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    新島颯太

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    新島颯太

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    鈴生り

    鈴生りギギ「俺たちの出会う前の事が知りたいだァ?」

    快晴の空の下で、とある6人はいつも通りロブの屋台前のテーブルに集まっていた。

    ローラー「うん!ギギとビビの!ほら、ぼくたちが出会ったのって、確かギギがゴミ捨て場に埋もれてたのが初めてだったから!どうしてゴミ捨て場に居たのか~とか!その前の話~!とか!聞いてみたいなって!ね!さんにんとも!」

    デュアル「…………。」
    トト「…………」
    おまる「……え~…えっ~と……
    …は、はい…!そ、そそそそそうですね…!!もちろんです!!!え、えと…ぼ、僕もちょうど聞きたいなぁ…と思っていたので……」

    …と、白いゲソのセーラー服を着た少年は目を泳がせ戸惑いつつそう答えた。

    ギギ「……ハハ~~ローラーチャァン見ろォ、お前以外はそんなに興味無ェらしいぜェ~~~?」
    ローラー「ええ!?そんな!?!?」

    ローラーはガタンと音を立ててその場を立ち上がり他の3人のことを見たがどうやら図星のようだ。
    1人の少年はヘッドホンをつけスマホをいじり、もはやローラーの話なんて聞いていない様子だ。

    トト「ンなもん聞いたってよ、どーせ借金取りの仕事でやらかしてゴミ捨て場に捨てられたとかそんなのだろ。」

    もう1人の黒ゲソのセーラー服を着た少年は呆れ混じりのため息をつきボソッっと言葉を零した。それにつっかかるようにしてギギの隣に居た男性が素早く返事をした。

    ビビ「兄さんが仕事で失敗なんかする訳無いだろ。もっと考えてからものを言え、クソガキが」
    トト「んだと!!!!!!!!」

    トトはガタンと音をたてビビの胸ぐらを掴んだ。それを見たギギは楽しそうに笑いながら手馴れた手つきでトトを静かに座らせた。

    ギギ「ハハハ~~~まァまァお前らァ、ンな事で喧嘩すんなよォ~~。落ち着けって、なァ~~~?
    俺だって皆と同じインクリングなんだァ、そりァ失敗もするぜェ~~~?」
    ビビ「…そんな事無いよ、兄さん。コイツの話なんか聞かなくていいよ。兄さんは失敗なんかしない、かっこいいからね」
    ギギ「………
    ハハ~~ありがとなァビビィ~~~お前がそう言ってくれて俺は嬉しいぜェ~~~~」

    ギギは弟のビビに褒められ嬉しそうにビビを抱きしめ頭を撫でた。一方で抱きしめられ頭を撫でられたビビも非常に嬉しそうであった。
    その光景を見たトトは、少し引き気味な表情で目の前に座っているギギビビを冷めた目で見ていた。


    トト「……………きっも」
    ビビ「ハァ????????」

    またもトトとビビは互いの頭や胸ぐらを掴みギャーギャーと騒ぎ始めたがギギは止めることなく紅茶を1口飲み軽く息を付きゆっくりと話し始めた。



    ギギ「…俺達の、…出会う前の話なァ。
    …いいぜェ、全部じゃねェけど俺が知ってる範囲なら教えてやるよォ」

    ローラー「ほんと!?!?!」


    ギギは「おう」と応え、優しく微笑みゆっくりと全員に伝わるように過去の事を話し始めた。

    ーーー



    3年前


    一時期、世間を騒がすほどのとある事件があった。

    まだ犯人と思われる人物は捕まっておらず、現在は警察による捜索も中止になっているようだ。
    ハッキリとした事件の内容は明かされておらず、現段階で判明しているのは他者のインクリングを実験体とし、必要とする薬の様な物を作っていたらしい。
    …が、当時現場にはインクリング同士を混合するような不思議な機械と、何億通りと試したような紙と鉛筆が床に落ちていた。その他の情報は何者かによって現場に火をつけられた為、警察側が捜索できるのはここまでとなってしまった様だ。
    他に分かる情報としたら、小さいものになってしまうが研究室から繋がる扉にはインクリング自身が溶け、とても急いでいたのか、ドアノブにはべっとりとしたインクが付いていた。しかもそのインクは珍しい事に2色のインクが混ざっていたようであった。


    この事件について調べようと探索した男が1人いた。彼は優秀であり、重要な手がかりを現場から見つけていた。

    研究室にある、実験時に使ったような土台を押し退け、そこには長い階段が下まで続いていた。どうやら犯人が使ったであろう隠し部屋の様だ。
    彼は拳銃を片手に、慎重に暗い階段を降りていった。

    長い階段を降りると、そこには全体的にコンクリートで包まれた部屋に繋がっていた。部屋は全体的に冷えていて特に何の変哲もない、とても狭い部屋であった。…が、奥に進み部屋全体を見回した彼は唖然としていた。

    オムニ「……………これは」

    そこにはこれまで実験に使われたであろうインクリング一人一人の写真が壁全体に貼られていた。
    写真には不気味なほどの大量な文字と、数人は赤字で「カケラA」と「カケラB」という風に分けられていた。

    オムニ「…………(……カケラ?何の事だ。
    ……全く訳の分からない文字ばかりで読みづらいな。)」

    オムニは壁に貼られていた写真を1枚1枚丁寧に見ていった。オムニは部屋全体の写真を見終わり、ふと部屋の真ん中にぽつんと置かれたテーブルに目をやった。

    オムニ「…………なんだ、これ」

    オムニはテーブルに置かれていた紙を手に取り、ゆっくりと読み始めた。




    “ 私の実験は失敗に終わった。混合中、カケラBが突然暴走しカケラAを連れ施設から逃亡した。その後、しばらく私は捜索を続けたが、見つける事が出来ず捜索は中止となってしまった。

    …が、私は諦めていない。必ずあの貴重なカケラを再び見つけ出し全ては私の為に、
    実験を成功させてみせる ”


    オムニ「…………何の事だ」


    紙に書いている文字を読み終わり、部屋から出ていこうとしたその瞬間、オムニは何者かに後ろから強く壁に押さえつけられ首を強く締め付けられた。

    オムニ「っ……!?!!!」

    オムニは咄嗟に何者かの腹を蹴り飛ばし、相手から距離を取り拳銃を向けた。

    オムニ「……っ、……お前何者だ。ここで何をしている」

    何者かは暗闇で顔は見えなかったが心做しか笑っている様にも見えた。服は燃えてしまったのか袖や裾は黒く焦げてしまっていた。

    オムニ「………何も言わないならばこの場で殺す。
    ……最後にもう一度聞く、お前は何者だ」

    オムニは拳銃を向け相手を問い詰めた。
    オムニに問い詰められた何者かは、笑顔を浮かべながら何かゆっくりと口を開いた。


    ダスト「私の名前はダスト、……ここで実験をしていた。
    …そう、きみたちが探している事件の犯人さ。」

    ダストという男の姿は、どろっと溶けたようなとても不気味な姿をしていた。ダストの姿を見たオムニは心做しか恐怖を覚えたかのように少し体制を整えた。

    オムニ「……お前、なんだその姿は。
    ………まさか、お前自身が実験体となっていたのか?」

    ダスト「……そんなまさか。私は実験をしていただけだよ。………そこの紙を読んだだろう?…そこに書いている通り私の実験は失敗に終わった。実験に使っていたカケラBが混合中に暴走しはじめてね。私に突撃してきたのさ。それと同時に私のインクも反応してしまって少し私自身の身体も溶けてしまったのさ。…大丈夫だよ、心配は要らない痛くはないさ!!」

    オムニ「…………ボクはお前の心配なんてしていない。こんな所で何をしていた?何故ここにいる」

    ダスト「……キミもわかっている通り私の実験室は何者かによって火をつけられてしまってね。カケラBに突撃されインクが溶け逃げ遅れた私はここまで這いつくばって逃げてきたのさ。」

    オムニ「………。」

    ダスト「………私はどうしよう、何か他のインクリングさえこの場に居れば…こんな状態であれ、私の力さえあれば…簡単に治すことが出来るのにな。」





    ダスト「………そう、思っていたのさ!」





    その瞬間、ダストはオムニに飛びかかりオムニに馬乗りになった。ダストはポケットから注射器のようなものを取り出しオムニに向かって振り下ろした。
    オムニは咄嗟に拳銃を手放し、ダストの両腕をしっかりと掴み抵抗した。

    ダスト「すると!!するとキミの方からやって来てくれるだなんてね!!やはり私は研究をするべきなんだ!!私のために!!!!!この世の為でもない、私だけの為に!!!!神にそう言われている様なものだ!!」
    オムニ「………っ、!クソ、………クソ……ッ!!!!!!」

    ダストは興奮のあまり自我を乱していた。自身が溶けているのにも関わらず両腕を掴むオムニの力を上回り注射器をオムニの腕に突き刺した。
    オムニは突き刺された反動でダストを勢い良く蹴り飛ばし咄嗟に拳銃を持ち、立ち上がり、階段の方へと全力で走った。

    オムニ「……ックソ!!!!!やられた!!!!げほッ、ゲホ…!!!!!」

    ダスト「待ってくれ!!!その素晴らしいインクを、インクを私におくれ!!!キミのインクはカケラA同様私の実験に相応しいものなのだ!!!!それさえあれば、
    それさえあれば________」

    オムニは注射器を引き抜き、自身のプライドが傷つけられた事に腹がったのか持っていた拳銃の引き金を引きダストの脚を撃ち抜いた。
    ダストは大きく体制を崩しその場に倒れ込んだ。ダストが倒れ込む姿を見たオムニは呼吸が荒く、視界があやふやとしていた。オムニは壁に寄りかかりつつ、ずりずりと出口の方へと向かった。

    オムニ「……(…はァ、……はァっ……、クソ…ッ………こんな所で、こんな所で……!)」

    オムニはふ、と息を零しその場に座り込んだ。

    その後、オムニは無事後輩であるギギとビビに救出されその場を後にした。
    …オムニの手によって撃ち抜かれたダストは、その後誰一人とその姿を見ていないようだ。

    ーーー


    ギギ「ッつ~~話があってなァ~~」

    ローラー「!なるほど~!へぇ~!すごい!!でも…大変だったんだね!!?!ほかのひとに悪い事してたんだ……だめな人なんだね…でも…その人撃たれちゃったの…かわいそうだね…」
    デュアル「……………。」
    ビビ「………。」
    おまる「…す、すごい…ですね…!そんなことが…!!」
    トト「……(どこかで聞いたことあるような話だな………コイツら、もしかしてあの時の……?)………。」

    ギギ「ハハ~だろォ?おもしれェ話だよなァ~。
    …まァ何はともあれ、犯人はオムニによって撃ち抜かれ、その後どうなったかは知らねェがァ~、


    …今もどっかで生きてんのかもなァ。」



    ギギは一息付き、突然笑い出し、しまっていた拳銃を後ろに突きつけた。




    ギギ「……なァそうだろォ、ダストさんよ」


    ローラー「!?!?」
    デュアル「っ………?!」
    おまる「…………!!!!!!!!!!!」
    トト「……!…お前は…!!」
    ビビ「……………チッ」

    周りに座っていたローラー達は突然の出来事に驚き、皆一斉に椅子から立ち上がり怯えたような表情でギギの事を心配そうに見ていた。
    ギギに拳銃を向けられた男は微笑み子供達の信用を得るよう、冷静に喋り始めた。

    ダスト「………おやおや、久しぶりの再会であるのに……初手から酷い対応だね。
    そんなに私の事が嫌いかな?ギギ?」
    ギギ「…よく言うぜェ、俺らの事をいいように使ったクセによォ~。」


    ギギ「……今更何をしに来たァ?」

    ダスト「……………。」


    ギギは相手に背を向け座りながら話していたが、椅子から立ち上がり再びダストに拳銃を突き付け、ダストに向かい引き金に指を添えた。

    ローラー「!!!ギギ!!!!おねがい!!!!!!!!!!!!!!!やめて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ころしちゃだめ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ローラーがそう叫び皆が目を瞑ると同時に、
    ギギはダストに向かって引き金を引いた。


    皆が抑えられず子供達は目を瞑った。…が拳銃はパァンという柔らかい音を立て、ギギの拳銃からは不思議にも弾では無く、クラッカーのように音と同時に綺麗なテープが空中に弾かれた。

    ローラー「……へ?」
    デュアル「……は?」
    おまる「えっ」
    トト「は?」
    ビビ「…………」
    ダスト「…………」



    ギギ「……ッハハハ!!!驚いたかァ~~?お前らみたいな子供がいンのに目の前で撃つ訳ねェだろォ~~~?それにこの銃は本物なんかじゃねェよ。玩具だァ、玩具ァ。良く出来てるだろォ~?」

    ギギは大きな口を開け大声で皆をからかうように笑い始めた。子供達は驚いた様な表情をしていたが、トトは浮かなそうな表情をしギギを思いっ切り蹴り飛ばした。
    ギギは子供達の反応を見て心做しか嬉しそうにしていた。


    ローラー「ええぇええぇえ!?!なにそれすごい!!!!!マジックみたい!!!すごい!!すごいギギ!!!!」
    デュアル「…無駄に心配して損した気分だな」
    おまる「…は、はぁ……、……び、びっくりしました……えへへ…まさか弾ではなく綺麗なテープだっただなんて……!」
    トト「……チッ、…くだらね」
    ギギ「まァまァ~~?ンな怒んなよォ~。子供のお前らの前で人を撃つわけにはいかねェだろォ~?ンまァ最初からコイツを殺す気なんて無かったけどなァ~。」


    ダスト「………本当かな?」


    ダストはギギを疑う様な目で見つめたが、それを不快に思ったのか、ビビがダストを強く不機嫌そうにダストの肩を押し退けた。

    ビビ「……うるせぇんだよお前。兄さんはお前の事を見逃してくれたんだ。……俺達に用が無ぇならさっさと帰れクソ医者が」

    ダスト「……酷い事を言うね、私は君達と楽しい話をしたかっただけなのに…。いいじゃないか、もっと私と話そうではな…」
    ビビ「…いいからさっさと帰れっつってんだよ」

    ビビは不機嫌そうに、圧をかける様にダストにそう言った。ダストはビビの様子を見るなり、「また会おう」と言葉を残し仕方なくその場を去った。



    トト「……帰ったな」
    ローラー「…良かったの…かな?!あのひと…ギギとビビと話したそうだったよ!!!よかったの!?」
    ギギ「…いいんだァいいんだァ~、あんなやつと話したって何の得もしねェからなァ。…さァ、今夜はみんなで花火すんだろォ?花火すンなら早めに風呂と飯済ませなきゃなァ。さてェ、そろそろ帰るかァ~。」
    ローラー「!!そうだった!!花火!!花火だー!!!」
    デュアル「………」
    おまる「…え、えへへ…た、楽しみですね……!!」
    トト「………」
    ビビ「…そうだね、兄さん」

    ローラー「よぉし!!!!!!みんなで手繋いで早くかえろ!!!!!!えへへ!!」

    ローラーはそう嬉しそうに笑い、みんなと幸せそうに手を繋ぎ、いつもの家へと歩き始めた。

    ーーー

    皆で帰っている途中で、ふとローラーは足を止めた。

    ローラー「………」

    ローラーの異変に素早く気づいたギギは、皆と足を止めローラーの様子を心配そうに伺った。

    ギギ「ン?どォしたァ?ローラーちゃァん」

    ローラーは顔を真っ青にし、ぷるぷる震えとても気まづそうにしていた。



    ローラー「……と、といれに行きたい……」



    ビビ「ハァ???」
    トト「もうすぐ家なんだろ、少しぐらい我慢しろよ家帰ったら存分出来んだろうが」

    ローラーは涙目になりふるふると首を横振った。
    どうやら限界のようだ。もうすぐ家に着くが我慢を好まないギギはローラーと目線を合わせ優しく微笑んだ。

    ギギ「トイレなァ。いいぜェ行ってこいよォ~。俺らはここで待ってるからゆっくりしてきなァ~~~~」
    ローラー「…!う、うんっ!!!ご、ごめんね!!!いってくる!!!!!!!!」

    ローラーは我慢の限界だったようで、ギギにそう言われた途端全速力で走り出し、少し遠いトイレへ駆け込んだ。

    ーーー

    無事トイレを済ませたローラーは、しっかりと手を洗いトイレを出た。少し遠く、薄暗い路地裏のトイレを借りたせいでローラーは少し不安になっていた。ローラーはみんなが待っていると思い、少し早めに歩くようにして路地裏を進んで行った。

    ローラー「……(こわいなぁ……ひとりで来るぐらいならお家まで我慢すればよかったかな……みんな待たせちゃったし……、…はやくみんなの所に戻らなきゃ!)」

    ローラーは少し怯えつつもみんなが待っている場所へと向かっていた。

    ローラー「(やった!もう少しで路地裏を抜けられる!!)」

    もう少しで路地裏を抜けそうになったその瞬間、ローラーは何者かに強引に腕を捕まれ路地裏へと引きずひこまれていった。そしてローラーは壁際へと強く押し付けられ両腕を強く握られていた。
    ローラーは背筋が凍ると共に、とてつもない恐怖を覚え、声を出そうとしたがこの状況に声が出せなかった。
    ローラーは恐る恐る目を開け、相手の顔を見た。




    ローラー「………さっ……きの……ひと……?」

    ローラーを路地裏に引きづり込んだのは先程まで一緒に居たダストであった。
    ローラーはダストの顔をハッキリと覚えていた為、少し恐怖が和らいだような表情をした。
    ローラーの表情を見るなり、ダストは微笑み優しく挨拶をした。

    ダスト「……こんにちは、ローラーくん」

    ローラー「……え、えっと……こんなところでどうしたの……?さっきいた人だよね?…あと…えっと……お手手……すこしこわいな……だなんて……えへへ…」

    ローラーは例え見覚えのある顔だったとは言え、ダストに対し強く恐怖を感じていた。
    ダストはローラーを安心させるかのように強く掴んでいた手をぱっと離し、柔らかい物腰で話し始めた。

    ダスト「おや、それはすまなかったね。キミを怖がらせるつもりはなかったんだ。………ただ、

    ……ただ少し、キミに質問したい事がいくつかあってね。」


    ローラーはきゅっと口を閉じ、少し真剣な顔付きでダストの話を最後まで聞いていた。



    ダスト「……もし、キミのお友達がいる事で…誰かの夢を叶わせられる事が出来るのなら…その子は誰かの夢の為に協力するべきなのかな?」


    ローラーは何を言ってるか分からないような表情をしていた。何も分からない、何を言ってるのか分からない、ローラーは純粋無垢であった。

    ローラー「……ぼくの…おともだち…?」


    ダストはローラーの肩をがっしりと掴み、その事を熱く、熱心的にはなし始めた。

    ダスト「そうさ!!!キミのお友達が誰かの素晴らしい夢を叶えるのさ!!!お友達の力さえあれば、素敵な夢は叶う……。そうすればお友達は誰かへの恩人となる!!!!そうだろう?ローラーくん?お友達が恩人、人を救うのはいいことだろう!?!?!」
    ローラー「…えっ、えっ…?な、なんのこと…?ぼくのおともだち…?」
    ダスト「そう!!!!キミのお友達だ!!!!キミのお友達は素晴らしい性能を持っているのだ!!!!!!それに1度逃したカケラAにカケラB…それと同様1度実験を失敗してしまった失敗作が2人ほど生きていたとは!!!!!!!!これは運命である!!!私に実験を勧めている!!!さぁ!!ローラーくん!!私にキミのお友達を捧げてくれないか!!!!!!!??!!」


    ダストは酷く興奮し、ローラーを制圧するような勢いで喋り続けていた。ダストの豹変を見たローラーは恐怖でしか無く、今にも泣きそうであったが、ローラーは踏ん張り、皆の事を思いダストの願いをハッキリと断った。


    ローラー「……やめて…、そんな事…だめだよ。きみにぼくの大切なおともだちをあげることはできない、…ごめんね。」

    ローラーがそう言うと、ダストは今までの興奮とは程遠い、冷めたような目付きに変わっていた。
    ダストはゆっくりと立ち上がり、ローラーを見下ろすような体制で何かボソボソと喋り始めた。

    ダスト「……そうか。……そうか、………キミのお友達はキミのせいで私の人生の主役になる事が出来なくなってしまった。全ては私の為、………そう」



    ダスト「全ては私の為なのだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ダストは隠し持っていた注射器を取り出し、ローラーを目掛けて注射器を振り上げた。
    ローラーは泣く事も声を出す事も出来ず、目の前の出来事にきゅっと目を瞑り、チームメンバーの顔を思い浮かべた。

    ローラー「……(だれか……っ!!!!!!!!)」

    ローラーはそう強く願った。
    …すると注射器を振り上げたダストは不意に何者かに強く蹴り飛ばされた。

    ローラー「………?!?!」
    ダスト「……ッ、……何者だ!!!!!!」

    するとそこには見覚えのある顔であり、とてつもなく不機嫌そうな顔をした男が立っていた。
    その男を見た途端、ダストは目を見開き、嬉しそうに、目の前にいる男の名前を呼んだ。



    ダスト「…!!!!!ビビ!!!!!!!」




    ビビ「……俺のチームリーダーに何の用だ、このクソ医者が」

    ダストを蹴り飛ばしたビビはとても不機嫌そうな顔をしていたが、ビビの姿を見たローラーは安心したのか、泣き出してしまい、その場に泣き崩れてしまった。

    ダスト「そう!!そうだ…私はキミ、ビビの事ももちろん大事に思っていたさ!!!!私はキミを求めていた!!!!会いに来てくれて嬉しいよ、ビビ!!!!!」

    ダストは嬉しそうに笑い、両腕を広げ歓迎するかのような素振りを見せた。ビビは不快に思ったのか軽く舌打ちをし、泣き崩れているローラーの傍へと駆け寄った。

    ビビ「…おいガキ、立てるか」

    ローラーは泣きじゃくっていた為、自らの力で立つことが出来ない状況であった。ビビは自分だけじゃどうにも出来ないと思い、スマホを片手にギギを呼ぼうと電話をかけたその瞬間だった。
    ビビの持っていたスマホは何者かに発砲され、使えなくなってしまった。
    ビビはゆっくりとダストの方へと顔を向けた。


    ダスト「……ふふ、驚いたかな?誰も私が拳銃を持っていないとは言っていないだろう?…ギギですら持っていたんだ、ギギを愛していて知り尽くしているのであれば…それぐらい把握しておくべきだろう?ビビ」

    ビビ「……チッ、クソがンな事知るかよ。…めんどくせぇ。
    ……コッチはガキがいんだよ、余計な手間をかけさせんじゃねぇ。
    ……おいローラー、頼む兄さんのところへ逃げてくれ」

    ビビは不器用ではあるが、守る為に逃げるよう必死にローラーに伝えたが、ローラーはその場から離れず、ずっと座り込み泣いていた。

    ローラー「……う、うぅ…やだ、やだよ……ビビを置いて逃げたくなんかない!!!」


    ダストは2人の光景を見て、何を思ったのかビビに向かって威嚇するように発砲をし続けた。

    ローラー「やめて!!!!!!」
    ダスト「キミ達の絆の深さなんてのに私は興味は無い、不愉快なんだとても。キミが逃げないのならビビは撃ち殺されてしまうぞ?どうする?ローラーくん!!!!」

    ダストは愉快そうに笑い、当てる気も無い弾をビビ達に向かって撃ち続けた。ビビはローラーを庇うようにして立っていたが、ローラーを抱きしめるようにして庇おうとした瞬間、不意をつかれダストの撃った弾を1発食らってしまった。

    ローラー「ビビ!!!!!!!!!!」

    ローラーは撃ち抜かれたビビに駆け寄ろうとしたその時だった。

    ビビ「………ッ…いいからさっさと走れつってんだろうが!!!!!!!!!!!!!!これ以上居られたって俺の邪魔なんだよ!!!!!!!手間かけさせんじゃねぇ!!!!!!!!!!!」

    駆け寄ろうとしたローラーを、ビビは初めて大声で怒鳴った。ローラーは怒鳴られる事と、助けられなかった色々な感情で泣き出していたが、ビビに言われた通りローラーは走って逃げていった。
    その光景を見ていたダストは撃つのをやめ、拳銃を下ろしにっこりと満足気に笑っていた。

    ダスト「……おや、…そんなに大声を出せたのか。……私はビビの事を研究し尽くした気でいたが…どうやらまだ知らない事の方が多かった様だ。
    ………それとも」

    ダストは満足気に笑っていたのと真反対に、ビビをくだらいという目つきで見下ろし、何処と無く不機嫌そうな声でボソ、と言葉をこぼした。



    ダスト「あそこにいる事で、何か心の入れ替わりがあったのかな」

    ビビ「………何の事だ」

    ダスト「キミの事は私がこの手で研究をし尽くした。キミの事は全てお見通しさ。…と、言いたいところだったんだけれど…どういう事かキミは子供や他人、簡単に言うとギギ以外の人物に情を持ち始めるようになったようだ。…これはどういう事かな?ビビ?」

    ダストは問い詰めるようにビビの事を本人に淡々と喋り続けた。ビビは特に何も答えず、ただダストの話を聞いているだけだった。

    ダスト「……無反応、か。……そんなに私が教えた事が気に入らなかったのかい?ビビ」

    ダスト「…もう一度私に従ってはくれないのか」

    ダストはそう言い、ビビの頭を掴み壁へと押さえつけたまま逃れられないよう首を絞めた。

    ビビ「……ッ!!!」

    ビビは必死に抵抗したが、ダストの力にはとても適いそうに無かった。

    ダスト「…キミの事は私自身がこの手で研究をし尽くしたと言っただろう?…キミはそこまで身体や力が強い訳じゃない。…弱く見られない為に態度でしか示せられないのだろう?……ビビ」

    ビビ「……ックッ…ソが…クソがクソがクソが!!!!!!!俺の気に触れる事ばっか言ってんじゃねぇよ!!!!!!」

    ダスト「…さぁ、それはキミにも言える事さ。

    …なぁビビ?もう一度、もう一度私の実験に手伝ってはくれないか。………キミが私に従わないのであれば……カケラA、カケラB…ましてや子供達を実験体として使わせてもらうが?」

    ダストはビビが断れぬよう、言葉を選びニコニコと話し続けた。それと同時に、自分には逆らえないと言わんばかりにビビの首を絞める力を徐々に強くしていった。
    ビビは断れるはずも無く、ダストの頼みを静かに受け入れた。

    ビビ「……ッ、……クソ…、
    ……、………さっさと俺を研究所まで連れていけ」

    ダストは頭を押さえつけていた手と首を絞めていた手をゆっくりと離し、嬉しそうにニッコリと笑いながら路地裏の方へと続く暗闇の方へと歩いて行った。
    ビビは何も考えず、ただひたすらに、ダストの言う事を聞くことしか出来ないのであった。

    ーーー

    ローラーの息は荒く、今にも叫び出したい程に辛かったが、チームのみんなに助けを求めるためにローラーは必死に走り続けた。
    路地裏を駆け抜け、横断歩道を渡ったそこにはいつも通りの4人がいた。ローラーが皆の元へたどり着いた途端、腰を抜かし座り込んでしまった。
    ローラーの元へ心配そうに駆け寄るデュアルとおまるは必死にローラーの背中を摩っていた。
    一方で、ギギは腕を組み、既に察していたかの表情でポケットから錠剤なような物を1粒取りだし飲み込み、浅く呼吸をし、トトと目を合わせた。

    ギギ「…俺が帰って来ねェなら、分かってるな」

    ギギから言われたのはたった一言だったが、子供達の中では判断力が1番とされるトトは、その一言で全てを察し頷き、3人の元へ駆け寄り3人を安心させるよう、優しく抱きしめた。

    ギギはとてつもなく不機嫌そうに、どこかへと歩いて行った。

    ーーー


    ギギは極一般的なアパートの前まで来ていた。ちょうど夕食の時間だろうか。部屋の中は何処と無く騒がしかったが、ギギは容赦無く家のインターホンを押した。するとすぐに扉は開き、中からは未成年であれど背丈の高い、目付きが悪いのが特徴的な男が眉間に皺を寄せながら出迎えてくれた。


    こあ「……チッ、おいクロォ!!!!!!テメェの客だぞ!!!!!」

    その男は、ギギの姿を見た瞬間大声でお目当ての人物の名前を呼んだ。その男が呼ぶと、中からは奇声に近い声が聞こえてきた。ギギは耳障りだったのか、無表情ながらも片手で片耳を覆っていた。

    クロ「アァーーーックソ!!!!!!!負けた!!!!!!!もう1回だ!!!!もう1回やらせろ!!!!」
    オト「ガハハ!!!!お前よえーもんな!!!!!!!!俺となんかよりCPUと戦うのも十分なんじゃねぇ????」
    クロ「俺に1スト奪われてたクセによく言うぜェ~~~!!!!!!!!!!!!!!」
    オト「ンだと殺すぞ!!!!!!!!!!!!!!」

    こあ「…すみません」

    目の前にいる紫ゲソの男は呆れ混じりに溜息をつきながら謝った。一方で部屋の奥にいる彼らはゲームに集中している為、全くこちらに気付いていないようだ。
    すると、テーブルに座り大人しく本を読んでいた笑顔を特徴的とした男はガタッと音を立て立ち上がり、何をするかと思えばゲームに集中していた二人の後頭部をボコッと鈍い音と共に殴りつけたのであった。

    リア「ほらクロ、お客様を待たせちゃだめじゃん。」

    ピンク色のゲソの男は殴ったお目当ての人物をずるずると引きづり、玄関で待っているギギの元へと、笑顔で運んできた。ギギのお目当ての人物は「何すんだよ!!」と抜かしているが、目の前に立っているギギを見上げた途端、一気に顔を顰めた。

    クロ「……なんでテメェがここにいんだよ」

    ギギ「…………。」

    ギギは無言でクロの事を見下ろしていた。いくら助けを求めに来たとは言え、相手が借金をしている張本人に変わりは無い。ギギは何か物言いたそうだったが、ギギは自ら口を開くことが出来ずにいた。

    クロ「……なんだよ、急に来て黙ってよ…借金なら俺はカンケー無ぇつってんだろ、借金は俺の兄でー…」

    クロ「………あ?お前、いつも俺の事を追いかけに来るもう片方は、…どこにいんだ」

    ギギ「…………」

    クロはビビが居ないことに気付き、ギギをもう一度見上げた。クロは全てを察し、ゆっくりと立ち上がり、めんどくさそうに頭をかきため息をついた。

    クロ「……はァ~~~、テメェなぁ~、そういう事ならさっさと素直に言えりゃいいだろうが。」

    クロはそうぶっきらぼうに言い、呆れたように部屋の中へと戻っていった。ギギは何も言えず、助けを諦め、さっさと帰ろうとしたその時、再びドアが開いた。部屋から出てきたのはいつも通りの帽子をしっかりと被ったクロであった。

    クロ「…ほら行くんだろ」

    ギギ「……お前」
    ギギはクロの事をじっと見つめ、その場に固まっていた。その場に固まっているギギを見たクロはギギにより一層近付いた。

    クロ「い~んだってよォ~俺らの仲だろ~!?!?仲良くしようぜェギギちゃんよ~~!!!!?!?!?!」

    クロはぱっと明るくなりギギと肩を組み、どこか不安そうなギギにクロは元気に明るく、そしてアホっぽく接した。ギギは心做しか安心したような表情をしていた。2人が玄関前で肩を組んでいると、またしてもドアがバン!と勢いよく開き、中から眉間に皺を寄せた男が出てきた。

    クロ「お~!!!こあ!!!!お前も準備出来たかぁ!!!!!」

    ギギは珍しくとても驚いた様な表情をしていた。その表情を見たこあはふと呆れたように笑った。

    こあ「はは、俺が協力するのは以外だったか?…残念だったな、どうもこういうの案外放っておけねぇんだよな。」

    クロ「っしゃー!!!!!!!あのクソウザ目付き悪借金取り取り返しに行くぞォー!!!!!!!!!!」

    クロとこあは自らギギに手を貸した。
    ギギは思いもよらぬ展開だったが、少しクロへの気持ちが変わったようであった。

    ーーー

    クロとこあを引き連れたギギは、またしてもどこかへ向かっている様子であった。クロはそのまま現場へ行くと思っていた為気合を入れていたが、中々現場へ向かおうとしなかったギギを呆れたように見ていた。

    クロ「…え?なァギギ?俺達だけで行くんじゃねェの?」
    ギギ「…まさかなァ、こんな人数で勝てるか不安でなァ。ビビはああ見えて割かし身体は弱くてなァ。この人数じゃ守りきれるか分かんねェから…もう少し、人数を足してから行くぞォ。」

    ギギの意見を聞いたクロは何処と無く不満げな表情をしていたが、弟を思う気持ちは確かなんだなと思い何も言わずただギギについて行った。
    そう適当な事を思っていると、真っ白で、大きな広い一軒家の前でギギは立ち止まっていた。

    クロ「?ここになんか用でもあんのかァ?」
    こあ「………」

    ギギ「あァ。心強い俺の友人がいんだァ。」

    ギギはニコと笑い家のインターホンを押さず、唐突に扉を勢い良く蹴り飛ばした。

    クロ「はァーーーー?!?!?!?!?!?!?!?!?何してんだテメェぇぇぇぇええぇ!!!????!!!」
    こあ「何してんだよお前!?!?!?!?!?!」

    2人は驚いていたが、ギギは慣れたような表情をし、ポケットに手を突っ込み堂々と立っていた。すると部屋の奥からドッドッドとこちらへ向かって来てるであろう大きな音が聞こえてきた。段々とその音は近づいてき、玄関へと飛び出したのは片手に包丁を持った、水色のアシメの男であった。ギギはその男に手を振り笑顔で出迎えた。

    ギギ「ヨォ、えぱちゃァん」

    えぱ「誰かと思えばまたテメェかァァァァアァァァアァァアァアァアァア!!!!!!!!!!何回言えば分かんだよ扉を壊すなつってんだろうが!!!!!!!!!何回修理させれば気が済むんだよ殺すぞボケェェエェエエエェエエエェエエエェエエェエエ!!!!!!!!!」

    その男は出てくるなりギギの胸ぐらを掴み包丁を向け怒鳴るようにして叫んでいた。
    ギギは落ち着いていてとても慣れているようにも見えた。

    ギギ「まァまァ落ち着けってェ~。なァえぱちゃァん?初対面の奴もいんだろォ?そんな態度取ってっとォまた怖がられんぞォ?」
    えぱ「うるせェな!!!!!!今愛しのしぇったんの為に俺の愛を全て注ぎ込んだ俺俺♡しぇったんへ届け♡♡愛の手料理♡♡を作ってたんだよ!!!!なのにテメェはいつも、いつもいつもこの時間に邪魔をしに来る!!!!」
    ギギ「ハハ~えぱちゃァんは相変わらずだなァ~聞いてて安心するぜェ~~」
    えぱ「安心出来る要素なんかあったか????相変わらずお前も頭イカれてんな、んで?用件は?」
    ギギ「実はなァ~、弟のビビがー…」
    えぱ「あー、知らん興味ねェじゃァな」
    ギギ「まァ待てってェ」

    ギギはビビという言葉を聞いた瞬間帰ろうとした男の肩を強く掴んで引き止めた。二人のコントのようなやり取りをクロとこあは呆れたような表情で見ていた。

    ギギ「…ほらァ、まずは自己紹介が大事だろォ?えぱちゃァん?」

    ギギにそう言われた男は料理を半強制的に中断させられとても不機嫌そうな表情をしていた。嫌々その男はクロとこあの方へ振り向きナイフをゆっくりと下ろし、一段と低い声で話し始めた。

    えぱ「オレはえぱ、別に興味ねーけど一応聞いといてやる。お前らの名前は?」

    クロ「俺の名前はクロ!!!よろしくな!!!!!!!!」
    こあ「…こあだ、よろしくな」

    えぱは嫌そうな目で見ていたが、どうやらこあの態度は気に入ったらしく、ナイフを部屋の中へ置き、普通に接してくれる様になったようだ。

    えぱ「…はァ、まぁクロにこあ、よろしくな。
    ……で?さっきも聞いた気がするが、もう一度聞いておく、此処を訪ねた用件はなんだ」

    ギギ「お前も3年前の事件、勿論覚えてると思うがァ~…今朝ダストに直接的に会ってなァ。最初は特に害を及ぼす訳じゃァ無かったがァ、俺らが目を離してる隙にチームリーダーが襲われたのをビビが庇ったが故、ビビはダストに連れていかれたァ。俺達はビビを助けに行く。……そーゆー事でお前にも協力して欲しいっつー事だァ。」

    ギギはえぱに向かって笑顔で淡々と事情を話した。
    えぱは呆れた様な表情ではあったが、しっかりと話は聞いてくれていたようだ。

    えぱ「…なるほどな、……つーかアイツ生きてんのか。……あの火事でてっきり死んでんのかと思ったけどな。……クソ、死んでりゃ良かったのに
    ……で?ビビの救出に協力して欲しいと?」

    ギギ「おう」

    えぱ「………嫌だね」

    えぱはそう一言言い、部屋の中へと戻ろうとしたが扉の前で足を止め、顔を俯かせていたがゆっくりとギギの方を見下すように見てこう言った。

    えぱ「……と言いたい所だがァ~。
    ……珍しいテメェからの頼み事だァ、……いいだろう俺もそのビビ救出作戦とやらについて行ってやろう」

    えぱは不気味に笑い玄関前に置いてある包帯を首へぐるぐると巻き始めた。

    えぱ「それに、アイツに仮を返さなきゃいけねぇしな」

    ギギはまるで分かっていたかの表情でえぱの肩を組んだ。2人は互いについて行くという判断は既に目に見えていたようであった。

    えぱ「っしゃァ!!!!!!!ダストぶち殺しに行くぞォ!!!!!!!!!」
    クロ「おォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ギギの不安は完全に薄れ、不安は安心へと変わっていた。こあはポケットに手を突っ込み、その光景を楽しむかのように見ていたのであった。

    ーーー
    ギギ達は最後に、もう1人協力して欲しい人物の元へと向かっている途中、とある二人の男たちと遭遇した。その男達は背丈が小さく猫背な白ゲソの男と、目つきの悪い黒ゲソのちょんまげの男であった。白ゲソの男はギギを見た途端顔を真っ青にし後退りをし、同じく黒ゲソの男も少し緊張したような表情をしていた。

    ギギ「よォ」

    るめ「………っ………」
    サド「…………………」

    彼達の名前はるめとサド。借金をしている張本人でありギギが追っている中の二人だ。二人はその場から咄嗟に逃げようとしたが、察しが早いこあとえぱは2人を囲むようにして2人の前に堂々と立った。
    るめとサドはどうする事も出来ず警戒をしているような目でギギに喋り掛けた。

    るめ「……借金ならコイツに言ってくれ。俺には関係無い」
    サド「…………チッ……なんでこんな時に……」

    2人は不機嫌そうな顔をしていたがギギはいい事を思い付いたかのように、2人にニコニコと問いかけた。



    ギギ「………逃してやろうかァ?」




    サド「………は?」

    ギギのその一言に2人は大きく戸惑いを見せた。

    ギギ「……今回お前達に頼み事がある。俺の大事な弟がダストという男に攫われたんだァ。……るめなら分かるハズだがァ。」

    るめ「…………ッ、……」

    ギギ「……俺はビビを助けに行く為に向かっていた所だったんだがァ……いい所にお前らが居てなァ、いい機会だァ。お前ら………着いてきてくれないかァ?勿論安全とは言いきれねェからなァ。タダではねェよ。」

    ギギ「もし大事な弟を救えたその時はァ、お前らの事は見逃してやるよォ」

    2人は戸惑っていた。約数年根気強く追いかけきた男が、突然見逃す事を宣言し始めたのだ。
    サドは大きくその条件に揺さぶられていたが、るめは戸惑いつつも断った。

    るめ「……それは受け入れられない。お前の弟を救えたのならって救える前提での話か?もしかしたらそこで命を落とすかもしれないんだ。それに相手はダストだ、何をするかも分からないそんな相手と無駄に戦って命を落とすよりは、お前に追われて逃げ惑う人生の方がマシだ」

    ギギ「…………そうかァ、お前らにはいい提案だと思ったんだがなァ。
    …………なァるめ?……お前はあの日の真実を知りたくないのか?」

    るめはギギの言葉にピクッと反応した。少し動揺しているようだ。

    るめ「……あの日の出来事なんて、二度と掘り返すもんじゃない。知りたくもねぇし……考えたくもねぇ。もういいだろ、断ったんだから二度と俺と顔を合わせー……」


    ギギ「そうやってお前はいつまでも幸せから逃げんだよな」


    ギギはるめに向かってそう言葉を吐いた。るめは驚いた様な表情をしていた。追い詰めるようにギギはるめへじりじりと近付き、話し続けた。

    ギギ「あの日の出来事から永遠と目を逸らし、二度と考えように、思い出さないように…お前は他者との思い出を無理矢理作った。そのせいで今幸せになりたいと願っても無理矢理作った思い出のせいで今度は苦しむようになってしまった。……記憶を上書きしたくても二度とその記憶は消えねェ。……お前も分かってんだろ?…自分が相手と結ばれる日が来るかもしれないってなァ」

    ギギは冷静にるめをじっと見つめ、話しかけていた。るめは隠していた自分の気持ちを全てさらけ出された事によって不快に思ったのか、突然大声でギギの言う事を否定し始めた。

    るめ「うるさいうるさいうるさい!!!!!!もう黙れ!!!!!!!勝手に俺の気持ちを分かったかのように話してんじゃねぇよ!!!!!お前に何が分かる!!!!俺の気持ちが全て分かるやつなんて居ない!!!!!!!そうだ俺は自分で失敗して幸せを拒むようになった!!!!!嫌なんだよ幸せになんのが!!!!!!ずっと独りでいいんだよ!!!もうほっといてくれ!!!!!」

    るめは被っているニット帽をぎゅっと掴み泣き叫ぶようにギギの言う事を全て否定した。周りの皆はただただ無言でギギとるめのやり取りを聞いているだけだった。隣に居たサドは、とても動揺していた。
    ギギはそんなるめから決して離れる事は無く、段々と距離を縮め、るめの前で屈み、るめと目線をしっかりと合わせた。

    ギギ「…………お前が想う、その相手は少しづつ幸せな方向へと確実に進んでると俺は思うけどなァ。…………なのに、お前から幸せを拒んでどうする。……相手を支えたい、救いたいって思ってんだろ。……ならお前も全てを否定し続けンじゃァ無く、時々受け入れる事も必要だ。……相手の過去も、今本来の姿もな。」

    るめ「………………」

    るめは無言でギギの話を聞いていた。サドはどうすればいいか分からず、ただただ立ちっぱなしであった。話を聞いていたえぱは呆れたように溜息をついた。

    えぱ「……はァ、……何が何だか知らねェが、……お前も幸せになりたいなら素直にそう言えば良いじゃねぇか。……ただ今すぐに幸せになるのは確かに難しいかもしれねぇ。…なら少しづつ受け入れられなかった事を受け入れていきゃア、いいんじゃねェの。」

    えぱは自分が過去に体験したかのように丁寧にアドバイスをした。るめは俯いていたが皆から言われた言葉をとある人物を思い浮かべながら、しっかりと受け止めていた。するとるめはゆっくりと立ち上がり、ギギをしっかりと、真剣な目で見つめた。



    るめ「…………俺達も、同行させてくれ」


    ギギはニイ、と笑いサドと肩を組んだ。サドはるめの返事を聞き驚いていたが、ほんの少し、前向きになったるめに心做しか安心したようであった。ギギを先頭に、6人は残る1人の元へと、ゆっくりと歩き始めた。

    ーーー

    ギギ達が最後に向かったのは、とある一般的な一軒家では無く、かと言って館なほど大きくは無い室家であった。洋風的な門の隣にある呼び鈴を、ギギは軽く深呼吸をし鳴らした。
    すると中から黒いゲソの穏やかな男が出迎えてくれた。その男は特に何も問う事無く、ただただギギ達を部屋の中へと案内してくれた。

    白いユリが綺麗に飾られている広い玄関を抜けると、洒落たカーペットを敷かれた階段が見えた。ここまで案内してくれた男は優しく微笑み、その場からゆっくりと離れて行った。
    ギギ達は階段をゆっくりと上がっていき、木製の大きな扉の前へたどり着いた。ギギは手馴れた手付きでその扉をノックし、「失礼するぜェ」と一言言い部屋へ入った。
    大きな扉を開けたそこには、1つ大きな横長の机と周り一面には大量の本棚が置かれていた。ギギは机の前までゆっくりと歩いた。ギギが目の前まで来ると、椅子に腰かけている人物はゆっくりと口を開いた。

    オムニ「……大人数で、ボクに何の用かな。」

    椅子に腰掛けていたのは、ギギの上司であるオムニであった。大人数であれど、オムニの表情は変わること無く、何かを紙に書きながらギギの返答を待っていた。

    ギギ「……ビビが攫われたんだァ。」

    オムニ「……で?」

    オムニは部下が攫われたと言われど態度が変わる様子は無く、そのまま手を動かしていた。

    ギギ「……3年前の事件、オムニも探索しただろォ。その事件の犯人ダストと今朝会った。細かい事は言わねェが…手を貸してくれねェか、オムニ」

    オムニ「………」

    オムニはしばらく無言でいた。オムニは文字を書く手を止めず、そのまま喋り始めた。

    オムニ「……ボクは忙しいんだ、他人に構っている暇は無い。用は済んだか?済んだのなら帰ってくれ、仕事の邪魔になる」

    オムニの返答を聞いたえぱは気に食わなかったのか、ギギを押し退けズカズカとオムニの前へと立った。オムニは顔を上げえぱの顔をしっかりと見た。

    えぱ「……テメェなんだその態度は?手を止めてもう少しギギの話をしっかりと聞いたらどうだ?今の上司はそんな事も出来ねェのか?」

    オムニ「…………」

    オムニは一瞬ムッとした表情になった。オムニの変化を見逃さなかったえぱはニヤリと笑い、そのままオムニの周りをぐるぐると歩き回り、そのまま話し続けた。

    えぱ「あーあ!!ギギは困ってんのになァ~~~~~!!!!!!!!!どんな関係であれ困ってる奴を助けるのは当然だが、仕事の上司が部下の困り事をこんな風に対応するとはなァ~~~!!あ~~あ、こんな仕事の上司、オレなら嫌だな~~!!!プライド高ェし、部下の困り事には聞き耳持たねェし、きっと友達も……そして恋人も居ねェんだろうなァ~~!!!!まァオレには大事な可愛い愛しのしぇったんが居るからカンケーねェけどォ~~~~?????!!!!!?は~!!最近の仕事の上司はこんなモンなのかァ~~!!!!!!!????ギギの上司としては情けねェなァ!?!?八葉オムニさんよォ~~~?????!!!!!」

    えぱはオムニの事を煽りに煽り、最後にニコと笑い片手でオムニの肩にぽん、と軽く触れた。
    机に置かれたオムニの拳は強く握られていて、少しぷるぷると震えていた。煽りに煽られる非常に珍しい光景を見たギギは片手で口を覆い、必死に笑いを堪えていた。
    するとオムニはダァン!と机を叩き、勢い良く立ち上がりそのまま見下すように、えぱの前へと堂々と立った。

    オムニ「……その言葉、絶対に忘れるんじゃないぞ」

    えぱは扱いやすいなと思いフン、と笑った。
    そしてオムニは机の上にあった紙をしっかりと揃え、机の中にしまった。机の隣にあった拳銃を隠し持ち、万が一の為残りの銃をるめやサド、そしてギギに渡した。


    オムニ「……作戦は出来ているんだろうな」

    ギギ「……あァ、もちろん」


    ギギは口角を上げニヤリと笑った。ギギは無事にクロ、こあ、えぱ、るめ、サド、そしてオムニを説得する事が出来た。
    ギギは深呼吸をし、最後にビビの安全を、密かに願った。

    ーーー

    ギギは持っていた研究所の建築図形が大雑把に書かれた紙を、オムニの机へと広げた。7人はその紙をしっかりと見た。

    研究所はとても広く、研究室への通り道がいくつもあった。万が一どこかで爆発等が起きてしまうと狭い1本の通り道な為、炎から逃げられる事が出来ない。その万が一を防ぐ為にギギは裏口潜入も必要だと考えた。一方で研究所に正面から入り、奥へ進んで行くと頑丈な扉があり、その扉を開けると1つ大きな部屋がある。そこにダストはいるとギギは予想した。
    ビビは3年前、オムニが探索時に見つけた隠し階段を降りるとすぐ側にある地下室のような所に閉じ込められていると考えた。
    7人はそれぞれ正面、裏口、ビビの救出と役目を大きく3つに振り分けた。

    ギギ、クロ、えぱは正面から入り、ダストとの対面を役目とした。

    るめ、サドは研究所の裏口から入り、爆弾や他に危険な物が無いか探索する役目とした。

    こあは現在あまり喧嘩事はしないようにしている為、ギギ達がダストと対面している間にビビを救出する事を役目とした。

    そして研究所は森林で囲まれており、木が生い茂ってる為オムニはそこから研究所全体を見渡し、異常が発生次第、そこから護衛する役目だ。


    それぞれ役目を確認し、ギギ達はビビの救出へと向かった。



    ーーー




    ビビはどれ程眠っていただろうか。ふと目を覚まし、眠い目を擦ろうとしたが、ガチャンと音をたてた。手を動かす事を諦め、ビビは眠る前の出来事を痛みに耐えながら徐々に思い返していた。

    ビビは一旦辺りを見回した。ビビは実験台のようなものに横たわり、逃げれぬよう、手足はしっかりと固定されていた。周りには過去にも実験に使い古したであろう道具が沢山置いていた。そして大量の紙に、実験データが全て保存されているパソコンなどがあった。ビビはふと違和感を覚え、帽子が無いことに気がついた。嫌な予感がし、ポケットに手を当てたが1度ダストに撃ち抜かれたスマホも手元には無いようだ。

    ビビ「…………チッ」

    ビビは軽く舌打ちをした。すると、部屋の奥から確実にこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。ビビは誰なのかを察し、溜息をつき全身の力を抜いた。部屋に入ってきた男はビビの様子を見るなり安心した表情でビビの隣にある椅子に腰掛けた。
    そして嬉しそうに、興奮を抑えるようにその男は話し始めた。

    ダスト「……おはよう、ビビ」

    ビビは舌打ちをし、ダストを睨んだ。しかしダストはビビの態度を特には気にせず嬉しそうに話を続けた。

    ダスト「体調はどうかな?やはり突然眠らせたから…少し頭は痛むかもしれないが、我慢してくれ。これも私の実験の為だ!キミは許可してくれたからね。とても助かるよ!!」

    ビビ「……俺は喜んで許可した訳じゃねぇんだよ」

    ダスト「キミの感情に興味はない!!ただキミが私の実験に協力してくれるとは思っていなかったからね!!!その事を感謝しているんだ、わかるかな?ビビ?」

    ビビ「……チッ、…知るかよ」

    ビビはダストと話が通じない事が分かった為、出来る限り無駄な体力を抑える事にした。

    ビビはこんな状況でもどうにか逃げる方法は無いかと考えていた。

    すると、そんな事を考えているビビを逃すかと言わんばかりにダストは途端に立ち上がり、ビビの腕を強く掴みニコリと不気味な笑顔を浮かべた。

    ダスト「……もう時期、キミの兄であるギギ、それと……6人程いるね。約7人がキミの事を助け出しに来るだろう。皆キミの事を思っていてくれているんだね、ビビ。……私は嬉しいよ……過去に実験し、自らの手でキミは失敗作となってしまったが……それなのに皆に愛され……生きている。……これがどれ程嬉しい事か分かるかな……!!ビビ……!!!今感情を持てるようになったからこそ分かる気持ちだよ、ビビ…!私には分かる、私はこの感情を求めていたのかもしれない…!そうだろう!?そうだろうビビ!!!!!!」

    ダストは不気味な笑顔を浮かべたかと思いきや、突然涙をポロポロと零し始めた。そしてダストはビビを優しく抱きしめた。ビビは困惑していて目の前にいるダストにかなりの恐怖を覚えていた。

    優しく抱きしめたあと、ダストはゆっくりとビビから離れ、優しい目付きでビビを見つめか細い声でこう言った。



    ダスト「……だから…だから皆に助けて貰おうね、私の素晴らしい失敗作よ」


    ダストはそう言い、ビビに向かって注射器を振り下ろした。ビビはダストの後ろ姿を最後に、また眠りについてしまった。

    ーーー

    それぞれの役目の場所へと移動したギギ達は、ギギの掛け声と共に一斉に中へと潜入した。
    ギギ、クロ、えぱは正面、るめ、サドは裏口、こあは一刻でも早くビビを救出する事だ。オムニは木枝の上で膝立ちになり、警戒しつつ研究所全体を見渡していた。



    るめとサドは裏口から潜入し、一本道の狭い通り道を走り抜けていた。狭い道ではあるが、扉がいくつもあり全て調べていると時間がかかってしまう為慎重に危険な物は無いか調べていた。

    曲がり角を曲がったその時、るめとサドはふと足を止めた。

    るめ「…………」
    サド「…………マジかよ」

    2人の前に現れたのは紛れもなく、今回の事件の元凶であるダストであった。2人は軽く息を吸い、警戒心を高め戦闘態勢に入った。

    ダスト「……おやおや、こんな所で何をしているのかな?」

    ダストは笑顔で両腕を広げ、まるで喜んで歓迎するかの様であった。ダストは余裕な表情を浮かべており、一歩づつ、一歩づつるめ達の方へと距離を縮めた。

    2人は持っていた拳銃を取り出し、ダストへ向けた。ダストは一瞬驚いたような表情をしていたが、またすぐに余裕のある笑顔へと戻り、るめ達との距離を確実に縮めていた。

    サドは自分達の方へと向かってくるダストに拳銃を向けた。

    サド「……これ以上近付いたら撃つぞ」

    ダストはサドに拳銃を向けられても尚、笑顔を浮かべ余裕の雰囲気を醸し出していた。拳銃を握るサドの手は微かに震えていた。震えている事を知ったダストは、ニコと笑いサドに優しく問いかけた。

    ダスト「……キミの名前は知らないが…、キミは優しいんだね。……友達の事を1番に思い、1番大切に思っていた。……なのにとある事件のせいで離れ離れとなってしまった。

    ……そう、私の起こした事件のせいでね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ダストは大きな笑い声をあげ、隠し持っていた拳銃を取り出しるめに向かって容赦なく発砲した。

    サド「ッ!!!!るめ!!!!!!!!!!」

    るめ「……ックッッ……ソが……!!!!!!」

    るめは撃たれた部分を片手で押さえダストに向かって発砲した。ダストは銃弾を受けたがケラケラと笑い、見下すかのようにるめの前へと立った。
    サドはダストに拳銃を向ける事しか出来ず、その手は先程より大きく動揺し震えていた。

    サド「…ッ…るめから離れろ!!!!!じゃなきゃ本当に撃つぞ!!!!!!!!」

    サドはダストに向かって必死に叫んだ。すると
    ダストはサドの方へと視線を変え、ゆっくりと近付きサドの持っていた拳銃を握り銃口を自ら額へと当て、サドに優しく微笑みかけた。

    ダスト「………やってみなよ」

    サド「………っ……う、……ぐ…」

    サドの表情は脅えているかのような表情になり、手も足も出せない状態になっていた。
    るめは四つん這いになり必死に呼吸を整えていた。
    震え脅えているサドにまるで追い打ちをかけるかのようにダストはサドに向かって話続けた。

    ダスト「………先程私は言っただろう?キミは優しすぎる。……誰かを傷つける事は出来ない。そうだろう?サドくん」

    サドは大量に汗をかいており、呼吸が荒くなっていた。ダストはサドを優しく見つめ続けた。サドは震えが止まらなくなり、やがて拳銃を握っている手を手放し、カタンと軽い音を立て床へと落とした。

    その哀れな光景を見たダストは鼻で笑い白衣を靡かせ、るめ達の前から姿を消した。

    サドの呼吸は荒くなっていたが、酷く吐血しているるめの方へと視線を変え、すぐさまるめの方へと駆け寄った。

    サド「……っるめ……!!るめ……大丈夫か!?!?!?!?ごめん、ごめん俺が撃てなかったせいで……」

    サドはるめに駆け寄り自分の情けさに泣きそうになっていた。それに反してるめはサドの心配を受け流すかのように冷静に呼吸を整え、今の状況を理解していた。

    るめ「……ゲホ、……はァ……はァ……大丈夫、俺の事はいい、俺達がここでグダグダしてちゃ……万が一の事があった時……アイツら……いや、全員死ぬ事になる、早くしねぇと……!!」

    るめはしっかりと呼吸を整え、撃たれた部分を片手で押さえ立ち上がった。まだ微妙にフラ付いていたが、るめの言う通り時間が無い。サドはるめが無駄な心配される事を嫌がるのを知っていた為、るめの言う通り1度深呼吸をし、万が一を備える為に2人は再び走り出した。

    ーーー

    こあはギギから預かった研究所の建築図形を片手に広い研究所を走り回っていた。3年前と同じ研究所とは言え、建築図形など建築物が苦手なこあからすれば隠し階段を探し出すのはとても時間がかかるようだ。こあは次第にイライラし始めていた。

    こあ「クソが……!!どう見りゃいいんだよこんなの!!!!!!!!こちとら警察でも暗殺者でも借金取りでも無ぇただの美容師だぞ!!!突然こんな紙切れ渡されたって分かる訳無ェだろうが!!!!!」

    こあは持っていた建築図形の紙を片手でぐしゃっと握り、とにかくそれっぽい場所をひたすらに走り回っていた。
    こあは数ある研究台をある分だけ蹴り飛ばしたが、どこにも隠し階段がある様には見えなかった。
    こあは次第に息をゼェゼェと荒くし、一度立ち止まり呼吸を整えた。こあは近くにあった研究台に手を置き、服の裾で汗を拭いていた。研究台に全体重をかけていた為、研究台はズリズリと音を立て少しづつ動いていた。
    こあはふと何かを思ったのか、立ち上がり寄りかかっていた研究台を勢い良く蹴り飛ばした。
    こあの息は荒くなっていたが、それでも尚こあは笑みを零した。



    こあ「…………見つけた」

    ーーー

    ギギ、クロ、えぱは正面から入り、数箇所の部屋を抜け頑丈な扉の前まで来ていた。

    ギギ「……この扉、どうすっかァ」
    えぱ「壊せばいいんじゃねェの」
    クロ「拳でか??こんな頑丈な扉……いくらなんでも無理だろ」

    クロは頑丈な扉に軽く触れ、拳を握り1発殴ってみせた。クロは握り拳を押さえぷるぷると震えゆっくりと蹲っていった。

    クロ「~~~~ッ!!!!!!!!ッテェ~~~~!!!!!!!!!!!!!」
    えぱ「ブッwwwハハハwww何してんだテメェwwwそりゃァ無理に決まってんだろォ!??」

    クロの蹲る姿を見てえぱは笑っていたが、ギギは無表情で頑丈な扉の前に立っていた。ギギは頑丈な扉に触れ、何を思ったのか少し扉から距離を取った。

    えぱ「……っはーー……笑った笑った。
    ……っておい、ギギ?……どうした?」

    ギギは突然距離を取ったかと思えば、その場から走り出し大きな音と共に頑丈な扉を軽々と蹴り飛ばした。扉を無理矢理蹴り飛ばした為、パラパラと壁の破片が落ちてきていた。

    クロ「…………」
    えぱ「…………」


    ギギ「……よし、行くぞォ」



    クロ「…よし行くぞォ……じゃねェだろ!!!!!!バカか!!!わざわざ隠れて潜入した意味ねェじゃねーーか!!!!!!」

    ギギ「はァ?……今にでもビビが危険な目にあってるかもしれねェんだぞォ?…こんな所で時間かける訳にもいかねェだろ」

    ギギは扉を蹴り飛ばしても尚平然としていた。平然としているギギを見たクロとえぱは「確かにそういう事しねぇギギの方が珍しいな」と思い、特に反応し返す事も無かった。ギギが2人を手招き、2人は後ろからダストを警戒しつつ、ギギの後を追った。

    頑丈な扉の向こうには1つの大きな部屋があり、鉄臭い臭いや様々な色のインクで酷く汚れていた。天井には何が入っているかも分からないコンテナが金網のロープで吊るされていた。
    ギギ達は入るなり鉄臭い臭いに若干怯み、3人は手や腕で顔を軽く覆い、出来る限りその場の空気を吸わないようにした。

    ギギ「……ッせェなァ」
    クロ「……ゲッホゲホ……!!~ッンだよここ…!!鉄臭すぎんだろ、こんな所で何してたんだよ全く……」
    えぱ「……チッ、こんな広い研究所の……どこにいンだよクソカス医者が……」

    えぱがボソッとそう言った瞬間、えぱは何者かに肩をぽん、と軽くあしらうように叩かれ穏やかな口調で後ろからこう囁かれた。

    ダスト「そんなにイライラしなくとも……私はここにいるよ」

    えぱは振り向いてダストと距離を取ろうとしたが、
    ダストは早速と言わんばかりに注射器をえぱの首へと突き刺してきた。

    ギギ「!!」
    クロ「ッえぱ!!!!!!!!!!」
    えぱ「ッアぁ"……!?!!」

    3人は不意に現れたダストと距離を取り、体制を整え戦闘態勢へと入った。ギギは横目にえぱの事を見たが、えぱは突き刺された注射器を引き抜きニヤリと笑っていた。

    えぱ「……あァ"、待ってたぜクソヤブ医者よォ。……久しぶりの再会にしては……派手な挨拶だな?」
    ダスト「キミは派手な方が好むと思ってね。どうだい?私の動きもそこまで悪くは無いだろう?」
    えぱ「………フン、まァな。……
    テメェと会うのも3年ぶりだ。中身もオッサンになってらァ、テメェなんてボッコボコにしてやるぜ」

    ダスト「………キミにそんな事、出来るのかな」

    ダストの言葉を聞いたえぱは溜息をつき、その場に落ちていた鉄パイプを蹴りあげ片手で担いだ。えぱは一息付き目を見開き、ダストへと宣言するかのようにえぱは口を大きく開いた。

    えぱ「……テメェの事だ。どうせ過去に研究したオレ達の行動は読めてんだろうからなァ。……所詮オレ達はお前の足止め係みたいなもんだァ。足止めだけじゃぁつまんねぇし……他者のインクをテメェは吸ってんだ。どうせならテメェがどこまで耐えられるか試してみるかァ?ダストさんよォ?」

    えぱは担いでいた鉄パイプをダストへと向け、ダストを殺すと言わんばかりの表情を向けた。
    ダストはため息を付き、呆れたような表情をしていたがポケットから手を出し、実験台から数本の注射器を手に取り戦闘態勢を取った。
    ダストが戦闘態勢に入ったのを見て、ギギ達もそれぞれの戦闘態勢を取った。

    ダストは嬉しそうに笑い、一言言った。


    ダスト「さぁ、始めようじゃないか!!!!私の素晴らしい失敗作達よ!!!!!」

    ーーー

    こあは隠し階段を急いで降り、そのまま繋がっている地下室へとたどり着いていた。
    こあはギギから預かった建築図形の紙とその場を照らし合わせていた。どうやらここであっているようだ。こあは薄暗く狭い部屋の奥へと進み、とある実験台の前で足を止めた。

    こあ「!……ビビ!」

    ビビ「………!こあ」

    そこには手足が固定されていたビビが研究台の上で横たわっていた。

    こあ「待ってろ、今助けてやるからな」

    こあはビビの手足が固定されている金具を器用に一つ一つ取り外した。ビビは長時間の苦痛からやっと開放されたのであった。ビビはギギの元へと急ぐかのように立ち上がり、階段の方へと向かった。

    ビビ「……よし、こあ行こう」

    ビビはなんの躊躇も無く階段の方へと向かったが、その姿を見たこあは何か嫌な予感を察し、ビビの腕を力強く掴み無表情でその場に立ち止まった。ビビは驚いたような表情をしていた。その表情を見たこあは、まるで確信したかのようにビビに一言言った。


    こあ「……お前、誰だ」


    こあにそう言われたビビは帽子の下でニヤリと笑い、こあに掴まれていた腕を素早く振り解き、階段の方へと逃げるように走っていった。
    こあは絶対に見逃すかとビビの後を追いかけたが、ビビは自分の後を追うこあに向かって手榴弾を投げつけた。上へと上がる階段は一本道な為、こあは一旦引き下がり大きな爆発から身を避けた。
    けほけほと咳き込みながら煙を掻き分け辺りを見渡すが、どこにもビビの姿は見当たらなかった。

    こあ「………ックソ、……まずいな」

    こあは一刻も早くと、階段を駆け上がりビビの後を追った。

    ーーー

    るめ達はひたすらに狭い道を走り回っていた。

    サド「……おいるめ、大丈夫か……?!」

    サドは怪我を負ってからずっと走り続けているるめを心配していた。るめは心配そうに自分を見るサドが気に食わなかったのか、不機嫌そうな表情をしていた。サドは何回かるめに声を掛けるがそれでもるめはサドの心配を聞くこと無く、とにかく走り続けていた。

    サドとるめは様々な扉を開けとにかく危険な物は無いかと調べていたが、ふとるめは走っている足を止め1つの扉の前へ立ち止まった。サドも足を止め、るめを不思議そうな顔で見ていた。

    サド「?……どうした、!?るめ」

    るめはサドに静かにしろというジェスチャーをし、静かに扉へと耳をすました。るめは拳銃を片手に、その扉を勢い良く蹴り飛ばした。

    そこには紛れも無く、ダストに攫われたビビの姿があった。ビビはダストに無理矢理眠らされたのか、研究台の上ですやすやと眠っていた。

    サド「!?!ビビ!?なんでこんな所にいんだ??!!!え、なんでだこあが行った地下室にいんじゃないのか!?!?!?」
    るめ「っるせぇな、静かにしろ……!バレたらどうすんだよ……!!」
    サド「す、すまん……」

    るめは軽く舌打ちをし、ビビの手足が固定されている金具を外そうとした。……が、るめは不器用な為なかなか外れず、るめは段々とイライラし始めていた。それを察したサドは無言でその場を代わり、器用に金具を取り外した。その姿を見たるめは気に食わなさそうに、また舌打ちをした。

    ビビを研究台から引き離す事に成功した2人は、自分達がビビの事を救出すると思っていなかった為どう研究所の外まで運ぶか考えていた。
    るめの呼吸は少しづつではあるが、確実に荒くなっていた。その事を知っていたサドはよし、と気合いを入れビビをなんとか担いでみせた。その光景を見たるめは、呆れた低い声でこういった。

    るめ「……お前、それほんとにいけんのか」

    サド「…………」

    ビビを担ぐサドの足はぷるぷると震え、とても研究所から脱出出来るような状況では無かった。
    やがて限界が来たのか、サドは担いでいたビビにドスンと押し潰されてしまった。
    その光景を見たるめは大きめな深いため息をつき、頭の後ろを呆れているようにかいた。

    るめ「……約立たずが。……お前なんて連れて来ない方が動きやすくてマシだったな」

    サド「は!?!?でも俺がいなきゃ今頃ビビの金具取り外せてなかったんだぞ!!!」

    るめ「うるせーな!!!あれぐらい力ずくで何とか出来んだよ!!!お前が勝手にやったんだろうが!!!」

    サド「はぁ!?!?!?!?」

    るめとサドは疲労のせいか口喧嘩をし始めた。
    するとそこへ声を聞き付けたのか、息を荒くし、なにか急いでいるかのような男に遭遇した。

    こあ「…………っ、サド!るめ!」

    サド「!?!?こあ!?!?お前地下室にビビいるっつったじゃん!!!!!なんでここにいんだよ!!!」

    こあ「……知らねーよ、俺が聞きてぇ…!……それに口喧嘩してる場合じゃねぇ。俺が行った地下室に確かにビビは居たが様子がおかしくってな。捕まえようとしたが逃げられた。俺が見たビビは作り物だ、……放置してちゃめんどくさい事になるぞ…」


    るめ「……もしアイツらの所に行っていたら?」

    サド「……」
    こあ「……」

    3人は嫌な予感がしていた。こあは立ち上がり、落ちていたサドの拳銃を拾い、こう言った。

    こあ「俺はアイツらの所に行く、お前らはすまんが一刻でも早くビビをオムニの所へ連れて行ってくれ。アイツなら治療してくれるはずだ」

    こあはそういい、ギギたちの元へと走り出した。
    るめとサドはこあの話を聞き、もたもたしてられないと思い2人で力を合わせビビを担ぎ、研究所の外へと歩き始めた。

    ーーー

    ダストが注射器を構えた瞬間、3人は一斉にダストへと飛びかかった。ダストはギギの蹴りを避け、クロの腹を蹴り飛ばした。そして後ろから鉄パイプで殴りにかかってきたえぱの腕を掴み床へと叩き付けた。えぱは受身を取り、そのままダストの顔面を鉄パイプで重い一発を食らわせた。
    ダストはそれを食らっても尚平然としていた。

    ギギ「クロ、大丈夫か」
    クロ「おう」

    腹を蹴り飛ばされたクロだが、口元を拭いふぅと軽く息を吐き出すと同時に目に見えぬ速さでダストを蹴り飛ばした。壁に強く打ち付けられたダストは若干フラついているように見えたが、それでもニコニコと笑っていた。

    ダスト「……やるじゃないか」

    クロ「…それはどうも」

    ダストはフフ、と笑い手に持っていた白いインクを取り出した。そしてギギに見せつけるかのようにして、インクの入った瓶を開け飲み干した。

    ダスト「……これはキミの上司、オムニくんのインクだよ。彼のインクは健康的であり力も凄まじいんだ。……いやぁ、彼のインクを摂取出来て私はとても嬉しいよ」

    ダストは不気味に笑い、素早い動きでギギの顔面を殴ろうとしたがギギは軽々と避けダストと距離を取った。そこまで予測していたダストは、ギギが避けたのいい事に後ろへと周り、ギギを後ろから蹴り飛ばした。ギギは判断が遅れ、無防備なまま重い一発を食らってしまった。ギギは大きな音と共に勢い良く壁へと叩き付けられた。さらにそこから追い打ちをかけるかのように隠し持っていた拳銃を取り出し数発ギギに向かって撃ち込んだ。
    えぱは持っていた鉄パイプでダストの隙をつき腹を目掛けて突き飛ばした。
    ダストはニコニコしながら吐血し、少しフラ付いていた。ギギは息が荒くなっていて撃たれた部分を押さえていた。

    えぱ「……ギギ、大丈夫か」

    ギギ「……は、……ッ……あ、……」

    もはや必死に呼吸をする事が精一杯だった哀れなギギを見たダストは、大きく手を広げ豪快に笑っていた。

    ダスト「……ふふふ、ははははは!!!!!どうだいどうだいこの力は!?!!?!キミの上司であるオムニくんの実の力さ!!!!!!!!!!素晴らしいだろう!?!!?!!?!キミの、キミの恨んでいる人物にここまで苔にされる気持ちはどうだいギギくん!!!!!!!!哀れで仕方ないだろう!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    ダストの様子を見ていたクロは耐えられなくなったのか、力一杯拳を握りダストの頬を思いっきりぶん殴った。ダストはその思い1発でさらに吐血し目の前が朦朧としていたが、クロは容赦無くフラ着いているダストの腹に膝蹴りを入れ、そのままもう一度顔面を目掛け素早い蹴りを最後に入れた。ダストはその場で膝をつき、息が荒く口からは大量のインクがボタボタと垂れ流れていた。
    するとクロはダストの頭を掴みもう一度蹴りを入れようとしたその瞬間、ダストは目を見開き嬉しそうに大声を上げ笑い出した。

    ダスト「……ハハハハハハ!!!!!!!!!!!!キミたちは本当にバカだなあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

    その瞬間、えぱは突然吐血し始め、持っていた鉄パイプを手放し膝まづき酷く苦しんでいた。

    えぱ「……ッ…ゴホッ……!!!ゴホ、は、ア"……ア、ァ……ッ!!!!!」

    えぱの元へと駆け寄ろうとしたクロだったが、ダストはその隙を見逃す訳が無く、クロを後ろから持っている拳銃で発砲した。クロはそのまま膝まづき、ダストを睨んでいた。クロの頭に銃口を突きつけ、ダストは3人に聞こえるよう、こう言った。

    ダスト「キミたちは本当にバカで愚かだ。…………私が数年やってきた技術を舐めすぎなんだよ、全く。……その結果、このような無様な姿である。……このまま降参し、この場でキミ達を研究台へとぶち込み解体し私の実験体となってもらっても私は構わないが?」

    クロはギリギリと歯を鳴らしダストを睨む事しか出来ないでいた。するとダストは威嚇かのように膝まづいているクロの腹を勢い良く蹴り、苦しんでいるえぱの元へと歩き出した。そしてえぱの前で屈み、ニコニコと笑いえぱに喋りかけた。

    ダスト「調子はどうかな、えぱくん。やはり苦しいかい?……最初に首元へ私が突き刺しておいただろう?

    …………全て読めているのだよ、キミの行動は」

    ダストはそういい、えぱが手放した鉄パイプを拾い、えぱを目掛けて大きく振り上げ叩きつけようとした……が、ダストはギギに腕を撃ち抜かれ鉄パイプを手放した。手放すと同時にダストも素早く拳銃に切りかえギギに向かって発砲した。ギギは銃弾を受けるも次の瞬間にはダストの後ろへと周り鉄パイプで背中から突き飛ばした。
    ダストは大きく怯み、ゼェゼェと息が荒くなっていた。一方でギギも息が荒く、目の前が朦朧としていた。


    ダストはそれでも立ち上がり、棒立ちであるギギを目掛けてトドメをさそうとしたその瞬間、


    2発の銃声が聞こえ、天井に吊るされていたはずのコンテナが大きな音と共にダストの頭上へと落下し、ダストを押し潰したのであった。


    3人はその光景を見るなり唖然としていた。

    クロ「……??!!?!?」
    えぱ「……ッ、……は、……ァ、あ……」



    ギギ「…………、……ッ……ッ……
    …………オム……ニ……か……」


    研究所へ到着してからコンテナの位置を把握していたオムニは、ギギ達がこれ以上は危険だと思い咄嗟の判断で見事に金網を撃ち抜きコンテナを落下させたのだ。


    3人はその光景を呆然と見ていて、ふとコンテナの下からインクが流れている事に気が付いたのであった。その光景をみた瞬間、ギギは今まで自分達が戦っていたのは作り物だったと確信した。
    ギギは感情が押えきれられなくなっていて、また突然フラフラと歩き出した。

    クロ「…!?!?ギギ!?!どこ行くんだよ!?!?」

    ギギ「……そいつはダストが作り出した厄介な作り物だったァ。……本物のダストを見つけに行く」

    クロ「はぁ!?!?……んな事……ありなのかよ……?!?!?!つーかその怪我じゃぜってーに無理だ!!やめとけ、死ぬぞ!!!!」

    クロはギギを止めようとしたが、ギギは止まること無く歩き始めた。ギギはフラフラとその場から歩き始めたが、ふと足を止めとても驚いたような表情をし、目の前に現れた人物を見つめていた。



    ギギ「…………ビビ」


    ギギは様々なインクが付着した手を広げ心の奥底から嬉しそうに、大事そうにビビを抱きしめようと歩き出した。


    その途端、1発の銃声と共にギギは力無く倒れた。



    クロとえぱは驚きを隠しきれず声すらも出せずに居た。すると後ろからまた銃声が鳴り、ギギの次に目の前にいたビビすらも頭から倒れた。


    こあ「…………ッ、クソ……ッ!!!!!!!!」


    ビビを撃ったのは追いかけてきていたこあであった。こあは大声で叫ぶかのようにして2人に命令した。

    こあ「おい!!!!何ボケっとしてんだ!!!!!!ギギが死んじまうぞ!!!!!!!」

    えぱは過呼吸であり、訳も分からず首に巻いていた包帯を解き急いでギギの胸へと巻き付けた。そしてクロは目の前の状況にただただ困惑し、その場から立ち上がれずにいた。


    一方で何か嫌な予感を察知していたオムニは心做しか酷く焦っているようにも見えた。

    すると後ろから聞き覚えのある、二度と聞きたくもない憎い声が聞こえてきたのだ。

    ダスト「……本当に、君達は愚かだ」

    そう聞こえた途端、オムニは振り返る暇も無く後ろから突然現れた人物に2発の銃弾を食らわせられた。オムニは木枝から落下したが受身を取り、川の方へと逃げる人物を必死に追いかけた。
    色々な障害物を避け、オムニは逃げ回る人物に発砲し続けたがその人物は銃弾を受けようと決して立ち止まる事は無かった。そしてその人物は煙玉を取り出しオムニに向かって投げつけたのであった。
    オムニは立ち止まり煙を払い除けると、もう既にその人物の姿は無かったのだ。


    オムニ「…………クソ……!!!!!!!!!!!!」




    ギギ達はかなりの重症を負ったが、後にギギの後輩や警察等も現場に到着しギギ達はなんとか生き残る事は出来た。

    ーーー


    ギギはふと目を覚まし、そこはいつも通り安心する場所であった。
    目を覚ますと同時に小さな男の子達の声が聞こえてきた。

    ローラー「!!!!ギギ!!!!!!!!!!!!」
    デュアル「……!!!、」
    おまる「……ギギさん!!!!!!!!」
    トト「……、…………お前……!」

    4人はギギが目を覚ました途端優しく抱きしめていた。4人はポロポロと涙を零し大声で泣いていた。
    ギギはその光景を見て安心したのか優しく微笑み、いつも通り安心させるかのように全員の頭を撫でてあげた。…ふと隣に目線をやると、実の弟であるビビがすやすやと眠っていた。
    ギギはその光景を見て思わず泣いてしまい「良かった」と一言零しもう一度、みんなを優しく抱きしめた。

    ーーー

    こあ「ただいま」
    クロ「……あーーー!!!家サイコー!!!!!!」

    こあとクロは無事に家へと帰り、帰るなりどかっとソファーに座った。2人は全身の力を抜き、何かを考えるわけでもなく、ただひたすらに疲労を感じていた。

    こあ「……やっぱ、平和が1番だな」

    クロ「…だな」

    2人はそういい、そのままぐっすりと眠りについた。

    ーーー

    えぱ「しぇった〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
    シェタ「……わわ、……ふふ
    ……おかえり、えぱ兄さん」

    えぱとシェタは抱き合い、2人ともニコニコしていた。

    えぱ「ねぇしぇった〜ん!今日オレ沢山沢山頑張ったからさ〜!しぇったんにご飯作って欲しいな〜!」
    シェタ「……ふふ、いいよ。ゆっくりお風呂入っておいで。その間にえぱ兄さんの分、作っておくよ」

    シェタはそういい、優しくシェタを抱きしめた。

    ーーー

    オムニはただ1人、ひたすらに快晴の空を眺めていた。眺めるオムニの目はダストを恨むような、自分を責めるようなそんな目であった。そんな事を考えていると、突然後ろから優しげな声が聞こえた。

    シサ「……オムニ兄さん、……クッキー焼けたけど、……食べるかな」

    オムニ「…………シサ」

    シサ「……ふふ、お仕事終わりで疲れてると思って……クッキーを焼いてみたんだ、シゲもイブキも下で待ってるよ、一緒に食べよう?」

    シサはそう優しくオムニに声をかけた。
    そんな姿を見たオムニは先程まで気分が落ち込んでいたが、ふと軽く息を吐き、優しく微笑みシサの元へついて行った。
    その後、オムニは大切な弟3人とクッキーを食べ幸せなひとときをすごしたのであった。

    ーーー

    とあるひとりの男は薄暗い路地裏のような所で目を覚ました。身体はドロドロに熔けており、とても歩けるような状況では無かった。男は落ちている紙を拾い、その名を口にした。


    ダスト「……ハイカラ……スクエア……。」
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