いつもより一段と冷え込む夜。カーテンを閉め忘れていることに気づいた凛月は窓の外、空を踊る真っ白な雪に気づくと眉をひそめカーテンを引いた。
今年の、初雪。
「うぅ〜、寒いなぁ」
寝る準備を終えたらしいみかがいそいそと布団へ潜る。
「み〜かりん、俺も入れて〜。一緒に寝よ♪」
「んあ、ええで〜。ふふ、一緒に寝たほうが暖かいもんなぁ。嬉しいわぁ」
ふわふわ、にこにこ。
おいで〜と片手で布団を上げてくれたその隙間に潜り込めば、まだ暖まっていない布団の微妙な温度の中にお風呂上がりのほかほかな体温をみつけて心が少し、安らいだ。
「ふふ、みかりんあったかい」
「りつくんは冷えとるなぁ」
「ずっとソファいたからねぇ」
ふと、悪戯心が顔を出し、じんわり温かいみかの足に自分の氷のように冷たい足をピタリと当てた。
「んぎゃ!?」
「んふふ〜、やっぱりみかりんは面白い反応してくれるねぇ。見てて飽きない♪」
「んあぁ〜、りつくん酷いわぁ。せっかく温まっとったのに一瞬で寒くなってしもた」
「くっつけば暖かくなるよ♪」
隣に寝転んでいるみかに抱きつこうと体を少し浮かせた瞬間、キラリと視界の端で何かが煌めいた。不思議に思ってそれを追うと、それはみかの耳に付いている赤い、ピアスだった。
確かこれは『お師さん』さんに貰ったお揃いの大切なピアスだっていつかのみかりんが嬉しそうに言っていた気がする。
それを思い出した凛月は、なんだか邪魔されたような気がして気づけばみかの耳へ手を伸ばしていた
「んあ!?こ、今度はなんやの…?」
「ん〜?」
「ピアス外しとるん?ほんならじっとしとくな」
そう言って外しやすいように大人しくなったみかを見てまた、モヤモヤが募る。
そんな簡単に大事なピアスを俺なんかに外されてもいいの?少しは抵抗くらいしなよ。
そんなことを思いつつも自分の手は止まらずに丁寧にピアスを外していく。
「んあ、外れた?ありがとなぁ。そこのお人形さん達おるところに置いといてええで」
「大事な物なんでしょ。そこはだめ。」
外したピアスのキャッチをしっかりと止めて、無くさないように、見失わないように、テレビ台に置いたハンカチの上に綺麗に並べて置いた。
ピアスに嫉妬だなんてくだらないな、なんて考えながらベッドから出て少し冷えた体を再び温めるために邪魔者のいなくなったみかの隣へ潜り込んだ。