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    えびちり

    @akrchama24

    ガスマリを書く人

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    えびちり

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    ガストちゃまお誕生日おめでとうナノ~!!という気持ちで。
    付き合ってるガスマリのお話。

    願い事を叶えてあげる今日はアイツの誕生日。
    朝からひっきりなしにスマホが鳴り、パトロール中には弟分だけではなく、多くの女性たちにも祝いの言葉を投げかけられていた。
    ようやく二人きりの時間を確保できたのは、消灯間際だった。

    「ガスト、誕生日おめでとう」
    「おお! ありがとな、マリオン」

    ガストは表情を綻ばせる。今日何度も見てきた嬉しそうな顔。
    それでも、自分に向けられている笑顔はトクベツに見えた。

    「それで……今日くらいオマエの願い事を一つ叶えてやる」
    「え!? いいのか?」
    「どうしてもっていうのなら……キスの一つや二つ……」

    コホン、と咳ばらいをしながら話したボクが悪かったのか。
    いや、コイツの耳が悪い。
    ガストの耳にはボクの言葉が全く届いていなかったようで、ウキウキとした様子で願い事を考えている。

    「悩むなぁ、マリオンに願い事を一つ叶えてもらえるなんて。
    レンみたくトレーニングつけてもらいたいっつーのもあるんだけど、今日パトロールの時に見つけた新しく出来たカフェもマリオンと行きたいと思ってたんだよな」
    「…………」
    「あ、そうだ! だったらマリオンのピアノが聞きたい」
    「……は?」

    誕生日という特別な日だから、願い事を一つ叶えると言ったが。
    その願い事にまさかピアノの演奏が選ばれるとは思わなかった。

    (もっと恋人らしい願い事があるだろう……! コイツは空気も読めないのか!?)

    少し苛立ちを覚えるが、ガストに気取られないようにゆっくりと息を吐く。
    ボクの心中に気づくことなく、ガストは言葉を続ける。

    「俺、マリオンのピアノ好きなんだ。いっつもマリオンの部屋からピアノの音が聞こえてくるとついつい聞き入っちまうんだよなぁ」
    「……まあ、いい。弾いてやる」

    褒められて悪い気はしない。
    それに本人が聞きたいと言っているんだから、弾いてやるべきだろう。
    ピアノの前に移動すると、ガストも一緒についてきた。

    「曲は?」
    「そうだな……誕生日だし、ハッピーバースデーの曲でもいいか?」
    「ああ」

    あの曲なら暗譜で問題ないだろう。
    鍵盤の上に指を置き、一呼吸置いてから指を滑らせる。
    ピアノが紡ぎ出す音に耳を傾け、曲に合わせて身体を揺らすガスト。
    きっと本人は揺れてるつもりなんてないのだろう。
    そう思うと少し可愛く思えた。

    最後まで弾き終わると、ガストが大げさに拍手をした。

    「すっげー良かった! ありがとな、マリオン。
    マリオンに誕生日を祝ってもらえるなんていい一日だったな」

    何勝手に締めくくろうとしているんだ、コイツは。

    「他には?」
    「へ?」
    「他に願い事はないのか?」
    「え、一つだけって言わなかったっけ」

    ちらりと時計に目をやる。
    時刻は23時。もう消灯時間はとっくに過ぎているが、今日は仕方ない。

    「まだ誕生日が終わるまで時間がある。もう一つくらい言ってみろ」
    「おお、なんだか随分と気前がいいんだな。そうだな……この時間だとトレーニングとか出かけるのは無理だし……」

    胸の鼓動が騒がしい。
    落ち着かない気持ちで、ガストの言葉を待つ。
    ガストは悩みに悩んだ挙句、ようやく口を開いた。

    「あ、そうだ。マリオンが筋トレに使ってる――」
    「オマエは……!!」

    もう我慢の限界だった。
    ガストの胸倉を掴んで、ボクのベッドに押し倒す。

    「ちょ、お!?」
    「オマエはどれだけ意気地がないんだ!?」
    「え? 意気地って――」

    余計な事ばかり言うガストの唇を自分の唇で塞いでやる。
    熱い。
    自分の体に流れる血が熱いのか。
    それとも、ただただ目の前の男に興奮しているのか自分でも判断がつかない。

    「はっ……」

    長いキスを終えると、ガストは目を見開いたままボクを見上げていた。

    「キスの時には目を閉じるものだろう」
    「いや、目を閉じる余裕なんて……マリオン、もしかして……俺がキスをねだるのを待っていたとか?」
    「!! うるさい」

    もう一度唇を押し付ける。
    二度目のキスで、ようやくガストは目を閉じる。
    ホールドアップしていた両手をボクの腰にゆっくりと回す。

    「……今日アイツは戻ってこないって言ってたけど、オマエはどうしたい? ガスト」

    ガストの喉が鳴る。
    ボクはその音を聞いて、ようやく満足げに微笑んでやった。
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