さようなら私の靴下私を最後の女にしてくれと言われて操をたてていたが縁談が舞い込んだ。いつもは忘れられない女がいると断っていたが、世話好きな旧友が会ってみるだけでもと言うので付き合いで会う。開口一番断ってくれと頼み込むと事情を聞かれたので正直に話すと女はこう言った。
「私、それで十分です。結婚でもしないとお父様が家から出してくれなくって」
女の顔をまじまじと見る。ガワも物言いも最後の女と正反対で、性別ぐらいしか共通点がなかった。そうして我々は名ばかりの結婚することになり、ささやかな居宅を構えて生活をおくることになった。
「その方、どんな方だったの?」
結婚した女がそう聞いてくるがもはやどんな女だったかも覚えていない。勝気で恥知らずで捨て鉢な態度の不躾な女だったのは覚えている。愛していたかも曖昧だ。
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