……いつの間にこの子はこんなに頼もしくなったんだろう。ボクの中では数年前の体が弱くて泣き虫で1人では何もできなかった子が、再会して顔を合わせる度に、成長していることを目の当たりにして寂しくなる。家を出たことは後悔はしていないけれど大好きな陸や両親のそばにいられなかった事はとても辛かった。辛さを紛らわせようと、無我夢中で練習をして倒れて、九条さんに酷く怒られたこともあった。今はもう、病室から出られなかった、1人では何もできなかったあのころの陸とは違う。
「天にぃ!マネージャーが落ち着いたら家まで送ってくれるって!」
今は、何も考えないでいよう。
「陸、明日の仕事は?」
「明日?明日は1日オフだけど……」
「そう。ボクは明日午後から仕事だからそれまでボクのそばに居て。」
「え!?明日お仕事行くの!?」
「当たり前でしょ。」
「ダメだよ天にぃ!休んでなきゃ!」
「陸がそばに居てくれればすぐ良くなるから大丈夫。」
「えぇ……?」
「ねぇ陸、お水ちょうだい」
陸から水を受け取って、うがいをして、1口飲む。冷たい水が喉を通り過ぎていって気持ちがいい。
「りく、」
「ん?どうしたの天にぃ?」
「ありがとう」
微笑んでお礼を伝えると、ボンッと効果音が付きそうなくらい一気に顔が真っ赤に染まった陸。それがなんだか可愛くて声をあげて笑った。