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    kouduki_tiger71

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    kouduki_tiger71

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    モフモフウォー日記開催おめでとうございます!
    一生懸命なモフドラと、モフドラのことが大好きなモフロナ君の話
    ドラロナもいる

    スタンプ、感想など頂けたら嬉しいです→https://wavebox.me/wave/4vgwpwbnhm2mc5si/

    モフロナの好きなもの!「ぴ、ぴす!」
    「きゅ?」
    「ぴす! ぴ、ぴすぴす!」
    「きゅ……きゅあう、きゅっ」
     ソファーに座って、ちらちらとモフたちの様子を窺う。今日もまた、モフドラが一生懸命整えた寝床に、モフロナを招こうとしていた。モフロナはモフドラをちら、と見てから、誘われたふかふかの寝床に目を向ける。近付いて、すんすんと鼻を鳴らしているのを見て、今日こそいけるんじゃないか? と思っていると、何故かモフロナはモフドラを毛布の中へと押し込んでいった。モフロナは困惑げにぴすぴすと鳴くモフドラを無視して、花の形に折り畳まれた厚手のタオルを開き、更に重ねていく。
     こんもりと山になった様を見て、モフロナは満足そうに「きゅ!」と鳴いた。そうして、ぽてぽてと廊下の方へと歩いていく。
    「ブエーーー!」
    「あー……またか」
     モフロナの姿が見えなくなり、十数秒。ばたん、と大きな音がしたかと思えば、すぐにドラルクの叫び声が聞こえてくる。ややあって、戻ってきたモフロナは真っ黒な布を咥えていた。モフロナはそれを自分の寝床に放って、ぎゅむぎゅむと押し込んでいく。
    「ぴ、す、ぴ〜す〜!」
     か細い声ともに、山が揺れる。見れば、モフドラがどうにか顔だけ覗かせていた。もぞもぞと動いた拍子に、一番上のタオルがひらりと落ちる。反射的に拾おうと手を伸ばすも、それより先にモフロナが拾い上げ、また色とりどりの山へと戻してしまう。
    「ぴす〜! ぴ、ぴす、ぴす……!」
    「きゅ、きゅーう、きゅ」
     モフロナはまたしてもモフドラの訴えを無視して、山のてっぺんをぐいぐいと押した。落ちないように、というつもりなのだろうが、一番上に乗っているのは少し重みのある毛布である為に、そう簡単に崩れはしないだろう。
     モフロナは確認するようにぐるりとモフドラの周りを一周すると、自分の寝床に押し込んだ黒の中へと潜り込んでいった。そうしてすぐに、気持ち良さそうな寝息がくうくうと聞こえてくる。
    「モフ造!」
    「もう寝た」
    「ああああもおおおお!」
     ばたばたと大きな足音を立てて、ドラルクがリビングに戻ってくる。その背に、見慣れたマントはない。ちら、ともう一度モフロナがくるまっている布に目を向ける。ぐちゃぐちゃに丸められたそれは、やはりドラルクのマントだった。朝には返してもらえるだろうが、またしわまみれになってるだろうな、とぼんやりと思った。
    「ぴす、ぴす……」
    「はあ、全く……ん? なんだ、また押し込まれてるのか」
     震えている鳴き声に気付いて、毛布に埋められたモフドラを見下ろす。モフドラは寂しそうな顔で、ドラルクのマントにくるまっているモフロナを見つめていた。
     モフたちの為に用意した丸いペットベッドはふたつ。紫はモフドラに、赤はモフロナに、とロナルドが色違いで買ってきたものだ。ドラルクには「ひとつで良かったんじゃない?」と言われたが、モフたちは迷うことなくそれぞれの色を寝床にしてくれた。丸まっていたり大の字だったり、思い思いの寝相ですやすやと眠るモフたちは悶えるほど可愛かった。
     ほら見ろ、と勝ち誇った顔でドラルクを見やる。すると、ドラルクは少しだけなにかを考えるような素振りを見せるも、勝手に一人納得したのか「まあ、今はいいか」と、よく分からないことを呟いていた。
     しばらくして気温が下がり、モフドラは毛布にくるまっていてもぷるぷると震えるようになっていた。ゆえに、暖房を強くして、毛布も増やしてやらないと、と思っていたのだが、ある日モフロナ自らモフドラの寝床に潜り込み、二匹一緒に眠るようになったのだ。
     けれど、そんな愛くるしいモフたちを微笑ましく眺めていたのも束の間、なんの前触れもなくモフロナは自分の寝床でしか眠らなくなった。そればかりかモフロナはドラルクのマントを奪い、それにくるまって眠るようになったのだ。モフドラがどれだけ必死に縋っても、それは変わらなかった。起きている時は一緒に遊んでいたり、引っ付いていたりもするのだから、喧嘩しているわけではないはずなのだが。
     それからだ、モフドラが自分の寝床を整え、飾り立てるようになったのは。肌触りのいい柔らかな毛布や花の形に折り畳んだタオルでペットベッドを飾り、一生懸命モフロナを招こうとするモフドラのなんて健気なことか。けれど、モフロナがモフドラの誘いに乗ることはなかった。その理由が分からない為にロナルドには為す術もなく、ただ見守ることしかできないのがもどかしかった。見るにみかねてドラルクに相談してみても「ま、大丈夫でしょ。いずれ気付くさ」としか返ってこない。なにが大丈夫で、なにに気付くというのか。堪らず「薄情者!」と叫んで砂にしたドラルクを窓からばら撒いてやったのは、つい最近のことであった。
    「なあ、なんとかなんねえのかな」
    「なんとかって?」
    「いや、だってさ」
     モフたちから、ロナルドの隣に腰を下ろしたドラルクに視線を移す。ドラルクは膝を抱え込むと、わざとらしく身体を震わせた。マントを奪われて寒いのだろう。しょうがねえな、と暖房を強くしてやる。
    「お、気が利くじゃないか。さすが私の下男」
    「誰が下男じゃ」
    「うぶっ! せっかくあったまろうとしてるのに殺すな!」
     ずずず、と砂を集めて人型に戻ったドラルクは、ぴったりとロナルドに身体を寄せてきた。左半身がひやりとして、思わず身震いする。
    「はあ、あったかーい」
    「ちっ」
     思わず舌打ちをして、じろりとドラルクを見やる。ドラルクはにまにまとした顔をして、下から覗き込むようにロナルドと視線を合わせてきた。
    「んふふっ。ほーんと、そっくりだよねえ」
    「あ? そっくりって、誰と誰が?」
    「君とあの子が、だよ」
     ドラルクがなにを言いたいのかよく分からず、首を傾げる。確かにモフロナはロナルドによく似ている。けれど、それがなんだというのか。
    「私が教えてあげてもいいんだけど。でも、モフドラは私そっくりなわけだし」
    「うん?」
    「誰かに教えてもらうなんて、まっぴらなんだよね。まして、愛する人のことなら、尚更」
     ドラルクはそう言うと、にんまりと笑った。思わせぶりな態度に、苛立ちが募る。
     モフたちは、自分たちによく似ている。それがヒントであることだけは分かったが、いくら考えてみても、ロナルドには正解を導き出すことができなかった。


     モフドラがモフロナを射止めるべく邁進して一週間。今日もモフドラは諦めることなく、敷き詰めるものの色や肌触りを吟味していた。その様子を横目で窺いながら立ち上がろうとしたところで、ロナルドはテーブルの足に躓いてたたらを踏んだ。
    「ぴすー!!」
     咄嗟にテーブルに手をつくも、傾いたマグカップから中身が溢れ落ちていくのがスローモーションのように見えた。びしゃっ、と水音がしたのと同時に、モフドラの悲鳴が耳に届く。
    「えっ、あっ!?」
     マグカップの中身はコーヒーだった。半分以上入っていたものが、今はすっかり空になっている。そして、それを溢した先にはモフドラが並べていたタオルと毛布があった。幸いペットベッドまで飛沫は飛んでいなかったが、それ以外はコーヒーを吸って、茶色く色が変わってしまっている。
    「ぴ、ぴす、ぴす……!」
    「あー! 待って待ってモフドラ! お前も染みになっちゃう!」
    「ぴすー!」
     慌ててモフドラを抱き上げて避難させる。もがくモフドラを抱えたまま一枚一枚めくって確認していくが、やはりどれも、どこかしら汚れてしまっていた。
    「ぴっ、ぴう」
    「ご、ごめんな、モフドラ。ほんっとにごめん!」
    「ぴ……ぴしゅ……」
    「えっ、あ、あっ!? ど、どらこー!!」
    「うるっさい! 少しは大人しくしてられんのか!」
     今にも泣き出しそうなモフドラに、どうしたらいいのか分からなくなる。どれだけ謝ってもコーヒーの染みは消えないし、綺麗にするやり方もロナルドには分からない。どうすることもできず助けを求めて叫ぶと、すぐにドラルクが戻ってきた。ドラルクの腕に抱えられているモフロナはきょとんとした顔をして「きゅ?」と首を傾げている。
    「ちょっとなに、どういう状況?」
    「ううっ……! ど、どうしようどらこー!」
    「うわっ、ほんとになに……ああ、なるほど。コーヒー溢したのか」
     ドラルクは床を見やり、すぐに理解した。「とりあえず、モフロナも抱っこしてて」と言われるがまま、素直にモフロナを預かる。そうすればドラルクは踵を返し、廊下の奥へと消えていった。けれどすぐに戻ってきて、古くなったタオルでまだ染み込んでいないところを拭き取っていく。
    「これでよし、と。で、えーと。これと、これ、あとこれもか。こっちはそのまま洗濯機でいいな」
    「ぴ、しゅ」
    「ど、どらこー……」
    「はいはい、大丈夫だから。そんな泣きそうな顔しなくていいよ」
     ドラルクは染み抜きが必要なものとそうでないものとを分け、それらを持って洗面所へ向かっていった。モフドラが気にするので、モフたちを抱えたまま、ロナルドも後を追う。そうっと中を窺えば、ドラルクがコーヒーまみれのタオルに洗剤を垂らし、とんとん、と優しく叩いていた。
    「……なあ、それ、ほんとに綺麗になる?」
    「なるってば。溢してすぐだし、こうすれば落ちるから」
     ほら、とドラルクが手にしていたタオルを見せてくる。さっきまで茶色く染まっていたのに、今はもう本来の白色に戻っていた。ドラルクは他のタオルも同じように、てきぱきと染み抜きしていく。その様子を後ろからじーっと覗き込んでいると、ドラルクの肩が小刻みに揺れ始めた。
    「ドラ公?」
    「ん、ふっ……んんっ、だ、大丈夫、だから、ふふっ」
     ドラルクは堪え切れず、声まで震わせている。初めこそその理由が分からなかったが、ロナルドとモフドラから刺さる視線と落ち着きのない気配によるものなのだろう。途端に恥ずかしさが込み上げてきて、ぶわっ、と顔が熱くなる。殴りつけたい衝動に駆られるが、今はモフたちを抱いているし、そもそもの原因はロナルドにあるのだ。後始末をさせておきながら、身勝手に殺すわけにはいかない。
    「ぴす、ぴす……」
     不安そうに鳴くモフドラに、はっとした。「ほんと、ごめんな、モフドラ」ともう一度謝る。コーヒーを溢してしまったのはロナルドの不注意によるもので、モフドラはなにも悪くないのだ。
    「よし、これでいいだろう。ほら、綺麗になった」
    「ぴ!」
    「よ、よかったあ……!」
     ドラルクが染み抜きを終えたタオルを広げて見せてくれる。どれもコーヒーの色は綺麗さっぱり落ちていた。ほっと胸を撫で下ろすと、モフドラも安心したのか、身体からくたりと力が抜けた。
     ドラルクはタオルと毛布をまとめて洗濯機に入れ、スタートボタンを押した。洗濯機はすぐに、ごうん、と低い音を立てて回り始める。ドラルクがモフドラの頭をぐりぐりと撫でてやると、モフドラは嬉しそうに「ぴう」と鳴いた。けれどすぐに慌て出し、ロナルドの腕から抜け出そうともがき始めた。急にどうしたのか分からずドラルクと顔を見合わせるも、ドラルクにもその理由は分からないようだった。
    「え、なに? モフドラどうしたんだ?」
    「ぴ、ぴす!」
    「ちょっ、危ないって!」
     落としてしまわないように、そうっとモフドラを下ろすと、モフドラはそのままリビングへと駆けていった。後を追うように、ロナルドもドラルクと揃ってリビングへと戻る。
    「あっ、あー……そっか、全部駄目にしちゃったから……」
     モフドラは空っぽの引き出しの前で、ぺたんと座り込んでいた。モフドラのタオルや毛布は、全て洗濯機の中である。新しいものの替えはない。あるのは昨日モフドラが使っていたものだけだった。
     モフドラは柔軟剤まで選んで、常に洗濯したてのタオルや毛布で寝床を整えていた。ペットベッド自体にも、毎日消臭スプレーをかけるほど徹底していたのだ。ゆえに、使ったのが一日だけとはいえ、洗濯前のものは使いたくないのだろう。
    「きゅ! きゅあう!」
    「えっ、んぐっ」
     もう片方の腕に抱えたままだったモフロナが、突然下ろせとばかりに暴れ出した。ロナルドが膝を折る前に、モフロナはぴょんっとロナルドの腕から飛び出していく。
    「きゅ」
     モフドラを慰めようとしているのかと思いきや、モフロナはモフドラをじーっと見つめると、迷いなく畳んであったタオルと毛布の方に近付いていった。モフロナはそれらを抱え込んで、顔を埋める。すんすん、と匂いを嗅ぐと、満足そうに「きゅ!」と鳴いた。
    「ぴ!? ぴす! ぴーすー!」
    「きゅう、きゅ、きゅあう」
    「ぴす!?」
    「きゅ、きゅう」
     モフロナはタオルも毛布も全て纏めてモフドラの寝床に放り投げると、その中へと潜り込んでいった。その様子をモフドラはぽかんとした顔で見つめていたが、すぐに我に返って、タオルを引っ張った。けれどいくらモフドラが必死にタオルを剥がそうとしても、モフロナの握力には到底勝てやしない。それどころか、既にモフロナは心地良さそうに微睡み始めていた。それでもモフドラは諦めず引き剥がそうとしていたのだが、ついにはむっとしたモフロナがモフドラの手を引き、寝床へと引っ張り込んだのだ。
    「きゅあう!」
    「ぴ……! ぴう、ぴす」
    「きゅ、きゅあう」
    「ぴ!?」
     モフロナはぎゅうっとモフドラに抱き付くと、満足そうに一声鳴いた。それからなにやらこしょこしょと話し始め、突然モフドラが驚いたように声を上げる。それきり話し声は聞こえてこず、気になってそうっと覗き込めば、モフロナの方はまたうとうとし始めていた。反対に、モフドラは固まって動かない。ややあって、もぞもぞとモフドラもモフロナに身体を寄せると、嬉しそうに破顔して目を閉じた。ぎゅうぎゅうに引っ付いて眠る様は堪らなく愛くるしく、ようやくモフドラの念願が叶ってロナルドも嬉しくなった。けれど、ふと思ってしまったのだ。どうして今だったのか、と。
     ドラルクの袖を引き、小声で尋ねる。するとドラルクはきょとんとした顔をして、目を瞬かせた。
    「え、まさか、まだ分かんないの?」
    「……分かんねえから聞いてんだろ」
     むっとして、ドラルクを睨み付ける。勢いそのままに拳を振るいたかったが、くうくうと気持ち良さそうに眠っているモフたちを起こすわけにはいかない。唇を噛んで、ぐっ、と堪える。
    「あのね、モフロナは、モフドラの匂いが好きなんだよ。だから、柔軟剤のフローラルな匂いしかしないものになんて、興味はなかったってこと」
     ドラルクはそう言うと、くすくすと笑った。けれどすぐに揶揄うような笑みは、欲を孕んだ笑みに切り替わる。薄い唇が弧を描き、つぶらな赤が色濃く輝いた。
    「そういうとこ、私の匂いが好きな君と、ほんとそっくりだよね」
     そう耳元で囁かれた言葉は蕩けるように甘く、ロナルドを捉えたのだった。
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