甘いヒナイチのうなじから甘い匂いがする。
香水か、珍しい。ただ、香水なんて血を吸う時に邪魔なのに。
少し残念そうな顔をしたドラルクに、ヒナイチが不思議そうな顔をした。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「いや、何でもないよ。今日のおやつは、ホットケーキにしようか。」
「ホットケーキ!」
嬉しそうに口元をウズウズさせて、満面の笑みだ。
嬉しそうだなあ。
そんなヒナイチにつられて心が浮き足立つ。
ああ、でも。うなじの香水はいただけない。だが、背伸びした彼女のお洒落かもしれない。自分に会うために付けた香水。そんなの苦言の一つも言えない。最近は、美味しそうなベリーの色のリップを付けているし、どことなく私服も可愛らしいものばかりだ。
987