5月の柚木の日(間に合えば)の話 とぼとぼと屋敷の階段を下りながら、あまねはぐすんと鼻を鳴らす。その手には0点のテストが握られていた。
「……お母さん、怖かったなあ」
あまねは運動は得意だけど、テストはどれだけ勉強してもいい点が取れたためしがない。 一方で弟のつかさは成績優秀。いつも丸しかついていないテストを嬉しそうに見せてくるのだった。
ちらり、と踊り場の窓から外を見る。つかさが庭で緑の髪のメイドと遊んでいるのが見えた。あまねは小さな手で窓ガラスに触れ、外をのぞく。
「つかさはお勉強が得意でいいなあ、うらやましい」
ぐすっと鼻を鳴らして、あまねはうつむいた。
「こんな俺じゃ、ヤシロも遊んでくれないよ……」
はあ、とため息をつく。握っていたテスト用紙を破ってしまいたいくらいだ。そんな