あの時見た光 ――ヂュリッ、ヂュリリィ……ッ!
いつも通り、暗黒竜で遊ぶため捨てられた地を訪れていたヂュリ助だったが、トラブルを起こす特異な体質故、普段はなんともない闇の花が群生するポイントで足を取られていた。
身体が沈み、闇の花の根が身体に絡みつく。闇の花はヂュリ助のケープエナジーを養分だと思ったのか、積極的に根を伸ばしていた。
気がついた時には、ヂュリ助は身体の殆どが地中に埋まり、首だけが闇の花の間にちょこんと露出している状態だった。これでは誰かに見つけてもらうのも難しい。このままじわじわと光を吸い取られ、身を滅ぼすのか――。
ヂュリ助は必死でキャンドルの炎を点けようともがいた。だが、既に根がしっかりと身体に食い込んで身動きが取れない。
このまま光を散らすしかない、と覚悟を決めたとき。
……しゅううう、じゅー……。
誰かが闇の花を燃やしていることに気がついた。
――ヂュ、ヂューッ! もっと! もっと燃やして!
……焦らないで、いま燃やしてるから。
花の影で誰かがそう言った。
ヂュリ助は大人しく全ての闇の花が焼かれるのを待つ。ようやく全ての闇の花が焼き払われ、身体に絡まった根もすっかり溶かされた。
ヂュリ助を助けたのは、背がヂュリ助と同じくらいある、尖った耳をした星の子だった。
どこか見覚えのある面影を残しているが、ヂュリ助には検討がつかない。
……キミ、大丈夫?
――助かった。ありがとう。どうして分かったの?
……キミが困ってるのが見えたから。これから友達に会いに行くんだろう? じゃあぐずぐずしていられないな。ほら、待ち合わせに遅れちゃう。
――あ、あの! 助けてくれて、ありがとう……。
……どういたしまして。じゃあ、気をつけて。
そう言い残すと、星の子は飛び去ってしまった。
背中に光るのはたった四つか五つの星だったことを、ヂュリ助は深く記憶に刻んだ。
***
――ってことがあったんだよ。
……へぇ、キミでもどうしようもなくなる事があるんだね。
――むしろしょっちゅうよ。まあ、大抵は自分で解決出来るけどさ。今度あの星の子に会えたら、ちゃんとお礼をして、名前が聞きたいな。
……会えるといいね、その子に。
いつも通り、ママシュ・マシュの手を引くヂュリ助は、先日の出来事を話して聞かせた。
ママシュはまたリサイズドリンクを飲んだのか、以前会った時よりも縮んだような気がする。
……あーあ、ぼくもキミみたいなすらっと背の高い星の子になってみたいなぁ。ぼくの種族はみんな背が低いから、高身長は憧れなんだ。
――マシュはそのままでいいよ。
……なんでさぁ。いいじゃない、憧れたって。
――可愛いままでいてよ、しいたけ。
……もうしいたけじゃないって言ったよね!
ママシュの腕が千切れんばかりに連れ回したあと、ヂュリ助はママシュのリサイズドリンク代を稼ぐための原罪ピクニックに付き合わされることとなるのだが、今のヂュリ助にそれを知る術はなかった。