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    おはぎ

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    おはぎ

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    支部にて公開した「揺れる△」のスピンオフ的なものです。
    元ネタ↓
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17670107

    転生大学生夏五の二人が通う喫茶店のマスター視点のお話。



    -----
    周囲から見た二人、を考えるのがとても好きで小話を思いついたので書いてみました。
    色んな角度から二人を見てほっこりしたい。

    #夏五
    GeGo
    ##揺れる△スピンオフ

    白い子と黒い子妻と22歳の時に創業した喫茶店「ラ・ポーズ La Pause」フランス語で"憩いの場"という意味らしい。妻が好きだったフランス映画のワンシーンから拝借したその店名を私は結構気に入っている。

    その店も今年で創業43年、当時最先端だった深い赤のベルベットソファも今ではすっかり"レトロ"の仲間入りだ。店主と同じようにガタもくるが、丁寧に磨いてきた刳物くりものの調度品はいっそういい味が出てきた。人間も磨けば光る、古希のお祝いにと孫がくれた深い紫のタイを撫でながら自分もまだまだ、と意気込んだ。


    平日の昼間は見知った顔ばかりのこの店に、つい最近、随分と若い常連さんが加わった。数駅先にある大学の学生さんだろうか。若い子に好んでもらえそうなメニューなんてまるで無い古い店だから、まさか常連さんになってくれるとは思わなかった。
    最初こそ、店の雰囲気を壊されやしないか心配したものだが、その二人は私の心配を他所に静かにこの空間を楽しんでくれていた。爺さんの考えなんぞ当てにならない、色眼鏡で見ていたのは自分の方だったと気付かされた。

    新しい常連さんは二人とも目を引く美丈夫で、白い髪の子は所謂ハーフなのか綺麗な瞳の色をしていた。黒い髪の子もすっきりとした目元が印象的だ。確かに二人ともあの見目ではどこに行っても人が寄ってくるのかもしれない。そんな若い二人にとってこの"レトロ"な喫茶店は丁度いい隠れ家になったようだった。





    暑い夏のある日。常連の工藤さんと孫の話をしていると、カランとドアベルが鳴り、若い常連さん達が入ってきた。
    いらっしゃい、と声をかけると、黒い子の方がこちらをちらりと見てから定位置の奥の席を見た。私は頷いてすぐさまお冷やの準備をした。汗だくの二人に冷たいおしぼりもセットで持っていく。

    テーブルに近づくと、黒い子の方が不思議そうに私を見た。

    「あれ、いつも居る女性の方はいらっしゃらないんですか?」
    「あぁ、妻は今身体を壊して入院してるんですよ。なので、すみませんがオムそばも今やってないんです。あれは、彼女しか作れないもので」
    「奥様だったんですね、それは、どうぞお大事にとお伝え下さい」

    よく気のつく子だ、普段はカウンターから出ない私が来たから不思議そうな顔をしたのか。彼らはいつもホットコーヒーとメロンソーダをよく頼んだ。昼食を兼ねて店に来る日はそれに加えて大抵オムそばとホットサンド、食後にはコーヒーゼリーとホットケーキが定番だった。生憎、オムそばは妻の十八番で私には作れない。改めてメニューを見た彼は、いつもの通りホットコーヒーとメロンソーダ、それにホットサンドとたまごサンドを注文した。私はカウンターに戻り、すぐさま準備に入る。

    長年愛用しているサイフォンは珈琲を待つ間もお客さんに楽しんでもらいたいとの思いから取り入れた物だ。コポコポと湯が沸き、珈琲が落ちてくる様は見ていると何処か心が落ち着いてくる。
    コーヒーの落ちる時間に合わせてメロンソーダも準備しトレンチに乗せる。鮮やかな緑のシュワシュワと弾ける泡に真っ赤なチェリーがなんとも夏らしい。

    席に持って行くと、白い子の方がケラケラと笑っていた。どうやら黒い子がおしぼりで汗を拭ったことを指摘しているようだ。黒い子が、ここのお店はミントの香りがして気分がいいからだ、とか、今日の気温が高すぎるからだ、と言い訳をする度に白い子がうんうんと頷きながら楽しそうに聞いていた。
    私が席にジュースを置くと、待ってましたと言わんばかりに白い子が飛びつく。これだけ暑ければ確かに美味しいだろう。お腹を空かせた彼らを待たせないように、急いでカウンターに戻り食事の準備に取りかかった。

    コンビーフを缶から取り出し茹でてあるアスパラと一緒に炒め、コンビーフの油が溶け出し全体に回ったところで少し胡椒を振る。その間にふんわりと耳まで柔らかい食パンに薄らと辛子マヨネーズとバターを塗る。ホットサンドメーカーに乗せ、そこに炒めた具とチーズを挟み込む。ぐっと力をかけて口を閉じ火にかける。

    その間にもう一つのたまごサンドの準備だ。たまごサラダは妻直伝の配合で作ったもの。味が少し心配だったが丸山さんが上手いと言っていたし大丈夫だと思う。ホットサンドよりも少し厚めにカットした食パンにたまごサラダをたっぷりと乗せる。ここでケチケチしないのが大事だ、と教わったので言う通りに盛っている。あ、と思い立ち、ポテトサラダ用のハムを2枚冷蔵庫から取り出した。いつものオムそばが出せないお詫びにちょっとしたオマケをつけた。歳を取るとどうも若い人に何かしてあげたくなるらしい、近所のおばちゃんが飴玉を良くくれた気持ちが今は良く分かる。

    そうこうしているうちに、ホットサンドメーカーからピチピチとチーズの焼ける匂いがしてきた。軽くひっくり返して1.2分加熱すれば出来上がり。コンロから外してまな板の上にホットサンドを取り出した。うん、丁度いい焦げ目だ、台形にカットしてお皿に盛り付ける。たまごサンドも同様にカットしたらお皿に盛り付けてそれぞれプチトマトとキャベツを添えて完成。この出来栄えならきっと妻のお許しも出るだろう。

    料理を持って彼らの席に向かう。ホットサンドは白い子に、たまごサンドは黒い子に。テーブルのお冷やが減っているのに気づき、その足で水差しを取りに戻る。カウンターから水差しを手に席に行くと、サンドイッチを一つずつ交換して食べてくれていた。どちらもうちの自慢の品だから喜んでもらえていたら良いけれど。




    暫くして、二人が席を立ってカウンターに向かってきた。私はレジの前に立ち会計の準備をする。黒い子が集めてくれていたお金をトレーに出す。お釣りとレシートを手渡そうと準備していると、珍しく声をかけられた。

    「たまごサンド、美味しかったです。ご馳走様でした」
    「お口にあったようなら良かったです。妻も来週には退院する予定なので、また良かったら食べに来てください」
    「はい、是非。今度はハムたまごサンドと迷ってしまうかもしれませんが」

    にこっと人好きのしそうな笑顔で笑うと、お釣りを受け取りドアに向かっていった。ありがとうございました、と声をかけると先を歩いていた白い子も、ご馳走様でした、と声をかけてくれた。
    二人とも若いのに礼儀正しいな、というのも年寄りの色眼鏡かもしれない。

    今度妻が戻ってきたら、ハムたまごサンドをメニューに入れるか相談してみようか。

    end.
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    おはぎ

    DONE呪宴2の展示作品です。

    以前ポイしたお宅訪問のお話のワクワク!夏油家お宅訪問~!Verです。
    いつも通り180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちは本物を詰めてます。
    傑さんや、君にこれだけは言っておきたい!!

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・夏油、五条家メンバ(両親、兄妹、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    恋人宣言「ねぇ傑、スーツと袴、どっちがいいかな?」
     コンコン、と開いた扉をノックしながら悟が声をかけて来る。明日の任務に関する資料に目を通していたからか、一瞬反応が遅れる。え、なんて?
    「ごめん、上手く聞き取れなくて。なに?」
    「だから、スーツと袴、どっちがいいかなって。今度実家寄ってくるとき用意お願いしてこようと思ってるから、早めに決めとかないとね」
     今日の昼何食べるかーとか、どっちのケーキにするかーとか、悟は昔から私に小さな判断を任せてくることがよくあった。自分で決めなと何度も言っているのだが悟の変な甘え癖は今も治っていない。だが、服装を聞いてくることは珍しい。(何でも、私のセンスは信用できないらしい。あのカッコよさが分からない方が不思議だ)しかも、選択肢はばっちり正装ときた。何か家の行事に出るのだろうか。それか結婚式とか?
    29607

    おはぎ

    DONEGGD.NYP2の展示作品です。

    以前冒頭を少しポイしていた作品をお正月仕様に少し手を入れて完成させました!
    ドキドキ!五条家お宅訪問~!なお話です。
    180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちだけは本物を詰め込みました。

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・五条家メンバ(悟両親、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    猛獣使いを逃がすな「……本当に大丈夫なのか?」
    「だーいじょうぶだってば! 何緊張してんの」
    「普通緊張するだろう! 恋人の実家にご挨拶に行くんだぞ!」
     強張った身体をほぐそうと悟が私の肩を掴んでふるふると揺すった。普段なら制止するところだが、今はじっと目を閉じて身体をゆだねていた。されるがままの私を悟が大口開けて笑っているが、もはや今の私にとってはどうでもいい。この胃から喉元までせり上がってくるような緊張感を拭ってくれるものならば、藁でも猫でも悟でも、何でも縋って鷲掴みたい。現実逃避をやめて、大きく深呼吸。一気に息を吸い過ぎて咳き込んだが、緊張感が口からこぼれ出てはくれなかった。
    「はぁ……帰りたい……高専の寮で一人スウェットを着て、日がな一日だらだらしたい……」
    27404

    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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