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    pome_ga_iru

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    ブラネロワンライ「甘い」「召し上がれ」

    #ブラネロ
    branello

    ※ネロに厄災の傷があります(アニバブック初期設定)





     甘いものは好いていないのだそうだ。いかにもそれらしいな、と思う裏で、困ってしまったのを覚えている。一方的かつ無意味な後ろめたさ。そんなこと言わないで、と軽口を叩いてしまいたくなる心地。つまり、いつだって失望が恐ろしかったのだ。期待を寄せられると後ずさりたくなるのに、関心を寄せられなくなったら途方にくれてしまう。そんなこと言わないで。口にしてみろよ。俺なら―――俺が、お前の舌でも楽しめるようにしてやるから。籠にのせられた菓子だとかパンだとかははじめ下げられてばかりだったけれど、何度も持っていくネロに根負けしてからは苦笑とともに手を伸ばしてくれた。そうして、お前が作ったやつなら食えるという言葉にネロがどれほど安堵したことか。それなら大丈夫。大丈夫だろう? ネロが作ったものというなら、その体から作られたものだって同じだろう。
     人間の血液は血漿や血球でできているらしい。ネロの血は糖類や有機酸、アルコールなどでできている。そういうことになった。厄災に大敗した年に賢者の魔法使いたちはそれぞれ傷を負い、魔法が使えなくなる者、眠れなくなる者と分かれていく中で、ネロは身体に直接影響が及んだ方だった。フィガロと確かめたところ、体の中で血の代わりにワインが流れているらしい。もちろん赤ワインだ。色を寄せていくスタイル。それでなんで生きていられるのか、不思議を通りこして不気味である。発見者であるシノいわく、良い匂い。試しに舐めてみたネロとフィガロの共通認識として、普通に美味い。しかしそれは、甘かったのだ。これじゃあ飲みたがらない、と勝手に頭に浮かんだ人物はもう縁を切ったはずの男で、それでも、ネロはボトルを用意した。籠とナプキンを調達し。ラベルは魔法で作り上げ。自己主張してしまった魔法陣は完全に無意識だったが、まあいいかと貼り付ける。その間につまみ食い犯を日々甘味で慣らしておき、体調不良を起こさないよう少しずつ少しずつ血抜きをして。任務明けにネロの部屋へやってくる元頭領へ、差し出してみせたのだ。ワインが合う肉料理を作っていたところだったから偶々だという装い、外から買ってきたという嘘をすんなりと信じて、互いの杯に無遠慮に注ぎ、ワインボトルから手を離さないままブラッドリーは笑った。「美味いな!」手は離されない。それにどんなに安堵したことか! じゃあ、また、見つけたら買ってくるよなんて言って、飲む前からすっかり酔っていた。その時にはもう、召し上がれと身体を差し出すことを、ろくに自覚のないまま決めていたようなものだったろうが、その時にはまだ、ネロは自分のグラスに一度も口をつけないまま、顔を赤く染めることしかできなかった。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523