あいというなののろいあなたは誰にも愛されてはいけない。
あなたは誰も愛してはいけない。
あなたは誰にも愛されない。
――それは、愛という名の呪い。
***
あなたに呪いを掛けてあげる。――彼女はそう嗤った。
***
【一】
「ふぁ……」
欠伸と同時に指先が虚を掴んだ。
「ん?」
触れるはずだった温もりがねぇ。その事実に、眠気に閉じていきそうになっていた瞼をうっすらと開ける。まだ茫洋とした薄闇が残っていて、部屋に漂う空気は冷たい。夜が明けるにはもう少し掛かるだろう。
(んだ、あいつもう帰ったのか?)
あいつ――ジャミル・バイパー。
スカラビアの副寮長であるそいつと、俺はセックスをした。
(まぁ事故のようなものだがな)
偶々、おんぼろ寮のゲストルームに呼び出されたかと思いきや、二人きりで閉じ込められた。どうせ話しかけてこねぇだろう、と思っていた。以前に食堂でちょっと揶揄ってやったことがあるのだが、それが気に食わなかったらしく、その後、俺と顔を合わせると目を合わそうともしなくなったからだ。
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