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    square_osatou

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    Sky始めたよの話
    姉まくらさんトコのヂュリ助ちゃん視点になっちゃった(許可済み)

    名もなき光大きな流れ星がひとつ、またこの世界のどこかに落ちた。この輝きは“星の子”が新たに生を受けたときに放つ光だ。
     空を横切る光の粒を見たヂュリ助は、光の落下地点へと向かった。
     
    ***

     静かな浜辺に星の子が一人、倒れていた。背丈はヂュリ助よりも頭ひとつ分ほど小さいだろうか。しばらく観察していると、星の子はむくりと起き上がり、こちらには目もくれずぴょんぴょんと跳ね回った。ひと通り身体を動かし終わると、今度はどこへ行けばいいのか分からないといった様子で、星の子は右往左往し始めた。
     見かねたヂュリ助は、見知らぬ星の子に近づき友好の印を差し出した。星の子はたどたどしい所作でそれを受け取ると、不思議そうにそれを眺めている。
     友情の蝋燭に照らされた星の子をよく見ると、飛ぶためのケープすら身に纏っていないことに気がついた。

     ――キミ、どこから来たの?

     ……?

     ヂュリ助の問いかけに、星の子は首を傾げた。

     ――名前は?

     ……?

     答えるどころか、この星の子は鳴くことすらしなかった。コミュニケーションの取り方が分からないのだろう。ヂュリ助は頭を抱えた。
     とにかく、この孤島と呼ばれるエリアを出てキャンプ地にしている島へ連れて行く方が良さそうだ。
     そこで色々と教えてあげよう。
     ヂュリ助は星の子に手を差し伸べた。

     すかっ。
     
     伸ばされた手を握ったかと思えば、その手を離す。また握る。離す。
     今度はヂュリ助の後ろに周り込み、うろうろとしている。
     この星の子は絶望的に不器用らしい。
     伸ばされた手を取れない星の子など、初めてだった。
     しばらく手を伸ばし続けていると、ようやく手を握られた。

     ――着いてきて、案内してあげる。

     星の子の手を引いて、ヂュリ助は孤島の隅々を回った。
     星の子になくてはならないケープも、手に入れて装備させた。まごうことなき“雀”の姿がそこにあった。

     ――これで立派な雀ちゃんだね。

     ……、たけ……。

     ――ん?

     ……これ、雀というより……、しいたけ……。

     ――しいたけ。

     初めて口をきいたと思えば、ケープ姿が雀ではなく椎茸に見えると言い出した。
     そう言われてみればそうかもしれないが、もっと前に言うことがあったのではないだろうか。
     いろいろな疑問を抱きつつも、ヂュリ助は一度面倒を見ると決めた星の子を放っていく訳にはいかなかった。

    ***

     しばらく行動を共にしていると、この星の子が独特の感性を持っていることがわかった。
     光の子を地蔵、精霊の記憶を即身仏と呼ぶなど、他ではあまり聞かない呼び方をする。
     そして、ずっとヂュリ助が手を引いているからかもしれないが、滅多に鳴かない。たまに何かをしようとして、「ぱぷ……」と小さく鳴くのを見たことがあるぐらいだ。
     あの蟹を目の前にしても、動きが気持ち悪いという顔をするだけで何もしない。むしろ、気を抜いて激突されている。
     もちろんヂュリ助は大声で鳴くと蟹を退けられることを教えたが、星の子はそれを実行しなかった。

    ――どうしていつも黙ってるの?

    ……恥ずかしいから。

    ――恥ずかしい?

    ……みんなに声を聞かれるのが、恥ずかしい。

     たしかに、星の子が鳴くと遠くまでその声は届くが、それを恥ずかしいと思ったことなどなかった。
     星の子は精霊や他の星の子とコンタクト取るために積極的に鳴くべきだ。なのに、それが恥ずかしいという。
     そういえば、この星の子は感情表現もあまりしていない。
     今まで出会った星の子というのは、感情表現が豊かなタイプが多い。積極的に感情表現を学び、コミュニケーションを取る。そういうものだった。
     ヂュリ助は目の前の星の子も当然そういうタイプだと思っていたし、やり方さえ分かればそうなっていくと思っていた。
     もし、あのとき自分が気まぐれに助けに行かなかったら、この星の子はきっと草原あたりで彷徨い続けていただろう。
     とはいえ、喋りかければとりあえずの返事は返してくれる。ヂュリ助のことは信用している様子だった。
     最初はまともに握ることのできなかったヂュリ助の手も、今なら差し伸べればすぐに取ることができたし、新しく覚えた感情表現を披露してくれる事もあった。
     星の子はヂュリ助の連れていってくれる場所が新鮮で、もっと色々な場所に行きたいと思っていた。しかし、二人の旅には終わりがある。星の子はみな、その身を滅ぼされねばならない運命にあるからだ。
     それはヂュリ助も、この星の子も同じことで。

    ……ここには何もないの?

     激しい向かい風の中、星の子は問いかける。
     いつもは訪れた場所についての解説をしてくれるヂュリ助が、一言も発さずに星の子の手を引いているからだ。

    ――ここから先は、キミ一人で行かなくちゃいけない。

    ……?

    ――この先には辛いことが待ってる。でも、また一緒に旅をしたいと思ってくれるなら、何があっても戻って来られる。だから……。

    ……とりあえず奥に進めば良いんだね。わかった。

    ――怖くないの?

    ……んー、あんまり。

     驚いたことに、この星の子はこれから待ち受ける運命をあまり恐れていなかった。無知とはそういうことなのかもしれないが、それにしても軽い返事だった。その勇気にも似た無謀さを、失わなければいいけれど。ヂュリ助はそう願った。
     気がつけば、既に星の子の姿はなかった。

     ***

     ヂュリ助はキャンプ地にしている島で、星の子の帰りを待った。もしかすれば途中で心が折れてしまって、二度と戻って来ないかも知れない。それでも、ヂュリ助は信じて待っていた。
     あの子が帰ってきたら、盛大にお祝いしようと決めていたのだ。おめかしをして、友人も呼んだ。
     あとは、あの星の子さえ戻って来れば――……。

     その時、キャンプ地に大きな流れ星が落ちた。星の子が生まれるくらいの大きな輝きを放つ流れ星だ。

    ――もしかしたら。

     星の子が帰ってきたかもしれない。
     また旅がしたいと、その思いで原罪を乗り越えて来たのだ。輝く光の中から、見覚えのある星の子が顔を出した。
     
    ――おかえり!

    ……ただいま。って、なにそれ怖っ。

     激しく打ち上げられる花火や、新しい仲間に喜ぶ友人達、ヂュリ助のとっておきマスクを見て、星の子はただただ困惑した。
     ヂュリ助はお気に入りのマスクを怖がられたことにショックを受けていたが、星の子はそんな事はお構いなしに、用意されたテーブルにあるお菓子を頬張っていた。

     パーティがひと通り終わったころ、ヂュリ助は星の子に改めて問う。

    ――ところでキミ、名前は?

    ……?

     この星の子に、まだ名前はない。
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