オトナだってもとコドモ電車から降りて目の前にいたのは、かつての尊き青春時代の親友だった。
その年代の平均よりは高い身長に分厚く締まった体、それでも今の五条よりよほど低くて薄い体。
まだ子どもの夏油傑。
「えっ…悟…?」
驚きで見開かれた表情と、戸惑う声にも幼さが残る。
五条のよくできた目と頭は即座に状況を把握し、これが幻覚でも罠でもないと結論づけた。
いわゆるタイムワープなんちゃらとかなのかもしれないが、それすらも今は些細なことだ。
あの日引き裂かれる想いで手にかけた、たったひとりがここにいる。
アイマスクをしていて良かった。
きっと今の自分はとてつもなく恐ろしいぎらぎらとした視線で、お団子のてっぺんから地下足袋の爪先そして理想に輝くまだまろいその魂まで舐めしゃぶっているから。
さてどうしようか。
大人として、現役の教職者として、年上の術師として、ここは未成年の彼を落ち着かせるべきだろう。
それでもその全てを押しのけ顔を出したのは、やはりかつての、眼前のまだ学生の夏油にとっては先ほど分かれたばかりであろうクソガキなほうの五条悟だった。
親友のことが大好きでよく遊んでよく喧嘩して、デリカシーはあまり無い。
「オマエのその前髪よく電車の風で横に流れるじゃん?あの時ってどんな気持ち?」
「?」
軽薄な物言いにからかう意図を読み取ったのだろう。
警戒と驚愕がとたんに怒りへと切り替わる存外に沸点の低い親友の、繰り出される呪力ではない純粋な拳の重み。
そうそうこれこれ。
五条は懐かしさと愛しさ、それから構ってもらえる嬉しさでけらけら笑った。
オトナだってもとコドモ