ヒリヒリリハビリチャレンジ 百だって、何も飛びついてきてくれるレベルのテンションを期待していたわけではない。ただ、仮にも久々の対面にしてはあまりにもむくれすぎだろう。といっそ笑ってしまいたいような気持ちで千の隣に腰掛ける。精一杯彼のご機嫌取りに励む為に、互いの体温が絡み合う近さで。
「ただいま」
「……」
「もう。かわいい拗ね方しちゃって。今日は何がご不満だったの?」
「適当すぎる。やる気あるの?」
「なきゃ来てないよってば。はい、お酒ストップね」
手のひらからグラスを奪うついでにうかがうような口づけをひとつ。予定通り効果はゼロ。ますます細められていく眼に冷たい瞳は心を閉ざすように隠されていくばかりだ。
「ひとりで飲んでたにしては散らかってんね? 誰か呼んだ? ……あっ待って! モモちゃんばっちり当てちゃいますぞ〜」
「やまとくんとみつきくん」
柔い発音でこぼれた後輩の名前と共に滑り落ちるようにもたれかかってきた千の頭を百の肩は受け止める。繰り出そうとしていたリアクションも、その瞬間腹の底で燃え尽きる。
「いいなあ、オレも会いたかったなあ。三月ともしばらく飲みに行けてなかったし」
「帰った。……僕が帰らせた」
モモがくるから、と恨めしそうに小さな声で付け足して、腹いせのように体重をかけられる。今度なにか美味いもん奢ってあげなきゃなあ、と百はひっそり肩をすくめる。このモードの千の世話を焼くのは、相方の百でも手が余る。