雨 ホームルームの挨拶が終わると、部活動に向かう者と帰宅する者で蜂の巣を突いたような喧騒が湧き、放課後特有のガヤつくそれに俺も混じる。
ユージオと何でもない話をしながら肩を並べて歩いていると「うわ、雨だ」「傘もってねえよ」なんて声が聞こえてきて、準備万端に入れてきた折り畳み傘をぽんとスクールバッグの上から叩くと俺は余裕の笑みで「梅雨ですなあ」と口にする。
これが予報を見て傘を持ってきた強者の台詞である。と言っても、詳しく言うなら出掛けにスグが教えてくれただけだが。
「しまった。今日雨が降るんだったんだね」
例に漏れず傘を忘れたらしいユージオの肩を俺は軽く叩くと前面に回り込んで後ろ歩きしながらにやにやと笑みを浮かべた。
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