学生か……よし、それならキミの研究の手伝いをさせてくれ、驚かせてしまったお詫びだ」
     ライハンがぱんぱんのリュックサックから取り出した許可証に目を細め、男は大きくひとつ頷いた。それから足取り軽く、フロアの奥にある扉へ向かっていく。
    「待てよ、怪し過ぎる、お、お、オレさま学生だから金なんて無いぜ! ガラルまでの旅費だって馬鹿にならなかったし、野営のための道具だって揃えたから……」
    「ん、キャンプの道具を持っているのか? それはいい! すぐに行こう、いやぁ久しぶりのキャンプだ、それも人と一緒に!」
    「勝手に話を進めるなよ! あっ、ちょっと待って!」
     今度こそ誰も居ないフロアに取り残されそうになって、ライハンは慌てて男についていった。

    「そいつがあんたの相棒?」
    「ん? ああ、いや……ううん、相棒は、もう居ないんだ」
     曖昧に笑う男が向かったのは、かつて非常用の扉だった重い金属製の扉の向こう側、すぐにでも外へ飛び立てる外階段の踊り場だった。傍らに従えたドラパルトは、ライハンとフライゴンを物珍しそうに見詰めている。
    「ふうん……それで、どこへ行くんだ? 研究の手伝い、本当にしてくれるんだよな?」
    「勿論だ、まずはワイルドエリアへ行こう! ……と言っても、今となってはどこもかしこもワイルドエリアのようなものだが……そうだな、オレのお気に入りの場所がある、そこへ行こう」
     男は音も無くドラパルトの背中に乗って、颯爽と空へ飛んだ。降り注ぐ太陽光が眩しい。ドラパルトの尾が半透明に透けて、青い光が降ってくる。ライハンは彼らに遅れないよう、すぐさまフライゴンと共に飛び出した。
    「コータスは連れていかないの?」
    「ああ、あのコータスはオレのポケモンではないんだ、だから連れていけない」
     空を駆け、風を切って南へ飛ぶ途中、男はたまに「あっちじゃないか?」とか「こっちだったか?」とか、ドラパルトに話し掛けている。ドラパルトの方はまるで知らんぷりで、男の目的地へ真っ直ぐに飛んでいるようだった。ドラパルトは元々とてもすばやいポケモンだ、フライゴンがついてきているか気にしているのだろう、たまに男の長い髪の中からドラメシヤが後ろを覗いていた。

     やがて辿り着いたのは、静かな湖の畔だった。あそこからなら湖を臨めるだろう、といった高台を見上げながら、男はどこか懐かしそうな顔をする。
    「よくここでキャンプをしたんだ、オレも」
    「へぇ……あんまりキャンプしそうな格好じゃないけど」
    「はは、それもそうだな」
     手伝おう。男は短く告げて、ライハンの荷物の中身を確認した。野営するつもりだった、というのは本当のようで、キャンプのための道具は一通り揃っている。とはいえ、ライハン自身はアウトドア初心者だ。男が見た目に似合わず手際良くテントを張り、かまどを組み上げ、あっという間に拠点を作り上げてしまう様子をただただ脇で眺めていることしかできなかった。
     小一時間で準備が整っても、男は汗ひとつかいていなかった。ライハンはせめて水を汲みに行こうと湖に振り返っただ、ちょうどギャラドスが大きく湖面を尾で打つ様子を見てしまい、結局動けなかった。
    「すごいな、あんた。オレさまこんなに手際よくできる自信無いよ」
    「少しは信用してくれたか? ここはげきりんの湖、昔そう呼ばれた場所だ。強い野生のポケモンが沢山居るから、気を付けろよ」
     明るい声で言われて、ライハンは緊張気味に頷いた。どこかでブリムオンの特徴的な鳴き声がする。フライゴンが苦手とする相手だ、ライハンは立て続けに飛んで疲れている相棒が気掛かりだった。
    「そこで木の実でも取ってこよう、キミはここで待っているといい」
    「え、やだよこわから一緒に行く!」
    「駄目だ。この先はもっと強いポケモン達が住んでいる。あの高台に木の実が生る木があるが……とても強いブリムオンが居る、キミの相棒では分が悪い」
    「わかったよ……すぐに戻って来てくれる?」
    「あぁ、大丈夫だ、任せろ」
     そうして男は、ドラパルトとは別に、もう一匹ポケモンをボールから登場させた。ギルガルドは鋼の身体をしゃらんと鳴らして、ライハンを一瞥した。真っ直ぐに剣を立てて男の後ろをついていく姿は、まるで王に従う騎士のようだった。


    「何にもしないのも悪いよな……そうだ、飯の支度くらいなら……」
     再度振り向いてみれば、湖は静かに凪いでいる。ポケモンの気配が無いことを確認して、ライハンは水辺に近付いた。何度か往復して水を汲み、焚火で沸かす。フリーズドライの食品は後回しにして、メスティンに水と米を入れる。新品のそれはぴかぴかの銀色で、火にかける瞬間はどうしたってわくわくする。一緒に作るのはカレーだ。といってもパウチを温めるだけなので、鍋に沸かしたお湯の中に沈めたらすぐ出来上がる。
     やがて米がの炊ける仄かに甘い匂いがし始めても、男は戻ってこない。朽ちた塔に着いた時には真上にあった太陽も、今は角度をつけてライハンの背中を照らしている。
    「すぐに戻るって言ったのに……」
     カレー分けてやらないからな。ひとりごちて、それでもライハンはメスティンの中でふっくら炊けたご飯を半分に分けて、二人分のカレーを用意した。腹を空かせたフライゴンが鳴くので、もう食べてしまおう、そう思った瞬間、背後の湖でどっと水飛沫が上がった。
    「っ、なんだ?!」
     先程のギャラドスが、首を擡げてこちらを見ているではないか。ライハンはカレーがこぼれるのも気にせず立ち上がった。こうなったら応戦するしかない、フライゴンに指示を飛ばそうと口を開けば、声が出るより先に何かがライハンの横を通り抜けていった。
    「大丈夫か!?」
    「あ……」
    「すまない、道に迷って」
    「どうやったらあの距離で道に迷うんだよ!」
     男のドラパルトが放つドラゴンアローがギャラドスを怯ませる。ライハンを守るように抱き寄せる男の腕はこれでもかと冷たかったが、極度の緊張状態にあるライハンはそのことにまったく気付いていなかった。それよりも、わざを受けて怒り狂うギャラドスの咆哮に咄嗟に耳を塞いだ。
    「う、ぁ」
    「ギルガルド、キングシールドで彼を守ってくれ」
     張り巡らされる透明な膜が、びりびりと震える空気からライハンを守る。男はその向こうで、暴れる湖の主と対峙していた。
    「お前のご先祖様とは、何度もここでバトルをしたぜ。リザードンは、そのおかげで強くなった」
    「あいつ、何言ってるんだ……?」
     傍らで盾を翳すギルガルドに問い掛けるが、返事は無い。男は堂々たる立ち姿でドラパルトへ指示を出し、ギャラドスを圧倒した。水の中へ帰っていくギャラドスが大きな波を立て、やがてそれが落ち着く頃、男は人好きのする明るい笑顔で振り向いた。ギルガルドも防衛を解いたようで、静かに男の傍へと戻っていく。
    「怪我は無いか? カレーの良い匂いにつられたんだろう、滅多に人が立ち入ることが無いから、彼等には刺激的な香りだったんだろうな」
    「あ、ありがとう……あんた、本当に強いんだな」
    「ふふ、そうだぜ、こう見えて結構強いんだ」
    「ゴーストポケモンが好きなの? ギルガルドに、ドラパルト、他にも手持ちが居るのか?」
     ライハンが青い目で男を見上げると、男はまた懐かしいものを見るような顔で薄く笑う。矢継ぎ早に問い掛けながら、ライハンは男の腕を取ってテントの傍へ戻るなり、少し温くなってしまったカレーを差し出した。
    「これ、よかったら」
    「ありがとう……でも、遠慮しておくよ、その、オレは……」
    「カレー、嫌いだった……?」
     男の気まずそうな返事に、ライハンがしゅんと肩を落とす。きっと苦手なのだろう、それなら自分が食べてしまおうと、取っておいたカレーの皿を膝のうえに乗せて、ちまちまと口に運ぶ。男はなんだか堪らなく申し訳なさそうな顔をしているが、だからといってカレーを食べるでもなく、山ほど採ってきた木の実の中から甘そうなモモンの実をひとつ割って、しょげているライハンの口元に運ぶ。尖った犬歯が特徴的で、薄い唇が大きく左右に広がる口元だった。
    「すまない、どうしても食べられないんだ。だが……キミが美味しそうに食べているところが見たい、駄目か?」
     自分より(恐らく)大人の男が、こてんと首を傾げて問い掛けてくる。ライハンはごっくんと音立てて口の中のものを飲み込んで、それから少し照れながら、モモンの実を男の手から口にした。口内に広がる甘い味が、いつまでも纏わりついていた緊張を解いていく。
    「美味いよ、オレの知ってるモモンの味より、もっと美味い」
     ほっと安心した顔で告げると、男はとても嬉しそうに笑った。金色の瞳が喜色に滲むと、まるで太陽みたいだな――そう感じながら、ライハンは、やっぱり彼の名前を知りたいと思った。

         ◆

    「寝ないの……?」
    「キミはもう寝ていいんだぞ、明日もオレに分かることは教えてやるし、行きたいところがあれば案内しよう」
     陽が落ちて、辺りのポケモン達が寝静まっても、男は焚火の傍から動かない。男は、パワースポットのこと、ポケモンの「巣穴」のこと、ブラックナイトと呼ばれる伝承……ガラルのことをなんだって話してくれた。ライハンとて勉強熱心な学生であったので、ここへ来るまでにガラルの歴史や自然については多くを学んできた。それでも、男は本にも載っていないような話を沢山聞かせてくれた。今はもう、大自然に飲み込まれてどこにあるかも分からなくなってしまった「まどろみの森」と呼ばれる場所のこと、どこの巣穴ではどんなポケモンが沢山現れて、その名残に基づいたポケモン達の生息地の分布、特に詳しく熱心に語ったのは、かつてガラルで大いに賑わったポケモンリーグの話だった。
    「面白そう! いいなぁ、オレさまの地方には、リーグが無いんだ……」
    「楽しいぜ、強い奴らと戦えるのは、とても」
    「……まるで、その千年前のリーグに居たみたいな言い方するんだな」
     男は、答えをはぐらかす時に決まって困ったように笑う――たった半日の間に幾度と曖昧な笑顔を見てきたライハンは、そのことにとうに気付いていた。
    「またそうやって笑って誤魔化す、あんたって秘密主義なんだな」
    「そういうわけでは……、んん、キミに、こわがられたくないんだ」
    「意味わかんないよ、オレさまもう寝るから、あんたも寝るならテントに入るくらいは許してやるぜ」
    「ありがとう、オレはもう少し星を見てから眠るよ」
     ライハンはつんと尖った鼻でふんとそっぽを向いて、テントに入っていった。寝袋で寝るのは、ジュニアスクールでの課外授業以来だと言う。そんな青年が、ひとりで険しい自然に阻まれたこの土地にやって来たことに、男はどうしても意味があるような気がしていた。
    「キバナ」
     星を見て呟く声は、焚火の中で枝が弾けるほどの小さな音だった。忘れてはいけない――そう思いながら、男はいつもその名前を繰り返し口にする。

         ◆

     翌朝、昨晩寝る前に見た時とまったく変わらない姿で火の前に座っていた男に、さすがにライハンも怪訝な表情を隠せなかった。いよいよおかしい。食事もしないし、眠りもしない、本当に人間かどうかも怪しい。
    「なぁ、あんたもしかして……」
    「おはようライハン。……もしかして、なんだい?」
    「アンドロイドとかそういうやつ?」
     男の眼が丸く見開かれる。それからたっぷり睫毛の生えた下目蓋がひくりと震え、くしゃりと笑った。
    「アンドロイドか! そうだな、そういうことにしておいてくれ、だから眠らないし、食事も要らないんだ」
    「なんだよ! オレさま本気で聞いてるのに!」
    「ああ、怒らないでくれライハン、オレはキミが来てくれて嬉しいんだ、本当に、会えて嬉しい」
     臍を曲げてしまうライハンの身体を、男が抱き締める。この時やっと、ライハンは男の異常性に気が付いた。ずっと火の傍に居たというのに、身につけている服も指先も、自分に触れる箇所全て、まるで温度を感じないのだ。仮に彼が自分が予想したようなアンドロイドならば、少なくとも少しくらい焚火の温度が移っているはずだ。ライハンはぞっとして、男の肩を押し返す。
    「あんた本当に何者だ!? オレに構って何がしたいんだ!?」
    「ライハン……」
     男はすぐに腕を緩めたが、どうしたらいいのか分からない様子でライハンを見詰めていた。傷付いているような、それでいて諦めているような、とにかく寂しい表情――ライハンはちっと舌打ちして、それからモンスターボールを手にして男の前に立った。

    「あんたトレーナーなんだろ、それならオレさまと勝負しろ、オレさまが勝ったら、あんたの秘密、全部話してもらうぜ」

     ライハンが啖呵を切る。すると、まるきり頼りない子供のような表情だった男の顔に、気力が漲っていく。男もまたモンスターボールを握り締め、そして大きく頷いた。

    「ライハン! キミはオレに会うためにここへ来た、間違いない! すぐに行こう、バトルタワーなら野生のポケモン達にも邪魔されない」

     男の冷たい手がライハンの手を掴む。表情も、声も、見詰めてくる瞳だってこんなに熱いのに、どうしたって温度を感じられない指先が、あまりにもちぐはぐだった。

         ◆

    「キミの手持ちはフライゴン一匹か、オレはドラパルトにギルガルドがいるが……」
     一匹を選ぶならばドラパルトだろう、男は一方のボールを握りながら考えたが、ふと、視線の先に佇むコータスに気が付いた。
    「……コータス、キミの力を貸してくれ。どうだろう、彼の力になってくれないか」
    「でも、このコータス人のポケモンなんだろ? オレの言うこと聞くかなぁ……」
    「このコータスのトレーナーはな、キミにそっくりな男だったんだぜ。それはもう、声も見た目も、その挑戦的な性格も!」
     生きているのか疑ってしまうほど動かなかったコータスが、返事の代わりにのっそりとライハンの足元へ歩み寄る。暖かい身体からじわじわと白い熱気が噴き出し、背中に生えていた植物はたちまち消し炭となった。コータスの「とくせい」は「ひでり」だ。射し込む太陽光がにわかに強くなり、男の瞳の中にちらちらと火の粉が散っているようだった。

    「オレに力を貸してくれるのか? ありがとうコータス、負けないぜ、いこう!」
    「ルールは二対二のダブルバトル、さぁ、熱いバトルをはじめよう!」
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    utako12411

    MAIKINGあれから1000年後──朽ちたバトルタワーで誰かを待ち続ける王様の亡霊に、懐かしい人によく似た青年が挑戦者として挑み続けるようになる…そんなお話。ベースはダンキバ。ガラル自然保護区――それは、自然の力が文明を淘汰した世界。およそ千年前、数多のパワースポットから湧くエネルギーを利用して独自の繁栄を遂げたガラル地方だが、今は緑に覆われ、野生ポケモン達の楽園となっている。かつてワイルドエリアと呼ばれ、人々の手で管理されていたガラル地方の力強い自然が、誰の支配下に置かれることもなくどこまでも広がっている。深い森、広大な荒野、険しい雪山、霧の濃い湖……それらに囲まれるようにして聳える、朽ちた塔。ガラルの繁栄の象徴とも呼ばれたテクノロジーの結晶も、千年の間に足元から這う植物に覆われ、今では緑のブーツを履いた格好だ。

    「見えた、バトルタワーだ」
     かつてそのような名前で呼ばれていたこともあった、朽ちた塔を目指して飛ぶドラゴンポケモンが一匹。そして、その背中に乗った青年が小さく呟いた。塔の窓ガラスは白く汚れ、暖かな陽射しを浴びると、ぼうっと発光しているように見えた。
     青年を乗せたポケモン――フライゴンが高く鳴く。窓ガラスが大きく割れた個所から塔の中に入り込み、罅割れた床の上に降り立つ。背中からひらりと身軽に飛び降りた青年は、フライゴンの頭を抱き寄せるようにし 7652

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