夏バテ「おい、大丈夫か」
「あぁー…何とも言えんな」
気だるげに答えた声の主は、問う声の主に視線すら寄越さず、寝台に身を横たえていた。
普段の凛然とした姿勢は見る影もなく、額の上に手の甲を乗せ、茫洋として虚空を見るとも無しに見つめている。
それをさほど心配するでもなく、銀髪の青年は湯気の立つ銀盆をベッドサイドテーブルに置き、傍らに腰かけた。
「そら、お前は暑いからと言って冷たい水だの生野菜だの摂ってばかりいるからだ」
「ああ、反省しているとも、大いにな。我が身の不甲斐なさが情けなくて堪らん」
バツの悪そうなラーハルトの目の前に、ぐいとスプーンが差し出される。
「ならちゃんと食え。食わんことには回復せん」
強い匂いを発するそれに、ラーハルトは思わず眉をしかめた。
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