たった五つの唐揚げで、どうしてこんな値段になるのだろう。元帥が衣をつけているのだろうか。居酒屋は簡単にお金が溶ける。メニューの写真より貧相に見えるそれを口に入れながら、オッドはそんなことを考えていた。
酒に払う金はないから、居酒屋にも縁がない筈だった。今は机に突っ伏している上官が「奢ってやるから付き合え」と言うまでは。
この上官……ジン曹長がオッドを飲みに誘うのは、彼が懇意にしているコーグ伍長は既婚で遅くまで付き合えないし酒も飲まないらしいから誘いづらいからだろう、とオッドは推測している。だからといって自分を誘う必要があるのだろうか、という疑問は解決できないが、この際どうでもいいことだ。曹長はどんな店に行っても好きなだけ食べさせてくれるし、酒をあまり飲まないオッドに悪い絡み方をしない。ひもじい二等兵はひとときの贅沢を求めてありがたくご馳走になっている。
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