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    おはぎ

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    おはぎ

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    GEGO DIG. SUMMER2の展示作品でした~!当日お読みいただいた皆様、スタンプもポチポチありがとうございます!大変嬉しいです!!

    同僚の結婚式に招かれた二人のお話。
    息をするように教師ifです。あしからず。

    #夏五
    GeGo
    ##GEGODIG.

    まずは、お付き合いから――ズズッ、グスッ
    「あーあ、お前。もう顔ぐしゃぐしゃじゃん、ほら」
     そういって差し出されたハンカチを顔に当てると、さらさらとした肌を滑る心地よい感触と共に、上質な生地は私の目に溜まった涙を綺麗に拭った。
     今日は大安吉日、連日の雨予報を覆すような気持ちのいい晴天に恵まれた日曜日。長く補助監督として勤めてきた子の結婚式に招待されていた。見知った顔ばかりの会場後方から、幸せそうな顔をした彼と新婦の門出を祝福する。私と悟は一般的に言うと所謂上司や先輩枠にあたるのだろうが、職業柄急遽中座しなければならない事態に備え後方の席を当てがってもらったのだ。
     紋付きの羽織袴を着た彼は、いつもとは少し違う緊張した面持ちで式に臨んでいた。神前式ならではの厳かな雰囲気と華麗な神楽はなんとも美しく、そこだけくっきりと世界から切り取られたような凛とした空気が心地良かった。
     
     披露宴では緊張が幾分取れたのか、彼はほんのり顔を赤く染めながら高砂に訪れる招待客の相手をしている。横に座る新婦も彼を心配しながらもなんだか楽しそうだ。
    「なんかこう言う祝事って僕久々かも」
    「そうだね、私も随分と機会がなかったからなんだか新鮮だな」
     たぶん世間的にはちょうど結婚式などのイベントが多くある歳なのだろうが、生憎と慶事よりも忌事の方が多く声がかかる環境の為、手放しで喜べる機会は随分と少ないのだ。
    「……あの子たちも、きっとすぐにああして旅立ってしまうんだろうね」
     煌びやかな打掛を羽織った新婦を見ながら、私の脳内では美しく着飾った彼女たちの姿に重なり、一度引っ込んだ筈の涙がまたじわりと目頭に滲んだ。
    「あーまた……まだあいつら成人式だってまだでしょーが」
    「でも、年齢的にはいつそうなっても、ッおかしくはないだろう」
     悟がまたぐちゃぐちゃになりかける私の顔をせっせと整えながら宥めてくれる。
    「あんだけ傑に懐いてるんだから絶対大丈夫だよ。夏油様より強くて素敵な人なんていないーとかそのうち言い出すから。いや、もう言ってるか」
    「彼女たちが選んだ相手なら尊重はしたいけど……まぁ私より弱いのはちょっと嫌かな、いざって時に彼女たちを守ってくれるような、奴じゃないと」
    「そんなこと言ってると本当に誰とも結婚できなくなっちゃうよアイツら」
    「その時は私がきちんと養うし資産も残すから大丈夫だ。無理に結婚なんてしなくていいんだから」
    「こらこら、ちゃんと子離れしなさいね?」
     呆れたように笑う悟にムッとして「君のところだって女の子がいるじゃないか、心配じゃないのか?」と言い返した。拗ねたような口調になったのはたまたまだ。
    「津美紀が選んできた人なら大丈夫でしょ。それにうちはさ、僕より怖い小姑がいるから」
    「……確かに、恵のガードが固そうだな君のところは」
    「でしょー? アイツもさ、自分の姉なんだからもうちょっと信用してあげればいいのに」
     
     披露宴会場では、良く通る声の司会者が「これから鏡開きを行います! 皆様どうぞ前方にお集まり下さい」と促した。皆それぞれ楽しそうに話しながら手にはカメラを構えて集まっていく。私たちも邪魔にならないよう後ろから静かについていく。
    「和装の披露宴だと鏡開きするんだねぇ」
     運ばれてきた大きな酒樽を見て悟が感心するような声を上げる。多くの披露宴では洋装でウエディングケーキをカットする行事が多いが、今回は別の催しにしたらしい。会場の雰囲気にも合っているし、何より祝い事、という空気が強く私は好きだ。
    「傑はああいう豪快な感じ、好きそうね」
     当たってるでしょと言わんばかりの顔で悟が横に立つ私を覗き込む。
    「ああいうの分かりやすくていいじゃないか。ベタなのがいいよね」
    「それもまぁ分かるけど、でも僕は無理だなぁ。だってあれ割ったら飲まなきゃでしょ?」
    「そりゃそうだろうね」
    「そのあとなーんにも使い物にならなくていいならいいけどねぇ」
     そんな話をしているうちに、人だかりの中心からわっと声と拍手が上がる。何度か叩き直していた酒樽がようやく割れたようだ。私と悟も彼らの未来に拍手を送る。
     席に着くと、先ほどの酒樽の中身が順繰りに振る舞われていく。悟が「この後仕事があって、すみません」と愛想よく返すと応対したスタッフがサッと頬を染めた。まったく君は、本当に老若男女問わずたぶらかすな。まぁ、こういう場での振る舞いに気を配れるようになったのは私の指導の賜物なのだけど。
     頂いたお酒を楽しんでいると一升瓶を手に主役の二人が挨拶に来てくれた。
    「五条さん、夏油さん、今日はお忙しい中ご出席いただきありがとございます。お二人そろって参列頂けるとは思っていなかったので嬉しいです!」
    「こちらこそお招きいただきありがとう、君にはいつもお世話になっているからお祝いさせてもらえて嬉しいよ」
    「素敵な式だね、こういう御祝事なら大歓迎だ」
    「ありがとうございます!」
     そこへ他の席から主役二人を呼ぶ声がかかる。こんなところに長く引き留めては悪いからと告げると、恐縮しながら二人は移動していった。
     新婦の打掛を会場のスタッフが支えながら移動するのを見て、つい「大変そうだな」といつものおせっかいが口を突いて出た。
    「あれだけでも相当な重さだと思うよ、着物って重いし暑いから」
    「五条家でもああいうのあったりするのかい?」
    「んーそれこそ昔は十二単みたいなんもあった気がするけど……今はウエディングドレス着たいんじゃない? みんな」
    「そんなものかな」
    「そんなものだよ、あ、でも写真だけとかならいいかもね、動かなくていいしさ」
     ふーんそんなものなのか。頭の中では自然とあの子たちの衣装を想像してしまう。うーん、美々子は着物で、菜々子はウエディングドレスがいいとか言いそうだなぁ。二人が着たいなら好きなだけ着たらいい。
    「……なんならパレードもありか?」
    「え、パレード?」
    「いや、こっちの話」
     そんな話をしている間にも私達の前には豪華な料理が運ばれてくる。美味しそうな香りを立ち上らせる魚料理を見た悟が「あ!」と何かにひらめいた。
    「マグロの解体ショーとかやったら面白そうじゃない?」
    「解体ショー? 厳かな雰囲気ぶち壊しじゃないか?」
    「でも絶対面白くない? 恵が結婚するときにでもやらせようかなぁ」
     不穏なことを言い出す悟を諫める。
    「恵の式なんだから彼の好きなようにやらせてあげなよ、そういう事言ってると、君、呼ばれなくなるぞ彼の式に」
    「えぇ そんなことある? 育ての親みたいなもんよ僕、一応」
     大袈裟に驚いてみせる悟に、ふむ、と想像してみる。
    「……それに、解体した後どうするんだ? すごい量だぞきっと」
    「えーそりゃなんか、料理として出してもらうんでしょ、刺し盛り? みたいな?」
    「それだけじゃあ飽きちゃうじゃないか、寿司とか山掛けとかバリエーションもたせないと。折角だから焼いたりせず生で食べたいしなぁ」
     他に鮮度を活かしたメニューはないかと頭を捻っている私に「なんだ、僕より乗り気じゃん」と悟が言った。
    「もしどうせやるなら美味しい方がいいじゃないか」
    「相変わらず傑は食い意地張ってて良いよね、僕傑のそういうとこ好きよ、生きてる!って感じして」
    「おい、それは馬鹿にしてるだろ」
     周りに気づかれない程度に悟を小突くとヘラヘラ笑いながら「確かにいいかもねぇ」なんて笑っていた。

     そろそろ披露宴も終盤、新郎新婦のお世話になった方や両親へ感謝の手紙が送られる。笑顔で拍手を送りながら、ふと自分はこの機会を得ることは難しいだろうなと考えていた。
     この世界に足を踏み入れてから今日まで、文字通り必死で歩いてきたと言っていい。たった三人の学友達が今では同僚となり、仲間や両親とは違う家族と呼べる子達もできた。順風満帆とは程遠いが、中々に得難い大切なものを抱えてこれた。
     だか、ふと一息ついた時、頭の隅に追いやった十七歳の私が顔を出す。大切に抱えてきた淡い情など打ち消してしまうような、キラキラと輝くときめきや庇護欲や羨望がないまぜになった、手のつけようもない酷く醜い執着が『親友なんて嘘っぱちだろ』と耳元で囁くのだ。
     そんな声を幾度となく振り切り厳重に蓋をして、私はこの平穏を守ってきた。私の軽はずみな言動でこの関係性を終わらせることのないよう細心の注意を払ってきた。
     ……はずなのに、娘達の晴れ姿を想像して涙腺が弛んだからか、ぽろりと言葉が溢れた。
    「いいなぁ」
     万雷の拍手が新郎新婦の背中に送られる中、口の中で転がすように呟いた私の言葉は、一番拾われたく無い相手にだけ届いてしまった。
    「傑も結婚したくなった?」
     隣に座る悟が目線は前を向いたまま私にだけ聞こえるように口にする。薄暗い会場の雰囲気に呑まれたのか、普段ならかわす筈の指摘に真正面から答えていた。
    「うん、したくなった……でも一人では無理だろう? 私には縁の無い話だよ」
     私も彼と同じように視線を動かさず告げた。
     するとその時、組んだ脚に乗せていた手に体温の低い手が触れる。内心どきりとしたが、ぶつかっただけだと解釈し期待するなと自分に言い聞かせる。自分の正面に置いた手に偶然彼の手が触れる訳がないのに。
     反応を返さない私に、触れた指先が焦れたように動く。指先だけで触れていた手が、ゆっくりと私の手を包み込む。
     グッと握られた手に観念し横を向くと、そこには先ほどみた新郎の緊張した面持ちに似た強張った顔の彼があった。
    「……僕と二人でも、できないかな?」
     その真剣な顔を見た途端、ぶわりと私達二人が大切な人たちに祝福される姿が脳内を駆け巡り、緩みきった私の涙腺を刺激した。
     ぽろぽろと流れる涙を慌てた様子で拭いながら「僕ならマグロも酒樽も用意できるよ」と焦ったようにアピールする悟に、涙でぐずぐずな顔を綻ばせ告げた。

    「まずは、お付き合いからだろう」



    end.
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    Replies from the creator

    おはぎ

    DONE呪宴2の展示作品です。

    以前ポイしたお宅訪問のお話のワクワク!夏油家お宅訪問~!Verです。
    いつも通り180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちは本物を詰めてます。
    傑さんや、君にこれだけは言っておきたい!!

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・夏油、五条家メンバ(両親、兄妹、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    恋人宣言「ねぇ傑、スーツと袴、どっちがいいかな?」
     コンコン、と開いた扉をノックしながら悟が声をかけて来る。明日の任務に関する資料に目を通していたからか、一瞬反応が遅れる。え、なんて?
    「ごめん、上手く聞き取れなくて。なに?」
    「だから、スーツと袴、どっちがいいかなって。今度実家寄ってくるとき用意お願いしてこようと思ってるから、早めに決めとかないとね」
     今日の昼何食べるかーとか、どっちのケーキにするかーとか、悟は昔から私に小さな判断を任せてくることがよくあった。自分で決めなと何度も言っているのだが悟の変な甘え癖は今も治っていない。だが、服装を聞いてくることは珍しい。(何でも、私のセンスは信用できないらしい。あのカッコよさが分からない方が不思議だ)しかも、選択肢はばっちり正装ときた。何か家の行事に出るのだろうか。それか結婚式とか?
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    おはぎ

    DONEGGD.NYP2の展示作品です。

    以前冒頭を少しポイしていた作品をお正月仕様に少し手を入れて完成させました!
    ドキドキ!五条家お宅訪問~!なお話です。
    180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちだけは本物を詰め込みました。

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・五条家メンバ(悟両親、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    猛獣使いを逃がすな「……本当に大丈夫なのか?」
    「だーいじょうぶだってば! 何緊張してんの」
    「普通緊張するだろう! 恋人の実家にご挨拶に行くんだぞ!」
     強張った身体をほぐそうと悟が私の肩を掴んでふるふると揺すった。普段なら制止するところだが、今はじっと目を閉じて身体をゆだねていた。されるがままの私を悟が大口開けて笑っているが、もはや今の私にとってはどうでもいい。この胃から喉元までせり上がってくるような緊張感を拭ってくれるものならば、藁でも猫でも悟でも、何でも縋って鷲掴みたい。現実逃避をやめて、大きく深呼吸。一気に息を吸い過ぎて咳き込んだが、緊張感が口からこぼれ出てはくれなかった。
    「はぁ……帰りたい……高専の寮で一人スウェットを着て、日がな一日だらだらしたい……」
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    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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