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    ぱしぇりー

    @paxueli

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    ぱしぇりー

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    いろいろ可哀想なオッドくんのはなし。整備兵ズ。

    「お前のは金がかかり過ぎる」
    「長期的に見たらこちらの方が安上がりです」
    「すぐ壊れるんだ、長期的もクソもあるかよ」
    「耐久性も上がります」
    「艦を壊しまくるアイツらの前じゃァ、耐久性なんて塵とおんなじなんだよ」
    「前回これを使った時は持ち堪えたじゃないですか」
    「それは指揮官が良かったからだろ。敵艦も少なかったし、運良く腕のいい整備兵が乗ってたし、帰還も早かった」
    「この艦の巡視の範囲を考えれば、今回のものより大きな破損はないとみていい筈です」

     同じ師匠を持った二人だが、仕事の方針は殆ど真逆。そのことには最近になってやっと気がついた。最初はケンカが好きなのだと思っていた。
     足して割って、ぶつけ合って、生まれた妥協点が最高の着地点だと信じている、ということだけは共通していて、議論はいつも白熱する。この仕事の知識が増えるたび、彼らが予算、技術水準、経験、その他数えきれないほどの要素にもみくちゃにされながら最善の策を探していることがわかるようになる。特に予算の問題は深刻そうだ。

    「オッドは?どっちがいいと思う?」
     そして、毎度のことながらこちらに飛び火する。オッドのデスクはコーグ伍長の隣。ジン曹長のデスクはひとつ前の列。伍長は孤軍奮闘タイプだが、曹長は味方を増やしたがる。
    「私は設計家ではないのでわかりません」
    「この間教えてやっただろう」
    「忘れました」
     曹長の眉間の皺が増える。勿論覚えているが、覚えているだけであって良し悪しなどわからない。比較検討できるほどの知識はオッドにはまだない。何より、どっちも怖いからどっちにもつきたくない。
    「もう一度説明しましょうか?」
     新人教育に定評のある伍長はすぐさま紙とペン、研修用のファイルを取り出す。二つの案の概要、長所短所を書き出して、オッドの机へすべらせる。曹長がそれを覗き込み、伍長はペンで指し示しながら話を続ける。オッドは忘れたと言った手前断るわけにもいかず、淡々としていながら要点は逃さないその説明にただ頷く。
    「なあ、これならあっちの案で解決できるんじゃなか?」
    「確かに……しかし、ここはどうするんですか?」
     紙に書き出すことにより問題が明確になり、一歩前進できたことは喜ばしいとは思う。しかし、私を間に挟む必要性はどこにあるのだろうか。最初から二人でホワイトボードを相手にすればいいのに。もう帰りたい。
     オッドの気持ちなどつゆ知らず(わざとなのではないかとも思ってしまうが)議論は続く。
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