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・流血シーンあり
・平手打ちされるけど愛です
・五も家も少し冷たいけど、心配してるんです。愛ゆえ。このあと仲直りして夏を取り戻しに行く。
・ツリーになってる『寝てる時しか術l式が使えない🌸』の、夏が離l反したのを修正しようとするシーンの一部。
・夏離反したて
任務が終わり、保健室に足を運べば白いベットに寝たままの〇〇とその隣でコーヒーを飲む硝子がいた。昨日と何も変わってない。
「○○は?」
「今日も寝たまま。1度も起きない」
「あ、そ」
「私ちょっとトイレ」
硝子はまだ医者でもないのにずっと〇〇が起きるまで付き添ってたのか、クマができている。傑が離反を起こしたあの日、自分もかなりショックだったが彼女も相当ショックを受けていた。泣きじゃくり、一度元気になったかと思えばまた急に泣きだす。もう休んでいろ、と見兼ねた夜我センから自室待機命令を出されるほどに彼女は凹んでいた。まぁ、あいつメンタル弱そうだし。俺もそれどころじゃなくて気にも止めていなかった。
だけど、彼女は眠ったまま起きなかった。一向に姿を見せない〇〇を心配して見舞いに行った硝子から連絡が来て、様子を見に行って、今は記録4日目を更新している。
寝てる○○しかいな保健室は、秒針の音しか聞こえない。数日たって現実受け入れ初めてきた俺と硝子は多分もう、大丈夫だ。今だって決して納得してるわけじゃないけど、前を向き始めている。
でも寝込むほどショックの〇〇はきっと違う。
だからせめて、泣き虫で寂しがり屋の同期が起きた時に1人ぼっちじゃないように。多分硝子も同じことを思っているのだろう。
「いい加減起きろよ、寝坊助。いつまで寝てんだっつーの。もう3日目だぞ」
声をかけても、自分の声が虚しく響くだけだった。硝子が座っていたベット側の椅子に腰掛けて携帯を適当にいじる。なんか物理的に起こす良い方法ないかな。そう思いながら適当にいじっていると、彼女がみじろぎした。手を握ったら起きるとかねぇかな。恐る恐るバレないように手を握り、気付く。
なんかこいつ、術式使ってる。
その体の奥で渦巻く呪力と術式を見ようとして、ギョッとした。あれ、布団がなんか赤い。まるで、血が出てるみたいな。なぜ、どこから、?
手を握ったまま不思議に思い、その原因を探ろうとした瞬間、今度は勢いよく吹き出すように自分の顔にかかった。生温かい、広がる鉄の匂い。何だこれ。血飛沫、?
顔からポタポタと血が滴り落ちて、自分の手も、シャツも血に染まっている。
「っは!、ぁ」
「〇〇!大丈夫か!?」
直後、彼女は目を開いた。冷や汗をかき、恐怖に固まり瞳孔の開いた瞳。今もなお止まらない血。はくはくと震える唇。脳が判断するより先に体が動き、血が吹き出している首元を喉が塞がらないように気をつけながらグッと抑える。止まれ、止まれ。
この状況はそう、呪霊と戦って重症を負った人を前にした時と同じような、
「硝子!やばいッ!早く!早く来いッ!〇〇が!」
・
・
「…で、一体何があった。酷いよこれ。お前、まさか殺そうとした?」
「違う、俺じゃない!寝てんなーって見てたら急に血が吹き出した」
「意味分からない」
「俺も分からない」
彼女に治療をし、血に染まった保健室の惨状を他人事のように見る自分たち。
「傷は?何だった?」
「首が切れてた。いや、切られていた。お前が呼ぶのが早くてほんと良かったよ」
「まじで、意味わかんねー…」
「…取り敢えず、〇〇をそっちに運んだら五条も着替えなよ」
「そうするわ」
彼女は一瞬起きたものの、すぐに気を失うように寝てしまった。さっき派手に出血したからか、顔色がさらに白くなった彼女を抱き上げて隣のベットへ運ぼうとする。硝子が服を脱がせて着替えさせたから、すっかり綺麗になった。彼女が寝るのは血まみれのベットなんかではなく、この白く綺麗なベットの方が相応しい。静かに彼女をベットに寝かせようとして、異変に気付いた。
「?…あ?」
自分のお腹が温かい、気がする。いや彼女の体温で温かいのではなく、なんかそれ以上にヌルッとしてる、みたいな…。抱き上げている彼女のお腹を見て再び思考が停止した。じわじわ広がる赤い滲み。なんで、出血してる?
「硝子ォ!!」
「今度はなに」
「〇〇が、〇〇がまた血出てる!」
「はぁ?さっき治したばっか、り」
苦しそうな顔をする〇〇の腹部から血がドクドクと流れ出て、シミが大きくなっていく。
「は…?何で?」
「どうしよ、これ、」
「貸して!寝かせろ!」
そして彼女をベットに寝かせる。どうしたらいいか分からず右往左往する俺と、素早く彼女の全身状態をざっと確認する硝子。すると今度は、2人の目の前で彼女に頬にピッと傷がついた。彼女の頬から血が垂れる。
「……ほら、俺じゃない!」
「何が、起きてる、?」
そうしてる間に今度は胸の辺りから血がビュッと吹き出した。急いで服を捲ると腹部にあったのは銃で撃たれたよう跡だ。
「こいつ今、寝ながら術式使ってる」
「…このまま寝させたらまずい気がする、起こせ、何が何でも起こそう」
「〇〇!おい起きろ!!いい加減、目を覚ましやがれ!!」
頬を叩いても起きるわけもなく、硝子が治療する横で必死に〇〇を起こす。鼻をキュッと詰まんで、口も抑える。手荒だけど息が吸えなければ起きるはず。
「っ!っは、ゴホッ、はぁ、げほッ、はっ、」
「〇〇!大丈夫か!?何が起きてる!?」
「ぁ…えと、悟…?硝子…?あれ…?」
「もう寝かせねーからな。次、寝たらお前ぶっとばす。起きたまま治療受けてろ」
「ご…ごめん…いった!」
・
・
「で。どういうわけ?」
なんだかやけに居心地が悪くて、緊張しながらベットの上に座る〇〇。腹部と胸部だけでなく、顔の傷もすっかり綺麗に塞がれて今度こそ綺麗な服に着替えている。対して〇〇を問い詰めるように立つ悟と硝子は、未だピリピリと緊張した空気のままだ。
「…ごめん。特に硝子、迷惑かけちゃったね」
「別にいいから。そんなことより早く」
「…うん…あのさ、話すと長くなるんだけど」
実は2ヶ月前くらいに夏が離反する夢を見ていたこと。そんなはずはと思いつつ、怖くて夏を気にかけていたが実際に起きてしまったこと。正夢になってしまった、とショックを受けていたがもしそうならば、夢で修正すれば現実も変わるのではと考え夢で修正しに行ったこと。夏の離反のきっかけが星しょう体の任務ではないかと考え、2人を救いに行き、五条も一度倒された刺客にやられてこの有り様になってしまったこと。全てきちんと話した。
2人に迷惑をかけたのは申し訳ないと思うけど、でもやっと自分の術式が使えるようになって、今意味をなそうとしている。多分少し嬉しかったのだ。術式が使えず落ちこぼれだと、皆んなの足を引っ張っていた私が、皆んなの隣にやっと胸を張って立てる。だから浮かれていて、説明し終わった後も2人の顔が険しく暗いことに気付かなかった。
「あの最後に出てきた黒Tシャツの人、本当強くて。参った…すぐやられちゃう」
「…いや、参ったじゃなくて。お前、硝子が居なかったら今頃死んでたんだぞ。どうするつもり?」
「それは本当にごめん、ほんとにありがとう硝子」
「…」
「私もまさか夢で受けた傷が全部、リアルで受けてるとは思わなくて…」
「…」
「でもこれで分かったよ。私の術式は、多分夢を現実に持って来れる。だから、これなら上手く行けば傑も現実に、」
パシンッッ
乾いた音が響き渡った。叩かれた。頬が熱い。打たれるなんて初めてで、痛い。何で、誰が。ジンジンする頬を押さえながら振り返って見れば、真顔で平手打ちした硝子がいた。
「硝子…なんで…」
硝子はじっと見つめるだけで何も言わない。自分で考えろと、黒い目が言っている。代わりに口を開いたのは悟だ。
「…お前、何も分かってないだろ。死ぬとこだったの、本当にわかってんの?」
「…分かってるよ、だから」
胸ぐらをぐっと掴まれ、体が乱暴に持ち上がる。静かに怒りをこめた青い瞳が覗きこんで、わけも分からず呆然とした自分が反射した。
「分かってねぇよ!」
「…っ!」
「分かってるやつはそんなこと言わねぇんだよ」
「…」
「お前、俺と硝子がどんだけ心配したと思ってんの。傑の次はお前?はは、ふざけんなよ。同期が何人消えれば済むわけ。硝子にぶたれて当然だよ」
「〇〇。…正直、これは五条に完全に同意。〇〇、頭冷やしな」
ガラガラと、扉を開ける音を立てて2人は出て行った。
「はは…上手くいくと思ったんだけどな…呆れられちゃったかな…友達また減っちゃったかも…」
このあと〇〇が起きたことを知った夜我センが飛んできて、血塗れの保健室に頭を抱えるまであと5分。